咳が止まらない・鼻水の原因とは?子どもと高齢者の特徴と対処法
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
お子さんやご高齢の方の咳が止まらず、鼻水もなかなか治まらない場合に「病院に連れて行くべき?もう少し様子を見ていい?」と、判断に迷っているご家族の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ご家族が知っておきたい年齢別の特徴と、見逃しやすいサインや受診を考える目安をわかりやすく解説します。
1. 年齢によって変わる?鼻水と咳の背景

「鼻水と咳が続く」という症状は、一見どの年齢でも同じように見えることがあります。
しかし実際には、その背景にある原因が子どもと高齢者で異なるケースも少なくありません。
見守るご家族が適切なサポートをするためにも、まずは鼻水と咳の関係の基本を見ていきましょう。
1-1. 鼻水と咳の基本的なしくみ
鼻の奥と喉はつながっています。そのため、鼻水が増えたり粘り気が出たりすると、喉の方へと流れ込み、咳を引き起こすことがあります。
この状態を「後鼻漏(こうびろう)」と呼びます。後鼻漏による咳は、痰が絡むような湿った咳が特徴です。
横になると悪化しやすく、特に夜間や朝方に強くなる傾向があります。
「咳だから気管や肺の問題では?」と思いがちですが、実は鼻の問題が原因になっていることも少なくありません。
また、空気が乾燥すると鼻や喉の粘膜が乾いて防御機能が低下し、鼻水の粘り気が増して後鼻漏の悪化により咳が出やすくなることもあります。
そのため、室内の湿度管理も大切なポイントです。
【参考情報】”Postnasal Drip” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23082-postnasal-drip
1-2. 年齢によって注目すべき原因が変わる理由
子どもの鼻・副鼻腔はまだ発達途中です。
また、のどの奥には「アデノイド」と呼ばれるリンパ組織があり、幼児期に大きくなりやすい特徴があります。
一方、高齢者の場合は、加齢によって粘膜の機能が低下し、鼻水が粘り気を増して喉に落ちやすくなると言われています。
さらに、飲み込む力も弱まるため、後鼻漏が誤嚥(ごえん)につながるリスクもあります。
そのため、同じ症状でも年齢に応じた見方が必要です。
次の章では、子どもと高齢者それぞれに多い原因と特徴を見ていきましょう。
2. 子どもに多い鼻水と咳の特徴

小さなお子さんは自分の症状をうまく伝えられないため、鼻水や咳が長引いていても「ただの風邪」と見過ごされがちです。
ここでは、子ども特有の原因や考えられる病気についてわかりやすく解説します。
2-1. 副鼻腔炎が引き起こす咳
副鼻腔(ふくびくう)とは、鼻の周りの骨の中にある空洞のことです。
風邪のウイルスや細菌がこの空洞に入り込んで炎症を起こした状態が「副鼻腔炎」です。「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれています。
子どもの副鼻腔は2歳頃から発達を始め、17歳頃にほぼ完成するとされています。
4〜6歳頃になると副鼻腔への通路が広がり、炎症が起こりやすくなるため注意が必要となるでしょう。
副鼻腔炎では後鼻漏が起こりやすく、その刺激で湿った咳が続きます。
特に夜間や朝方に強くなりやすく、ひどい場合は咳き込みで吐いてしまうこともあります。
副鼻腔炎は、慢性化すると治療に時間がかかるため、風邪が治りかけてもまだ鼻水や咳が続いているという場合は早めの受診が大切です。
【参考情報】『小児の鼻副鼻腔炎』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=18
2-2. アデノイドが大きい子どもに現れる症状

アデノイドとは、鼻の奥(鼻腔と喉の間)にあるリンパ組織のことで、咽頭扁桃(いんとうへんとう)とも呼ばれます。
細菌やウイルスから体を守る役割がありますが、3〜6歳頃に最も大きくなる傾向があり、大きくなりすぎると鼻の通り道をふさいでしまうこともあります。
アデノイドが大きい子どもには、口呼吸が多い、いびきをかく・夜間に何度も目が覚めるといった睡眠中の様子の変化、こもったような話し方になる、風邪をひきやすく鼻水や咳が長引くといった特徴が見られることがあります。
【参考情報】『 Adenoids – StatPearls – NCBI Bookshelf』NIH(米国国立衛生研究所)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK536881/
2-3. 子どもの咳が止まらないときに考えられる病気
咳が長引く場合、風邪以外の病気が原因となっていることがあります。
子どもに多い主な疾患を知っておくことで、早めの対応につながるでしょう。
・ 気管支喘息:「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音を伴う咳が特徴で、夜間や運動後に悪化しやすく、子どもの慢性咳の原因として最も多い疾患のひとつです。
・ 百日咳:激しい咳き込みの後に「ヒュッ」と息を吸い込む音が出るのが特徴で、乳幼児では重症化することがあります。
・ マイコプラズマ肺炎:発熱が軽度でも乾いた咳が長期間続くのが特徴で、5〜12歳くらいの子どもに多く見られます。
・ アレルギー性鼻炎・後鼻漏:鼻水がのどに流れ込むことで慢性的な咳を引き起こします。特定の季節に悪化したり、朝方に咳が多い場合は疑ってみましょう。
・ クループ症候群:ウイルス感染により喉頭が腫れることで、犬が吠えるような「ケンケン」とした特徴的な咳が出ます。主に生後6か月〜3歳の乳幼児に多く、夜間に症状が悪化しやすいため注意が必要です。
3. 高齢者で注意したいポイント

ご高齢の親御さんや祖父母と一緒に暮らしているご家族は、「最近、咳払いが増えた気がする」「食事のとき咳き込むことが多い」と感じていることはないでしょうか。
高齢者の鼻水や咳には、加齢による体の変化が大きく影響しています。
放置すると重大な合併症につながることもあるため、ご家族の丁寧な観察がとても大切です。
3-1. 後鼻漏(こうびろう)と慢性的な咳
1章でお伝えしたように、高齢になると鼻の粘膜機能が低下し、粘り気のある鼻汁が喉へ流れ込みやすくなります。
こうした後鼻漏は、長引く咳や喉の違和感、痰が絡む感覚の原因になりやすくなります。
高齢者の方の後鼻漏でよく見られる症状は以下のとおりです
・ 慢性的な乾いた咳、または痰が絡む咳
・ 喉の奥に何かひっかかる感じ(喉の異物感)
・ 頻繁な咳払い(コホン、コホンと繰り返す)
・ 横になると咳が悪化する
高齢者の方の後鼻漏は、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因であることが多いですが、加齢そのものによる粘膜の変化が原因になることもあります。
【参考情報】『鼻の症状』日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=16
3-2. 誤嚥(ごえん)との関係と肺炎リスク
高齢者の方の後鼻漏で特に注意しなければならないのが、誤嚥との関係です。
誤嚥とは、食べ物や唾液・鼻水などが、食道ではなく気管の方に入り込んでしまうことを言います。
加齢とともに、食べ物を飲み込む嚥下反射(えんげはんしゃ)や、気管に異物が入ったときにむせる咳反射が弱まります。
そのため、鼻からのどに流れ込んだ鼻水や細菌を含む唾液が、気管に入り込んでしまうことが増えます。
これを繰り返すと、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こすリスクが高まります。
4. 見逃されやすいサイン

咳や鼻水が続くときは、見過ごされやすいサインが隠れていることがあります。
ここでは、ご家族が気づいておきたいサインを年齢別にまとめます。
4-1. 子どもで見逃されやすいサイン
子どもは、自分のつらさをうまく言葉にできないことがあります。
そのため、家族が「いつから続いているか」「普段と違う様子がないか」を見ておくことが大切です。
次のような変化があるときは、風邪が長引いているだけではない可能性があります。
・風邪のあとも、黄色っぽい・緑っぽい鼻水が続いている
・鼻水と咳がなかなか治らない
・いったん良くなったのに、また鼻水や咳がひどくなった
・口で息をすることが多い、いびきが続く
・朝起きにくい、昼間ぼんやりしている
こうした変化が続く場合は、鼻の奥の炎症や、鼻の通り道が狭くなっていることが関係していることがあります。
また、咳が長引く背景には、体の中で炎症が起きていることが関係している場合もあります。
そのため、症状が続くときは、いつもと違う変化がないかを見ておくことが大切です。
4-2. 高齢者で見逃されやすいサイン
高齢者の場合は、体調の変化がはっきり出ないこともあり、最初は「少し元気がない」「食欲が落ちた」といった気づきにくい変化から始まることがあります。
次のような様子がないか見てみましょう。
・食事中や食後にむせることが増えた
・食後に声がガラガラする、声が濡れたように聞こえる
・痰が増えた、のどがゴロゴロしている
・微熱が続く
・なんとなく元気がない、ぼんやりしている
特に、食事のときのむせや咳、食後の声の変化は、飲み込んだものが気管に入りやすくなっているサインのことがあります。
5. 受診を考える目安

「どのくらい症状が続いたら病院に連れて行けばいいの?」「もう少し様子を見ていい?」ご家族がこうした判断に迷う場面は多いものです。
4章では、ご家族に気づいてほしい症状について説明しましたが、ここでは、受診を考える目安と、診察の際に役立つ家族の観察ポイントをまとめました。
5-1. こんな症状があれば早めに受診を
お子さんの場合、鼻水や咳が1〜2週間以上続いているとき、発熱のぶり返しや耳の痛みがあるとき、夜の咳や鼻づまりで眠れていないときは、早めの受診をご検討ください。
高齢者の場合は、むせや咳き込みが増えて食事に支障が出ているとき、微熱・食欲低下・元気のなさがみられるとき、咳や鼻水が改善せず全身状態が落ちてきていると感じるときが、受診の目安となります。
咳や鼻水は、よくある症状だからこそ、受診が遅れがちです。
しかし、長引く場合は背景に副鼻腔炎や後鼻漏、アレルギー性鼻炎など、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
症状が慢性化したり、合併症につながるリスクを防ぐためにも、ご家族の判断で早めに受診することが大切です。
なお、発熱を伴う咳や鼻水が続く場合は、新型コロナウイルスなどへの感染の可能性も念頭に置き、受診前に医療機関へ事前連絡をすることをおすすめします。
【参考情報】『新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
5-2. 家族が観察しておきたいポイント
受診の際、日頃の観察をもとにご家族が医師に状況を伝えることが、正確な診断への大きな助けになります。
以下のポイントをあらかじめメモしておくと、スムーズに伝えられます。
・ 鼻水の色や量(透明・黄色・緑色・粘り気の有無)
・ 咳の種類(乾いた咳か、痰が絡む湿った咳か)
・ 症状が出やすい時間帯(朝方・夜間・食後など)
・ 発症からどのくらい経過しているか
・ 熱の有無(体温の変化)
・ 食事・睡眠への影響(高齢者の場合はむせの頻度も)
医師は問診と診察をもとに診断を行います。
特に子どもや高齢者は自分で症状をうまく説明しにくいため、普段そばにいるご家族からの情報がとても重要です。
また、必要に応じてレントゲンや内視鏡などの検査が行われることもあるため、受診時は検査を受けられる準備をしておくと安心です。
6. おわりに
咳や鼻水が長引くときは、症状そのものだけでなく、いつ強くなるか、食事や睡眠に影響していないかまで見ることが大切です。
子どもには副鼻腔炎やアデノイド、高齢者の方には後鼻漏や誤嚥のリスクが潜んでいる場合があります。
症状が1〜2週間以上続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、ぜひ早めに医療機関を受診することをおすすめします。
ご家族が日頃の変化に気づき、適切なタイミングで受診につなげることが、お子さんやご高齢の方の健康を守る大きな力になります。



