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痰に血が混じってる!呼吸器内科を受診してみよう

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

痰に血が混じる症状は、単なる風邪から深刻な疾患まで、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。突然症状が出て驚かれた経験がある方もいるのではないでしょうか。

痰に血が見られた場合、正確な診断と適切な治療を受けることが必要です。

呼吸器内科では、胸部X線検査や血液検査など、具体的な原因を突き止めるためのさまざまな検査を行うことが可能です。悪化を防ぐためにも、早めに呼吸器内科への診察を検討しましょう。

1.血痰について


血が混じった痰を、「血痰」といいます。

空気の通り道である気道に炎症が起きると、通常よりも多くの粘液が作られます。炎症は、風邪やアレルギー反応、肺炎など、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。

気道にたまった粘液やそのほかの分泌物は、咳によって体外に排出されることが多く、このときに出るものを「痰」と呼びます。

血痰は、気道の炎症によって細い血管が増え、血流が多くなった状態で、咳などの刺激でこれらの血管が傷つき、出血してしまうことにより起こります。血が痰に混じることで、血痰となります。

肺やそのほかの呼吸器系の病気が原因で、より太い血管が損傷し、大量の出血が起きる場合もあります。この場合は、血液そのものが気道から吐き出されることがあり、血痰ではなく「喀血」と呼ばれます。

【参考文献】❝bloody sputum❞ by mayo clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/17696-coughing-up-blood

2.血痰が出るのはなぜ?


血痰は多くの場合、呼吸器系の病気が原因で起こります。

原因として最も一般的なのは風邪(感冒)です。血痰が出る原因全体の約3分の1を占めるとされています。

風邪は比較的軽い病気と見なされがちですが、強い咳などの症状が気道の血管にダメージを与え、血痰を引き起こすことがあります。

次に多いのは、気管支炎と肺炎です。これらを合わせると、血痰の原因の約6割以上を占めているとされています。

気管支炎は気管支の炎症、肺炎は肺の組織が感染により炎症を起こす状態で、どちらも咳や呼吸困難などの症状を伴います。

ほかには、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の咳症状が悪化すると血痰を伴います。

頻度は低いものの、肺がん、気管支拡張症、肺結核、肺非結核性抗酸菌症なども血痰を引き起こす原因となることがあります。

とくに、肺がんと肺結核は、迅速な診断と治療が求められる病気です。血痰が続く場合は速やかに呼吸器内科の専門医を受診しましょう。

また、血を固まりにくくするお薬(抗凝血剤など)を服用している方は、血痰が出やすくなることがあります。薬の作用により、一度出血が始まると血が止まりにくくなるためです。

【参考文献】一般社団法人 呼吸器学会『 Q4 たんに血が混じりました』
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q04.html

3.続く血痰で疑われる病気は?


血痰が続く場合の原因の中でも、とくに重要なものに肺がん、肺結核、気管支拡張症など肺の病気があります。以下で、それぞれについてご説明いたします。

3-1.肺がん

肺がんは、肺の組織に発生した悪性腫瘍です。咳、痰、血痰、倦怠感、胸痛、体重減少などが主な症状ですが、初期段階では症状がほとんどないことも多いため、早期発見が重要です。肺がんの診断には、胸部CT検査が一般的に使用されます。精密な画像により腫瘍の存在や進行度を確認します。

3-2.肺結核

肺結核は、結核菌による感染症です。2週間以上続く慢性の咳、体重減少、倦怠感、血痰や喀血などが典型的な症状です。診断には、レントゲン検査やCT検査が有効で、これらの画像診断により肺の異常を明らかにします。

3-3.気管支拡張症

気管支拡張症は、気管支が異常に広がり、その機能が低下した状態を指します。痰、咳、血痰、喀血などが主な症状で、繰り返しの感染症や先天的な要因が原因です。

3-4.その他の病気

血痰が症状としてあるその他の疾患としては、肺真菌症、肺梗塞、非結核性抗酸菌症などがあります。肺真菌症は真菌による感染症、肺梗塞は肺動脈に血栓が詰まることで起こる病気です。

非結核性抗酸菌症は、結核菌以外の抗酸菌による感染症で、症状として血痰が出ることがあります。

4.検査


血痰の原因を特定するためには、さまざまな検査が用いられます。これらの検査を組み合わせることで、血痰の原因を正確に特定し、最適な治療計画を立てることが可能です。

4-1. 喀痰細胞診検査

喀痰細胞診検査は、痰の中に含まれる細胞を採取し、顕微鏡で観察することにより、異常な細胞やがん細胞が含まれていないかを調べる方法です。とくに肺がんの診断において重要な役割を果たします。

痰を吐き出してもらい、その痰の中に含まれる細胞を調べる方法なので、からだへの負担が少なく比較的簡単に行えます。早期の肺がんを発見することが可能になります。

4-2. 胸部画像検査(エックス線・CT)

胸部画像検査には、X線検査とCT検査があります。

X線検査は、肺や気管支の構造を可視化し、肺結核や肺炎などの異常を検出するために広く用いられている検査です。

CT検査はより詳細な画像で、肺がんや気管支拡張症など、細かい異常を特定するのに有効です。病気の診断だけでなく、病気の進行度を評価する上でも重要な役割があります。

4-3. その他の検査

血痰の原因を調べる検査には、血液検査や呼吸機能検査、気管支鏡検査なども行われることがあります。

血液検査では、体内の炎症反応や、感染があるかないかの確認が可能です。呼吸機能検査は、肺の容量や空気の流れを測定し、肺の機能低下の有無を確認します。

気管支鏡検査では、細い管を気道に挿入して直接内部を観察し、異常な部分から組織を採取することができます。肺がんや肺結核などの診断が可能です。

5.おわりに

血痰は、多くの場合何らかの呼吸器系の問題を示しています。

風邪や気管支炎などの比較的軽度の疾患から、肺がんや肺結核といった病気まで、幅広い原因によって引き起こされる可能性があります。

症状が続く、繰り返される、または大量に血痰が出る場合は、とくに注意が必要です。このような場合は、早急に呼吸器内科の受診を検討しましょう。血痰の原因を自己判断せず、専門医の診断を受けることが大切です。

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