呼吸器内科のセカンドオピニオンとは?受けるタイミングと手順
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
「この咳はいったい何が原因なのか?」「薬を飲んでいるのに、なぜ症状が続くのだろう?」治療を受けながらも、こんな不安や疑問を抱えている方は少なくありません。
呼吸器の病気は症状が似ているものが多く、診断が難しいケースもあります。
そんなとき、ひとつの選択肢として活用できるのが「セカンドオピニオン」です。
この記事では、呼吸器内科でのセカンドオピニオンの仕組みや受け方について、わかりやすく解説します。
1. 呼吸器疾患の診断はなぜ難しいのか?

呼吸器の病気は、症状が似ているものが多く、同じ「咳」や「息切れ」でも、まったく異なる病気が原因であることがあります。
ここでは、呼吸器疾患の診断が難しいといわれる理由をご説明します。
1-1. 咳喘息・COPD・間質性肺炎は症状が似ている
・咳喘息(せきぜんそく)
痰を伴わない乾いた咳が長く続きます。喘息とは異なり、アレルギー反応や気道の炎症が主な原因です。
特に夜間や早朝に咳が悪化し、季節の変わり目や運動後に症状が現れることが特徴と言われています。
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
慢性的な咳や痰、息切れが主な症状です。特に動くと息切れがひどくなり、肺活量が徐々に低下します。喫煙歴が長い方に多く、進行することで生活に大きな影響を与えます。
・間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
肺の間質部分(肺胞を支える組織)に炎症が生じ、呼吸困難や乾いた咳、発熱を引き起こします。進行するにつれて、肺が硬くなり、酸素の取り込みが難しくなるため、息切れがひどくなることがあります。
【参考情報】”About COPD” by “Centers for Disease Control and Prevention (CDC)”
https://www.cdc.gov/copd/about/index.html
1-2. 診断が遅れやすい呼吸器疾患の特徴
呼吸器疾患のなかには、初期の症状が軽く、気づかないうちに病気が進行してしまうものがあります。
間質性肺炎を例にとると、軽症の段階では無症状のまま、健康診断の胸部レントゲンで偶然見つかることもあります。
症状が感じられなくても病気は少しずつ進行していることがあり、発見が遅れやすいという特徴があります。
なお、間質性肺炎の一部(特発性間質性肺炎など)は、厚生労働省の指定難病とされており、診断が確実でかつ重症の程度によっては医療費補助の対象になる制度もあります。
【参考情報】『特発性間質性肺炎(指定難病85)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/431
また、COPDも「少し息が切れるくらい」と感じながら放置されやすく、医療を受けている患者さんは推定患者数のわずか数パーセントにとどまるとも指摘されています。
「長く治療を続けているのに改善しない」「別の病気が隠れているのではないか」と感じたときは、専門的な視点からもう一度見直してもらうことが大切です。
そのような場面でセカンドオピニオンが役立ちます。
2. セカンドオピニオンとは?基本をわかりやすく解説

「セカンドオピニオン」という言葉を耳にしたことはあっても、「具体的にどんなものなのか、よくわからない」という方も多いかもしれません。
ここでは、セカンドオピニオンの意味と目的についてわかりやすくご説明します。
2-1. 「第2の意見」を聞く仕組み
セカンドオピニオンとは、日本語に直訳すると「第2の意見」という意味です。
現在かかっている医師(主治医)に診断や治療方針を示してもらったうえで、それについて別の医師からも意見を聞くことをいいます。
【参考情報】『こころの耳 セカンドオピニオン』厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1628/
主治医が「最善」と考える治療を提案してくれたとしても、別の立場の医師から意見を聞くことで、治療法を具体的に比較できたり、自分に合った治療法をより納得して選べるようになります。
「主治医の説明が難しくてよく理解できなかった」「もう少し詳しく知りたい」といったときにも、セカンドオピニオンは役立ちます。
なお、セカンドオピニオンは「診察・検査・治療を行う場」ではありません。
別の医師が検査データや画像などの診療情報をもとに、意見を述べる「相談の場」です。
2-2. 転院やドクターショッピングとは違う
「セカンドオピニオンを受けると、主治医に失礼なのでは?」と心配される方もいますが、それは誤解です。
セカンドオピニオンはあくまで主治医のもとで治療を続けることを前提とした仕組みです。転院することや担当医を変えることを目的とするものではありません。
また、いくつもの病院を渡り歩いて、自分の希望に合う診断を求め続ける「ドクターショッピング」とも異なります。
セカンドオピニオンは、客観的な視点からの意見を取り入れることで、患者さん自身が治療に納得して向き合えるようにする仕組みです。
近年ではセカンドオピニオンは日常的に行われるようになってきており、患者さんがよりよい医療を納得して受けるための「権利」として認められています。
主治医に遠慮する必要はありません。厚生労働省の調査でも、セカンドオピニオンを受けた患者さんの約80%が「受けてよかった」と答えており、その有用性は広く認められています。
【参考情報】『平成23年受療行動調査(確定数)の概況』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/11/dl/kakutei-kekka-gaiyo.pdf
同じ結論であったとしても、病気や治療への理解がより深まり、安心して治療に取り組めるようになることもセカンドオピニオンの大切なメリットのひとつです。
3. セカンドオピニオンを考える目安

「セカンドオピニオンを受けてみたいけれど、自分のケースで受けてもよいのか」と迷う方も多いと思います。ここでは、呼吸器内科においてセカンドオピニオンが特に向いているケースやタイミングをご紹介します。
3-1. 呼吸器内科でセカンドオピニオンが向いているケース
以下のような状況では、セカンドオピニオンを検討してみてもよいでしょう。
・「本当にこの診断で合っているのか」と疑問や不安を感じている
・今の治療以外の選択肢があるかどうか知りたい
・医師の説明を聞いたが、よく理解できなかった
・間質性肺炎など、専門性の高い病気や指定難病と診断された
・今後の治療の方向性について、別の専門家の意見も参考にしたい
・治療を続けているのに、咳や息切れなどの症状が改善しない
特に間質性肺炎のような病気は専門性が高く、全国的に専門医が少ないとされています。「専門的な診断・治療方針をほかの専門医にも確認してもらいたい」というニーズに、セカンドオピニオンは応えることができます。
また、治療が長引いていたり、複数の病気が疑われていたりするケースでも、客観的な意見を聞くことで方向性が整理されることがあります。
【参考情報】”Interstitial Lung Disease” by “Johns Hopkins Medicine”
https://www.hopkinsmedicine.org/pulmonary/patient-care/interstitial-lung-disease
3-2. セカンドオピニオンを受けるタイミング
セカンドオピニオンを受けるのに最もよいタイミングは、診断を受けて治療を始める前の段階です。
治療方針が決まる前であれば、より多くの選択肢を比較・検討することができます。
ただし、治療中であっても「このまま続けてよいのか」「症状が改善しない」と感じたときに受けることも可能です。決して遅すぎることはありません。
4. セカンドオピニオンのメリットとデメリット

セカンドオピニオンには患者さんにとってよい面と、注意が必要な面の両方があります。両方をしっかり理解したうえで、活用するかどうかを検討しましょう。
4-1. メリット
● 治療への納得感と選択肢の広がり
セカンドオピニオンを受ける最大のメリットは、「自分の治療に納得して向き合えるようになること」です。主治医と同じ診断・治療方針が示された場合でも、「やはり今の治療で合っている」という確信が得られ、安心して治療に専念できるようになります。説明の仕方が変わることで、病気や治療についての理解がより深まることもあります。
また、喘息治療を受けている方は、症状が長引いたり思うように改善しない場合、別の疾患が背景に潜んでいる可能性もあります。セカンドオピニオンを活用することで、見落とされがちな診断の見直しや、より適切な治療への転換につながることもあります。
4-2. デメリット
● 費用に注意
セカンドオピニオンは健康保険が適用されず、費用は全額自己負担(自費診療)となるため、相談料は医療機関によって異なりますが、数万円程度かかることが多いとされています。
遠方の医療機関を選んだ場合は、交通費もかかることがあるでしょう。
また、時間が延長される場合は追加料金がかかることもあります。
事前に各医療機関に確認しておくことをおすすめします。
なお、加入している民間の医療保険や、勤務先の福利厚生サービスにセカンドオピニオン関連のサービスが含まれている場合もあります。
受診前にご自身の保険内容や福利厚生を確認してみるとよいでしょう。
● 手間と時間がかかる
主治医に紹介状や検査データの準備を依頼したり、予約を取ったりするための手間や時間がかかる可能性もあります。
● タイミングを見極めることが大切
セカンドオピニオンは、受けるかどうかの検討や準備に時間がかかるため、その時間がもったいないと感じることもあるかもしれません。
しかし、病気の種類や進行状況によっては、迷っている間に病状が進んでしまうリスクもゼロではないため、タイミングには注意が必要です。
たとえば、治療への納得感が得られずに受診から遠ざかってしまい、長引く咳の症状などを市販薬で対処している間にも、気づかないうちに病状が進行している可能性もあります。
このように、治療を中断してしまうことで生じるリスクを避けるためにも、迷っているときこそ早めにセカンドオピニオンを活用することが大切と言えるでしょう。
5. セカンドオピニオンを受ける手順と準備

実際にセカンドオピニオンを受けるには、どのように動けばよいのでしょうか。
ここでは、手順をご説明します。
5-1. 主治医への伝え方
まず、セカンドオピニオンを受けたい旨を主治医にお伝えください。
「他の先生にも意見を聞いてみたい」「別の視点からも確認したい」など、正直にお伝えいただいて問題ありません。
もし伝えにくければ、担当の看護師や受付スタッフに相談するのもひとつの方法です。
主治医からは、紹介状の作成と必要書類の準備をお願いすることになります。
「〇〇病院でセカンドオピニオンを受けたい」と具体的に伝えると、手続きがスムーズです。
まずセカンドオピニオンを受ける医療機関を探してから、主治医に伝えるという順番でも構いません。
5-2. 必要な書類と当日の流れ
<セカンドオピニオンを受けるために必要な書類・データ>
・紹介状(診療情報提供書)
・これまでの検査結果のデータ(血液検査・肺機能検査・胸部CT画像)
これらの書類やデータは、セカンドオピニオンを担当する医師が患者さんの状況を正確に把握するために重要となるため、必ず現在の主治医に相談して準備してもらいましょう。
<当日の流れ>
・担当医師が資料をもとに意見を述べます。
・診察・検査・治療は行いません。
・自分が気になっていることや聞きたいことをメモしておくと、限られた時間を有効に活用できます。
その後、セカンドオピニオンの結果を受けて、治療方針をどうするかは最終的に患者さん自身が決めます。

6. おわりに
呼吸器内科のセカンドオピニオンは、主治医との関係を大切にしながら、自分の病気や治療についての理解を深め、納得して治療に向き合うための仕組みです。
「今の治療が本当に合っているのか不安」「他の選択肢も知りたい」と感じたとき、ぜひ活用を検討してみてください。



