花粉症と喘息で咳が出る子どもの症状と注意点
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
春や秋の花粉シーズンになると、「くしゃみや鼻水に加えて咳も出ている」「風邪なのか花粉症なのか分からない」と悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。
特に、花粉症のある子どもでは、花粉がきっかけとなって喘息の症状が悪化することがあります。
この記事では、花粉症と喘息の関係や保育園や学校での過ごし方、受診の目安についてわかりやすく解説します。
1. 子どもの花粉症と喘息、併発しやすい理由

花粉症と喘息は、どちらも「アレルギー」に関係する病気です。
特に子どもでは、鼻のアレルギー症状と気道の炎症が同時に起こりやすく、花粉シーズンに咳や息苦しさが悪化することがあります。
1-1. 鼻と気道はつながっている
鼻から気管、そして肺へと空気の通り道はひと続きになっています。そのため、花粉症による鼻の炎症が強くなると、気道にも影響が及ぶことがあります。
これを「ワンエアウェイ(一つの気道)」という考え方で説明されることもあり、アレルギー性鼻炎と喘息は密接に関係しているとされています。
鼻の炎症が続くと、鼻づまりによって口呼吸になりやすくなります。口呼吸では、空気中の花粉やほこりがそのまま気道に入りやすくなるため、気管支の炎症が悪化する可能性があります。
1-2. 花粉が喘息の引き金になることもある
花粉が気道に入ると、免疫の反応によって気道の炎症が強まり、次のような症状が出ることがあります。
・夜間や朝方に咳が出る
・運動すると咳き込む
・息がゼーゼーする
・息苦しさが出る
こうした症状は、花粉によるアレルギー反応が気管支にも影響している可能性があります。
花粉シーズンだけ咳が続く場合は、喘息や咳喘息が関係していることもあるため注意が必要です。
2. 風邪と花粉症との見分け方

子どもでは、花粉症と風邪の症状が似ていることが多く、見分けが難しい場合があります。
いくつかの特徴を知っておくと判断の参考になります。
2-1. 花粉症の特徴
花粉症では、次のような症状が続くことがあります。
・透明でさらさらした鼻水
・くしゃみが続く
・目のかゆみ
・熱はほとんど出ない
これらの症状は、体が花粉に対してアレルギー反応を起こすことで生じます。
花粉が鼻や目の粘膜に付着すると、ヒスタミンなどの物質が放出され、くしゃみや鼻水、かゆみといった症状が起こります。
症状は花粉の多い日や外出後に強くなることがあり、毎年同じ季節に繰り返す傾向があります。
また、朝起きた直後や屋外から帰宅したあとに症状が強くなることも少なくありません。これは、夜間に室内に入り込んだ花粉や外出中に付着した花粉が刺激となるためです。
子どもの場合、鼻づまりが強くなると口呼吸になりやすく、のどの乾燥や咳につながることがあります。
花粉症だけと思っていても、咳が続く場合は気道にもアレルギー反応が広がっている可能性があるため注意が必要です。
【参考情報】『花粉症の原因・疫学』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html
【参考情報】”Allergic Rhinitis (Hay Fever)” by American College of Allergy, Asthma & Immunology (ACAAI)
https://acaai.org/allergies/allergic-conditions/hay-fever/
2-2. 風邪の特徴
一方、風邪の場合は次のような症状が多く見られます。
・発熱
・のどの痛み
・黄色や粘り気のある鼻水
・数日〜1週間程度で改善する
風邪はウイルス感染によって起こるため、鼻やのどの炎症だけでなく、体のだるさや食欲低下などの全身症状が出ることがあります。
花粉症では熱が出ることは少ないため、発熱がある場合は風邪や感染症の可能性を考える必要があります。
また、風邪の症状は数日から1週間ほどで徐々に改善することが一般的です。
ただし、花粉症や喘息の体質がある子どもでは、風邪をきっかけに気道が敏感になり、咳が長引くことがあります。
咳が2週間以上続く場合は、喘息や咳喘息などの可能性も含めて早めに医療機関で相談しましょう。
【参考情報】”About Common Cold” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/common-cold/about/index.html
3. 保育園・学校での過ごし方と注意点

花粉症や喘息がある子どもでは、保育園や学校生活の中で症状が悪化することがあります。
特に花粉が多い時期には、登園や登校をしてもよいのか迷う保護者の方も少なくありません。
花粉症や喘息のある子どもが無理なく学校生活を送るためには、体調をよく観察しながら、症状に応じて活動量や環境を調整することが大切です。
3-1. 登園・登校の判断の目安
花粉症や喘息の症状があっても、体調が安定している場合は通常どおり登園・登校できることが多いです。
たとえば、発熱がなく、呼吸が苦しくない状態で、普段どおり会話や食事ができているようであれば、基本的には学校生活を送ることが可能と考えられます。
一方で、息苦しさを感じている場合や咳が止まらない状態が続いている場合、呼吸の際にゼーゼーという音が聞こえる場合には、無理をさせないことが大切です。
こうした症状は喘息発作の前兆であることもあり、運動や活動によってさらに悪化する可能性があります。
特に朝の時点で呼吸が苦しそうな様子がある場合には、登校前に医療機関へ相談することも検討するとよいでしょう。
3-2. 教室環境と運動時の注意
学校生活の中には、花粉やほこりが増える環境があり、これが症状の悪化につながることがあります。
たとえば、校庭での体育や屋外活動では花粉を吸い込みやすく、また掃除の時間にはほこりが舞いやすいため、咳や鼻水、くしゃみなどの症状が強くなることがあります。
特に花粉が多い時期には、体育の授業や外遊びのあとに咳が出やすくなる子どももいます。
このような場合には、無理をして運動を続けるのではなく、体調に応じて活動量を調整することが大切です。
また、担任の先生や学校に、花粉症や喘息があることをあらかじめ伝えておくことで、症状が出た際に適切に対応してもらいやすくなります。
学校と家庭が連携して子どもの体調を見守ることが、安心して学校生活を送るための大切なポイントです。
◆『運動誘発性喘息に向き合う子どもと家族のための対策ガイド』について>>
4. 花粉症と喘息の薬の種類と使い方

花粉症や喘息のある子どもでは、症状が強くなってから治療を始めるよりも、症状が悪化する前から薬を適切に使うことが大切です。
特に花粉シーズンには、アレルギー反応によって鼻や気道の炎症が起こりやすくなるため、医師の指示に従い、薬を継続して使用することが症状のコントロールにつながります。
4-1. 花粉症の薬
花粉症の治療では、主に次のような薬が使用されます。
・内服薬(抗ヒスタミン薬)
・点鼻薬
・点眼薬
内服薬(抗ヒスタミン薬)は、アレルギー反応によって放出されるヒスタミンの働きを抑えることで、くしゃみや鼻水、かゆみなどの症状を和らげる薬です。
花粉症の治療では比較的広く使用されており、症状が出る前から服用を始めることで、症状の悪化を防ぎやすくなるとされています。
点鼻薬は、鼻の粘膜の炎症を抑える作用があり、鼻づまりや鼻水などの症状を改善する目的で使用されます。
特に鼻づまりが強い場合には、内服薬と併用することで症状が軽減することがあります。
また、目のかゆみや充血がある場合には点眼薬を使用します。花粉が多い時期には目の症状が強く出ることもあるため、症状に応じて使い分けることが大切です。
これらの薬は、症状が出てから使い始めるよりも、花粉の飛散が始まる前や症状が軽いうちから使用することで効果が期待しやすいとされています。
【参考情報】『特集 ぜん息・COPDと花粉症』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/58/feature/
4-2. 喘息の吸入薬
喘息の治療では、気道の炎症を抑え、呼吸を安定させるために吸入薬が中心となります。
吸入薬は、薬の成分を直接気道に届けることができるため、効率よく作用するのが特徴です。
喘息の吸入薬には、主に次のような種類があります。
・炎症を抑える薬(吸入ステロイド薬など)
・気管支を広げる薬(気管支拡張薬など)
炎症を抑える薬は、気道の炎症を落ち着かせ、喘息発作を起こりにくくする目的で使用されます。
一方、気管支を広げる薬は、気道が狭くなったときに呼吸を楽にする働きがあります。これらの薬は、症状や重症度に応じて組み合わせて使用されることもあります。
子どもの喘息では、症状が落ち着いてくると薬をやめたくなることもありますが、自己判断で中止すると気道の炎症が再び強くなり、花粉シーズンに症状が悪化する可能性があります。
そのため、症状が安定しているときでも、医師の指示に従って治療を継続することが大切です。
5. 受診の目安と家庭での観察ポイント

花粉症や喘息のある子どもでは、症状が急に強くなることもあるため、日頃から体調の変化をよく観察しておくことが大切です。
特に咳の続き方や呼吸の様子は、受診の判断につながる重要なサインになります。
「いつから症状が続いているか」「どのようなときに悪化するか」を意識して見ることで、早めの対応につながります。
5-1. 早めに受診した方がよい症状
花粉症では鼻水やくしゃみなどの症状が中心ですが、咳や呼吸の症状が続く場合は注意が必要です。
特に次のような症状がみられる場合は、医療機関への相談を検討してください。
・咳が1〜2週間以上続く
・夜間や早朝に咳き込むことが増えている
・呼吸のときにゼーゼーという音がする
・運動すると息苦しさが出る
これらの症状は、気道の炎症や喘息の可能性を示していることがあります。
咳が長引く、呼吸が苦しそう、普段より元気がないといった様子がみられる場合には、早めに医療機関で相談することが大切です。
症状が軽いうちに対応することで、発作の悪化を防ぐこともできます。
◆『長引く咳はアレルギーが原因?』について詳しくについて>>
5-2. 家庭でできる花粉対策
花粉症の症状を悪化させないためには、家庭内で花粉をできるだけ持ち込まない工夫も大切です。
外出から帰宅したときには、衣服についた花粉を軽く払ってから室内に入るようにすると、室内に花粉が入り込むのを減らすことができます。また、帰宅後に手洗いや洗顔を行うことも効果的です。
さらに、花粉が多く飛んでいる日には、窓を長時間開けないようにすることも一つの方法です。
室内に入り込む花粉を減らすことで、症状が軽くなることがあります。こうした日常生活の工夫を続けることが、花粉シーズンの症状を少しでも和らげることにつながります。
【参考情報】『特集 ぜん息・COPDと花粉症』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/58/feature/
6. おわりに
子どもの花粉症では、鼻症状だけでなく咳や息苦しさなど喘息の症状が出ることがあります。
風邪と似ていることも多いため、症状の特徴や続き方をよく観察することが大切です。
花粉シーズンは学校生活の中でも症状が悪化することがあるため、保護者と学校が連携して環境を整えることも重要です。
気になる症状が続く場合は、早めに呼吸器内科で相談するようにしましょう。



