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肺サルコイドーシスの原因や症状、検査、治療について

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

サルコイドーシスは、原因不明の多臓器疾患であり、肺にできることで肺サルコイドーシスを発病します。

サルコイドーシスとは、肺や眼、皮膚、心臓、神経などに、イボやしこりのような肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれるものができる病気です。

そのなかでも肺は、肉芽腫ができやすい臓器とされています。

若い人からお年寄りまで、幅広い年齢層で発病し、症状や経過が多様なのも特徴のひとつです。

今回の記事では、肺サルコイドーシスの原因や症状、検査、治療について詳しく解説します。

咳や息切れ、胸の痛みが気になる方は、ぜひ最後までお読みください。

1.原因


サルコイドーシスは、原因不明の多臓器疾患ですが、原因抗原によって免疫反応が起こり、全身の臓器に肉芽腫が形成されると考えられています。

一般的に遺伝しないとされていますが、ごく少数で家族内の発病が報告されています。

わが国では、特定疾患(指定難病)にされており、重症の場合は公費からの医療費補助の対象です。

【参考情報】『サルコイドーシス(指定難病84)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/266

2.症状


無症状のケースも多いですが、症状がある場合は、多様な症状があらわれます。

サルコイドーシスの症状は、肉芽腫ができた部位によって違う「臓器特異的症状」と、どの部位にできても共通の「(臓器非特異的)全身症状」の2つに分けられます。

2-1.臓器特異的症状

肺サルコイドーシスの臓器特異的症状は、以下のような症状です。

・咳
・痰
・息切れ
・胸の痛み

まれに肺の線維化が進み、呼吸不全に陥ることがあります。

サルコイドーシスは、肉芽腫ができた部位によって臓器別に症状が異なります。

そのため、肺以外にもサルコイドーシスができていた場合、以下のようなさまざまな症状があらわれます。

・眼症状
・皮疹
・不整脈
・筋肉腫瘤

これらの症状がある場合には、肺サルコイドーシスだけではないかもしれません。

2-2.非特異的症状

非特異的症状は、全身症状とも呼ばれ、発症部位に関わらず全身にあらわれる症状です。

・発熱
・体重減少
・疲れ
・痛み
・息切れ

このような非特異的症状のみの場合、検査所見で見つけられないケースもあり、見過ごされてしまうこともあります。

そのため、患者さんの自覚症状や困っている症状について、ていねいな問診が必要です。

患者さんは受診をするとき、どのような症状がつらいのか、しっかりと医師に伝えましょう。

【参考文献】Sarcoidosis by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/11863-sarcoidosis

3.検査


肺サルコイドーシスを疑う場合、以下のような検査をおこないます。

<画像検査>
肺の病変を調べるために、胸部CTをとります。
肺のどの部分に病変が広がっているのか、細かく検査ができます。

<気管支肺胞洗浄検査(BAL)>
うすい食塩水で肺の中を気管支鏡で洗い、その成分を調べます。
・総細胞数
・リンパ球分画
・Tリンパ球のCD4/CD8比
これらが高値を示すのがサルコイドーシスの特徴です。

<肺やリンパ節の生検>
気管支鏡を使って、肺の細胞の一部を取り、組織検査します。
診断をするには重要な検査です。

<血液検査>
病気の指標として、「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」が重要です。
高値を示す場合、サルコイドーシスを疑います。

<核医学検査>
アイソトープを使ったガリウムシンチ検査をおこないます。
アイソトープは、腫瘍や炎症に集まる性質があるため、どの部位にどの程度の腫瘍や炎症があるのか、進行具合を判断するのに役立ちます。

そのほかにも、尿検査や腎機能検査、肺機能検査、心電図などもおこない、各検査の所見から診断します。

4.治療


現状では、肺サルコイドーシスの根本的な治療法はありません。

しかし、予後は悪くなく、サルコイドーシスが進行して命に関わるケースはまれです。

自覚症状がない場合や症状が軽い場合には自然に軽快するケースも多く、まずは経過の観察をおこないます。

万が一、病気により命の危険や生活の質が低下する場合には、積極的な治療が必要です。

治療方法として、まずは第一選択薬の副腎皮質ステロイド薬を投与します。

これは、肉芽腫性の炎症を抑える目的です。

再発をする場合や難治性の場合には、免疫抑制剤の投与も検討されます。

【参考情報】『呼吸器病変』日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
https://www.jssog.com/wp/wp-content/themes/jssog/images/system/guidance/2-4-1.pdf

5.妊娠・出産について


サルコイドーシスの患者でも、重症例でなければ妊娠・出産は可能です。

出産前に症状が活動的ではない場合、妊娠中は症状が安定する傾向だとされています。

しかし、出産後に悪化する症例も報告されているので注意が必要です。

妊娠や出産で症状の変化があることから、性ホルモンとの関連性が指摘されていますが、解明はされていません。

妊娠や出産は、女性にとってライフステージの大きな変化であり、身体にも負担がかかります。

パートナーを含め、主治医と妊娠出産について、早めに相談しておくと安心です。

【参考情報】『6-6) 妊娠・出産、喫煙の影響』日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
https://www.jssog.com/wp/wp-content/themes/jssog/images/system/guidance/2-6-6.pdf

6.おわりに

肺サルコイドーシスは、肺に肉芽腫ができる原因不明の病気です。

肺は、サルコイドーシスの好発部位であり、特異的症状として咳や痰、息切れ、胸の痛みがあらわれます。

自然軽快するケースも多く、予後は悪くありません。しかし、まれに重症例で肺が線維化し呼吸不全を起こす場合があります。

無症状のケースもあり、「健康診断で指摘されて検査を受けてみると病気だった」というきっかけで見つかるケースもあります。

咳や痰が続いている人以外に、「少し動いただけでも息切れがする」などの非特異的症状があり、サルコイドーシスを疑っている人は、まずは呼吸器内科を受診してください。

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