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この咳はただの風邪じゃない?呼吸器内科を受診する目安

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

「咳がなかなか治らない」
「薬をのんでも咳がよくならない」
「咳がひどくて眠れない」

このような悩みがあるときは、呼吸器内科を受診してみましょう。

風邪やインフルエンザなどの咳なら、通常は3日ほどでピークを過ぎ、徐々に症状が治まります。

しかし、咳が長引いていたり、息苦しい・胸が痛いなどの症状を伴う場合は、何らかの病気が隠れている恐れがあります。

この記事では、咳が出るおもな呼吸器の病気を紹介し、呼吸器内科を受診する目安について解説します。咳が心配な人は、ぜひ参考にしてください。

【参考文献】❝Cough❞ by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/17755-cough

1.こんな咳の時は早めに呼吸器内科受診を


咳で悩んでいる場合、一般の内科でも診察は可能です。しかし、処方された薬を飲んでいても咳が長引いている時は、呼吸器内科で検査や治療をしてもらう方が良いでしょう。

呼吸器内科を受診した方が良いのは、以下のような時です。

・咳が2週間以上長引いている、
・一度治ってもすぐに咳が再発する
・息もできないほど激しい咳が出る
・咳とともに痰や微熱、息苦しさが続いている
・医師から「喘息ではない」「様子を見ましょう」と言われたが、咳が治まらず心配なとき

【参考情報】『長引く咳には必ず原因があります!』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/42/feature/feature01.htm

2.咳が出るおもな呼吸器の病気


咳がでる場合、喘息や咳喘息などのアレルギー疾患、風邪や肺炎、インフルエンザなどの呼吸器感染症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんなどの呼吸器疾患の可能性があります。

2-1.喘息

喘息は、空気の通り道(気道)が慢性的に炎症を起こして狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。

咳のほか、ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴:ぜんめい)や息苦しさが現れます。咳は、夜間や早朝に出やすいのが特徴です。

2-2.咳喘息

喘息に似ている病気ですが、喘鳴などの症状はなく、咳だけが3週間以上続くのが特徴です。

通常は痰を伴わないか、あるとしても少ない場合が多いです。

2―3.気管支炎

気管支がウイルスや細菌に感染し、炎症が生じる病気です。喫煙や大気汚染などが原因となることもあります。咳、痰、発熱などの症状が現れます。

子どもはもともと気管支が細いため詰まりやすく、喘息のような喘鳴を伴うこともあります。

2-4.肺炎

細菌やウイルスなどが肺胞に感染して炎症を起こす病気です。感染の原因によって症状は異なりますが、咳、発熱、胸痛、息切れなどが現れます。

高齢者や一部の肺炎では、咳などの症状が出ないこともあります。

重症化すると胸痛や胸の圧迫感が生じたり、突然呼吸困難になることもあります。

2-5.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

タバコの煙などの有害物質を長期間吸入していた人に多い病気です。有害物質の影響で肺胞が壊れ、呼吸が苦しくなります。

症状は、息切れと慢性的な咳や痰で、喘鳴や発作的な呼吸困難を起こす人もいます。また、体内の酸素が不足するので、心不全のリスクも高まります。

2-6.肺結核

結核菌に感染して発症する病気です、感染者のくしゃみや咳によって広がり、人にうつります。

咳や痰(血痰)、発熱、体重減少などの症状が現れ、朝方に激しい咳が出ることが多いです。

2-7.肺がん

肺にできる悪性の腫瘍です。他の臓器に転移することもあります。

咳、痰、倦怠感、体重減少、胸痛などの症状がありますが、特に初期は目立った症状が現れないことが多いです。無症状のまま進行することがあり、たまたま健診で見つかることがあります。

血が混じる痰(血痰)が出る場合は、肺がんの可能性があります。

2-8.呼吸器感染症

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症でも咳が出ます。

インフルエンザでは咳のほか、急激な発熱や倦怠感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどの症状があります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状は咳、発熱、呼吸困難です。軽症の場合はほとんど症状が出ないこともあります。

【参考情報】『呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/

3.呼吸器内科で行う基本的な検査


呼吸器内科で行われる基本的な検査は、胸部画像検査(X線やCT)と血液検査です。

3ー1.胸部画像検査

X線やCTスキャンを使用して画像を撮影し、肺炎や気管支炎などの炎症の程度を調べたり、肺結核やがんなどの異常を見つけることができます。

3-2.血液検査

血液中に含まれる白血球、好酸球、炎症マーカーなどの値から、アレルギーや感染症などの有無を調べます。

ダニ、カビ、ホコリ、イヌ、ネコなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)を特定したり、IgE抗体と呼ばれるタンパク質を測定して、アレルギーを起こしやすい体質かどうかを調べることも可能です。

4.呼吸器内科で行う専門的な検査


呼吸器内科では、必要に応じて以下のような専門的な検査も行います。

4-1.呼気NO検査

大きく息を吸い、ゆっくり吐くことで、吐いた息の中に含まれる一酸化窒素の濃度を測定する検査です。

気道の炎症の有無や程度を調べることができ、喘息の発見や治療の効率化に役立ちます。

4-2.モストグラフ

喘息の可能性を調べる検査です。気道が狭くなっているかどうかを調べたり、気道の空気抵抗を測ることができます。

マウスピースをくわえて、鼻から空気が抜けないようにクリップを使って呼吸しながら計測します。

この検査は、3〜4歳以上の子どもでも行うことができ、喘息の診断や治療の管理に役立ちます。

4-3.スパイロメトリー

喘息やCOPDなどの病気が疑われる場合や、病気の状態を確認するための検査です。息を吸う力や吐く力、酸素を取り込む力などを調べます。

この検査では肺活量や1秒量などの数値を測定できます。喘息の場合、肺活量や1秒量の数値が低くなる傾向があります。

​​【参考情報】『肺機能検査とはどのような検査法ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q29.html

5.おわりに

咳が2週間以上続いているときや、息苦しさなどつらい症状が伴うときは、念のため呼吸器内科で咳の原因を調べてみましょう。

また、長年タバコを吸っている人も、咳が気になるときは、呼吸器内科で肺の状態を確認しておきましょう。「咳だから」と軽く考えていると、重症化することもあります。

症状が軽いときは、一般の内科を受診しても構いませんが、「いつもと違う」と心配なときは、専門医の診察を受けるのが安心です。

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