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喘息予防、喘息発作にも有効!マスクの種類や正しい使い方

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

マスクは、感染予防だけでなく喘息予防や発作の軽減に効果的なツールとして注目されています。
いわゆる風邪やインフルエンザなど感染症のリスクを減らし、咳エチケットを守るためにも、正しいマスクの選び方や使い方はとても重要です。
この記事では、マスクの種類とその性能、適切な選び方や使い方についてご説明いたします。

1.マスクの役割


日常生活でも一般的になったマスクですが、そもそもの役割には一体どのようなものがあるでしょうか。ここからは、マスクの役割についてご説明いたします。

1-1.喘息の発症と喘息発作の予防に有効なマスク

喘息は、気道が慢性的に炎症を起こしやすい状態になる疾患です。アレルギー物質やウイルス、細菌などが誘因となって発症や発作が引き起こされます。

◆『喘息とはどんな病気か?症状・原因・治療方法を解説!』>>

◆『アレルギーと喘息について』>>

こうした外的刺激を防ぐために、マスクの着用は非常に有効です。
空気中に漂うアレルゲンや病原菌をブロックする能力を持つマスクを使用することで、喘息の発作を予防することができます。
さらに、マスクは、花粉やホコリ、煙、化学物質などの微粒子から気道を保護する役割も果たします。
これにより、気管支の過剰反応を抑え、喘息発作の頻度を減少させることが期待できるでしょう。
とくに秋から冬は、空気が乾燥してウイルスが蔓延しやすいため、マスクの着用が重要となります。

◆『喘息の方は要チェック!喘息が悪化する要因』>>

◆『季節の変わり目は喘息予防!』>>

1-2.喘息のある方はインフルエンザ感染に注意

喘息や気管支炎を持つ方は、インフルエンザに感染すると症状が重篤化するリスクが高くなります。
呼吸器に問題のない健康な方に比べて、インフルエンザによる呼吸器症状が悪化しやすく、肺炎を併発する可能性が高まるため、喘息発作を頻発する危険性があります。
このため、インフルエンザの予防策として、マスクの着用が極めて重要です。
さらに、インフルエンザ予防には、マスクの着用だけでなく、手洗いやうがいといった基本的な衛生管理や予防接種が欠かせません。
特に、外出時にはマスクを着用し、外から帰宅した際には手洗い・うがいを徹底することで、インフルエンザ感染のリスクを大幅に減らすことができます。

◆『インフルエンザの症状や検査、治療、注意点』>>

【参考文献】Influenza by World Health Organization (WHO)
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal)

【参考情報】日本アレルギー学会『新型インフルエンザと喘息』
https://www.jsaweb.jp/modules/important/index.php?content_id=6

1-3.咳エチケット

咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際の周囲の方に対する配慮のことで、重要なマナーだといえます。咳やくしゃみが出る場合には適切な咳エチケットを守ることが大切です。
感染症の拡大を防ぐためには、ご自分が無症状でもウイルスを持っている可能性があることを意識しましょう。
具体的には、咳やくしゃみをする際には、ティッシュやハンカチで口と鼻を覆いましょう。マスクを着用するのも咳エチケットとして有効です。
使い捨てのティッシュを使った場合は、ティッシュはすぐに廃棄し、その後手を洗いましょう。
マスクを着用している場合は、なるべくマスク表面に触れることは避けるのもポイントです。

◆『咳エチケットについて』>>

【参照文献】厚生労働省『咳エチケット』
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593495.pdf

2.マスクにはいろんな種類と性能がある


薬局やドラックストア、スーパーやネット通販などで、さまざまなマスクが販売されています。ここからは、マスクの種類や性能についてご説明しましょう。

2-1.マスクの分類と形状

マスクは使用する目的によって「家庭用」・「医療用」・「産業用」に分けることができます。

家庭用マスクは、日常生活で一般的に使われるもので、主に風邪などの感染症や花粉症対策として利用されます。
家庭用マスクにはさまざまな形状や素材があります。例えば、平型マスク、プリーツ型マスク、立体マスクなどです。
平型マスクは軽量で持ち運びに便利ですが、顔への密着性がやや劣るという特徴があります。
プリーツ型マスクは、顔の形に合わせてフィットしやすく、長時間の使用でも息苦しさを感じにくいのが利点です。
立体マスクは、顔にしっかりとフィットし、呼吸のしやすさを保ちながら使用できるため、とくに外出時や運動時に適しています。
次に、医療用マスクは、病院やクリニックで使われるもので、高度なフィルター性能を持っています。
医療用マスクは、主に感染予防を目的としており、外科手術などの医療現場で使用されることが多いです。
産業用マスクは、工業や建設現場での使用を目的としたもので、有害物質や粉塵から作業者の方を保護するために設計されています。
そのため産業用のマスクには、特殊なフィルターを使っているのが一般的です。特定の作業環境に応じた保護性能を発揮することが可能です。

2-2.粒子のサイズとフィルター性能

空気中に存在するウイルスや細菌、その他の粒子は、種類によって大きさが異なり、人のからだに与える影響も変わってきます。
ウイルスの大きさは非常に小さく、一般的に0.02〜0.3マイクロメートル(μm)程度です。
例えば、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスの大きさは約0.1μmとされています。
細菌はこれよりも大きく、0.3〜10μm程度で、大腸菌は約1μm、結核菌は約2〜4μmです。
花粉は10〜100μm程度と比較的大きく、スギ花粉は約30μmの大きさです。PM2.5は2.5μm以下の微小粒子で、大気汚染物質のひとつとして知られています。
マスクのフィルター性能は、これらの粒子の大きさに応じて設計されています。
例えば、花粉対策用マスクは、10μm以上の粒子を効果的に捕集するよう設計されており、花粉やハウスダストの防御に優れています。
ウイルス対策用マスクは、0.1μm程度の微小なウイルス粒子を捕集する能力があり、N95やDS2規格のマスクが特に高い捕集効率を持っています。
PM2.5対策用マスクは、2.5μm以下の微小粒子をしっかりと捕集するために高性能フィルターを使用しており、大気汚染物質からの保護に適しています。
一般的な不織布マスクは、3〜5μm程度の粒子を捕集する能力があり、主に飛沫感染の予防に効果的です。

【参考情報】環境省『マスクの種類と使用時の注意』
https://www.env.go.jp/content/900403853.pdf

3.マスクでウイルスや細菌を100%防げるか?


マスクは、完全に顔に密着しているわけではないため、ウイルスや細菌の侵入を100%防ぐことはできません。
正しいサイズと使用法を守ることで、その効果を大いに高めることが可能です。

3-1.サイズ選択

マスクの購入時にまず気をつけたい点はサイズ選びだといえます。マスクの効果を最大限に引き出すためには、正しいサイズを選ぶことが必要です。

適切なサイズのマスクを選ぶことで、顔にしっかりとフィットし、外部からの微粒子の侵入を防ぐことができます。
小さすぎるマスクは、顔とマスクの間に隙間ができやすく、十分な防護効果を発揮できません。逆に、大きすぎるマスクも同様に隙間が生じやすく、効果が減少します。
マスクを選ぶ際には、鼻から顎までしっかりと覆えるサイズであるかを確認します。
また、ノーズワイヤーがしっかりとフィットするかどうかも確認しましょう。適切なサイズのマスクを選ぶことで、飛沫感染や微粒子の侵入を大幅に防ぐことができます。

3-2.正しいマスクの付け方(プリーツタイプ)

プリーツタイプのマスクは、使いやすいと感じる方が多く、日常的に広く使用されています。マスクの効果を十分に発揮させるためには、正しい装着方法が重要です。
まず、マスクを着用する前に手を清潔にすることが大切です。手が汚れていると、マスクに触れた際にウイルスや細菌が付着してしまう可能性があります。

次に、マスクの上部にあるノーズワイヤーを軽く曲げて、鼻の形に合わせます。マスクを鼻の周りにしっかりとフィットさせ、隙間を減らしましょう。
その後、プリーツを下に向かって広げ、顎までしっかりと覆います。
このとき、マスクが口と鼻を完全に覆うように注意してください。最後に、マスクの両側を引っ張り、顔に密着させます。
マスクがずれにくくなり、効果的に飛沫を防ぐことが可能です。

3-3.マスクはいつも清潔なものを使おう

洗って繰り返し使えるタイプのマスクもありますが、不織布タイプのマスクは通常使い捨てです。

使い捨てタイプのマスクは、前の日のものを使いまわさず、一日一枚の使用を目安にするよう促し、清潔なマスクを使うべきであることついて調べ、簡単に説明してください。
使い捨てタイプのマスクは、通常一日一枚の使用が目安です。
一度使用したマスクは、ウイルスや細菌が付着している可能性が高いため、前の日に使ったマスクを再利用するのは避けるべきです。
とくに不織布マスクは、繊維が細かく、洗っても完全に清潔に保つことは難しいため、基本的には使い捨てです。
洗って繰り返し使えるタイプの布製のマスクもありますが、毎日洗濯して清潔に保つことが重要です。

4.マスクを清潔に保つ便利な専用ケース


外出先でマスクを一時的に外す場合、マスクを清潔に保つための専用ケースがあると、非常に役立ちます。
食事をする際や、会話をするために一時的にマスクを外す場合、そのままポケットやバッグに入れると、マスクが汚れるだけでなく、再度使用する際に衛生面での問題がでます。
マスク専用ケースは、マスクを清潔に保つだけでなく、折れ曲がったり、形が崩れたりするのを防ぐ役割も果たします。
持ち運びに便利で、コンパクトなデザインのものが多く、カバンの中で邪魔にならないのが利点です。常に清潔なマスクを使用するための必需品と言えます。
抗菌素材を使用したケースもあり、さらに衛生面での安心感を高めることができます。

5.おわりに

マスクは、喘息の予防や発作の軽減に大きな役割を果たします。
しかし、その効果を最大限に引き出すためには、ご自分の顔に合った適切なサイズのマスクを選び、正しい装着方法を守ることが不可欠です。
また、使い捨てマスクを清潔に使用するための専用ケースを活用し、常に清潔な状態でマスクを使用するよう心がけましょう。
マスクを正しく使用し、適切に活用することで、喘息の患者さんだけでなく、周囲の方の健康を守ることができます。
日常生活の中でマスクを効果的に利用し、安心して毎日を過ごしましょう。

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