喘息発作がおきてもパニックにならないためには?
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
「咳が止まらなくて息が苦しい」
喘息を持っている方は、突然の発作に襲われ、このような経験をしたことはありませんか?
突然の発作は、パニックを起こすこともあるでしょう。
今回の記事では、急な発作が起きた場合の対処法について解説します。
いざというときのために、対処法を理解しておくと安心です。
突然の喘息発作の対応に不安がある方は、ぜひ最後までお読みください。
1. 喘息発作がおきた!その時の対応方法とは
喘息発作が起きたとき、どのように対処すればいいのか理解しておくと、落ち着いて対処できますよ。
ここでは、発作の強度に合わせた対処法を紹介します。
◆『喘息とはどんな病気か?症状・原因・治療方法を解説!』>>
1-1.小発作がおきたときは
苦しくても横になれる状態は「小発作」を起こしていると考えられます。
小発作は、軽い喘鳴がありますが、呼吸困難はなく、会話も動作も通常通りにおこなえる状態です。
まずは、慌てずに短時間作用性β2刺激薬を吸入しましょう。
短時間作用性β2刺激薬とは、気管支を広げる作用が強く即効性があるため、すぐに呼吸を楽にしてくれる効果があります。
症状が改善すれば、そのまま自宅で安静にし、療養しましょう。
発作が起きたことは、後日主治医に報告し、状況を伝えておくと良いでしょう。
もし、吸入をしても効果が不十分であれば、20分おきに3回まで吸入します。
それでも改善がなく呼吸困難がある場合や、徐々に症状が悪化する場合には、救急対応ができる医療機関を受診しましょう。
発作を繰り返す場合も、医療機関の受診をしてください。
1-2.中発作がおきたときは
苦しくて横になれない状態は「中発作」を起こしていると考えられます。
話しかければ返事はできますが、子どもは機嫌が悪く、遊びや食事がやや困難で、寝ていても何度か目を覚ましてしまう状態です。
明らかな喘鳴や陥没呼吸があり、呼吸困難の状態を起こしており、日常生活が制約されます。
「中発作」の場合も、まずは「小発作」のときと同じ対応で、慌てず短時間作用性β2刺激薬を吸入します。
吸入後も症状の改善がみられない場合、20分~30分あけて再度吸入します。
それでも改善がない場合や症状が悪化していく場合には、救急対応ができる医療機関を受診しましょう。
もし、発作時に内服する経口ステロイド薬がある場合には、指示されている量を内服しておきます。
1-3.大発作がおきたときは
動けない、または、苦しくて話ができない状態は、「大発作」を起こしていると考えられます。
「大発作」は、あきらかな喘鳴が聴かれ、話しかけても返事をすることも難しく、会話も単語がやっと話せる程度しかできません。
日常生活はほぼできない状態でしょう。
呼吸困難があきらかで、起坐呼吸(横になると息苦しくなり、座ると楽になる呼吸)やチアノーゼがみられます。
周囲からは非常に苦しそうに見えるでしょう。
最初の対応は、ほかの発作強度のときと同じです。
まずは、慌てず短時間作用性β2刺激薬を吸入しながら、周囲に助けを求めましょう。
自力での吸入行動ができない場合も、周囲に助けを求めてください。
その後、速やかに救急対応ができる医療機関を受診するか、状態によっては救急車を要請します。
2.どんな時に喘息発作がおこるか確認しよう
自分が、どのようなときに喘息発作が起こりやすいか知っておくことは大切です。
個人により発作が起きやすいタイミングはさまざまですが、以下のような状況は一般的に発作を起こしやすい状況といえます。
・体調不良のとき
・気候の変化
・運動
・季節の変わり目
・精神的ストレスのあるとき
また、発作を起こす原因はひとつではありません。
「体調が悪いときに気候の変化が大きいと発作を起こしやすい」
「季節の変わり目に激しい運動をすると発作を起こしやすい」
このように、さまざまな条件が重なって発作が出やすいケースもあります。
自分がどのような状況やタイミングで発作が出やすいか知っていれば、その状況の回避や事前に薬の準備ができます。
いざ、発作が起こったときに、焦らず対応できるでしょう。
【参考情報】『ぜん息発作が起こったら』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/attack.html
3.喘息発作のときは周囲の協力を得よう
万が一、突然の喘息発作に襲われたら、迷わず周囲の人に協力を求めましょう。
自分だけで対処できる場合の発作もあります。
しかし、発作が突然襲ってきた場合には、パニックになり普段できている吸入動作ができなくなり、冷静な対処ができないことが考えられます。
自分だけでなんとかしようとせず、周囲に助けを求めることが大切です。
会社の同僚やよく行動を共にする友人などには喘息について説明しておくと、周囲もびっくりしパニックになる可能性は少ないでしょう。
また、子どもの場合は、自分の喘息についてしっかりと周囲に説明することはできません。
保育園や幼稚園、学校などには発作が起こったときにはどのような対処が必要か、家族が事前に説明しておきましょう。
【参考文献】Asthma by World Health Organization (WHO)
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/asthma
4.喘息発作のときは冷静な判断をしよう
パニックを起こすと、人は冷静な行動や判断ができなくなります。
発作に冷静に対処するために、以下のような準備をしておきましょう。
・発作治療薬(リリーバー)
・喘息カード
喘息カードには、氏名や生年月日、緊急連絡先、通院している医療機関などを記載しておき、必要なときに取り出せるようにしておきます。
発作時の対応方法も記載しておき、自分では対処できない発作が起こったときには、周囲にいる人に喘息カードを見せると、周囲も協力しやすいでしょう。
発作が起きたときにパニックにならず冷静に対応するためには、事前の準備が大切です。
喘息発作について知り、どう行動すればよいかを事前に考えておきましょう。
【参考情報】『喘息カード記入マニュアル』岐阜県医師会
https://www.gifu.med.or.jp/zensoku_file/zensoku_card_manual.pdf
5.おわりに
突然の喘息発作は、パニックを引き起こす可能性があります。
パニックになると、冷静な行動や判断ができなくなります。
いざというときのために、普段から準備しておくと安心でしょう。
また、ひとりでなんとかしようとせず、周囲に助けを求めることも大切です。
周囲に助けを求められる人がいないときには、かかりつけ医療機関に相談してみましょう。