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インフルエンザの症状や検査、治療、注意点

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる気道感染症で、一般的な風邪とは区別され、より重症化しやすい疾患として認識されています。

毎年多くの方が感染しますが、正しい知識と対策を知ることで、感染を予防し症状を最小限に抑えることができます。

この記事では、インフルエンザの症状、検査、治療法、そして予防や注意点について詳しくご説明いたします。

1.症状・特徴


インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。

ウイルスは主に飛沫感染と接触感染によって広がります。

インフルエンザにはいくつかの型があり、それぞれ特徴や症状が異なります。型に関わらず、症状が急激に現れるのが特徴です。また、合併症のリスクも同様に存在します。

ここからは、それぞれの型についてご説明いたしましょう。

【参考文献】❝Influenza (Seasonal)❞ by World Health Organization (WHO)
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal)

1-1.A型インフルエンザ

A型インフルエンザは、人から動物へ、また動物から人へ感染することがあります。とくに鳥類などの人以外の動物にも感染する特徴があります。

初期症状は、1〜3日間の潜伏期間の後に現れ、38°C以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、のどの痛み、鼻汁、咳などが典型的です。

A型インフルエンザの流行時期は、主に冬季ですが、B型よりも早く流行する傾向があります。

ただし、近年では一年を通して散発的に見られるようになっており、注意が必要です。

A型インフルエンザウイルスは、数年から数十年ごとに突然変異を起こし、新しい亜型が出現することがあります。これにより、世界的な大流行(パンデミック)を引き起こす可能性があります。

1-2.B型インフルエンザ

B型インフルエンザは、人から人へのみ感染し、A型に比べて流行の範囲が限定的です。パンデミックを引き起こすことはありませんが、地域的な流行を毎年見せます。

症状に関しては、A型とB型の間に明確な違いはほとんどないとされています。典型的な症状には、38°C以上の高熱、頭痛、筋肉痛・関節痛、咳、痰、鼻水などがあります。

消化器症状(腹痛や下痢)がB型で多いとされることがあります。

流行時期については、B型は通常2月頃から春先にかけて流行することが多いとされています。ただし、年によって流行時期が変動することがあり、A型とB型が同時期に流行することもあります。

また、B型インフルエンザは、B/山形系統とB/ビクトリア系統という2種類の系統に分かれます。A型に比べて種類が少なく、変異もゆっくりであるため、世界的な流行が起こりにくいという特徴があります。

1-3.その他のインフルエンザ

ここからは、A型、B 型以外のインフルエンザについてご説明いたしましょう。

【新型インフルエンザ】
新型インフルエンザは、季節性インフルエンザウイルスと抗原性が大きく異なるウイルスによって引き起こされます。

免疫を獲得していないため、全国的かつ世界的に急速に蔓延し、国民の生命と健康に重大な影響を与える可能性があります。

2009年に発生したH1N1型新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)は、その一例です。

このウイルスは動物(豚)の中で維持されていたヒトへの感染性のあるインフルエンザウイルスで、多くの方がこのウイルスに対する免疫を持っていなかったため、世界的な大流行(パンデミック)を引き起こしました。

【鳥インフルエンザ】
鳥インフルエンザは主に鳥類の間で流行するインフルエンザですが、稀に人に感染する可能性があります。H5N1型やH7N9型が代表的です。

重要な点として、鳥インフルエンザウイルスが人から人への持続的な感染を引き起こすように変異する可能性があることです。そのため、新型インフルエンザとしてパンデミックを引き起こすことが危惧されています。

これらのインフルエンザの予防には、一般的なインフルエンザと同様に、マスクの着用、手洗い、うがいなどが重要です。新型インフルエンザに対しては、状況に応じてワクチン接種が行われることがあります。

【参照文献】インフルエンザとは『国立感染症研究所感染症情報センター』
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html

2.検査と治療


インフルエンザが疑われる場合は、迅速に適切な検査と治療を受けることが重要です。ここでは、検査と治療について詳しくご紹介いたします。

2-1.受診科目は?

インフルエンザが疑われる場合、まずは内科または小児科の受診を検討しましょう。

感染拡大を防ぐため、病院に電話して状況を伝えてから受診するほうがいいでしょう。

持病がある方や妊娠中の方は、まずかかりつけの病院に電話で相談することをお勧めします。

早期に適切な対応を取ることで、症状の悪化や合併症を防ぐことができます。

2-2.病院受診の目安は?

インフルエンザの受診の目安として、症状が出てから12時間以降に検査を受けると正確な結果が得られやすいです。

一方で、発症してから48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を服用することで、症状の悪化を防ぐ可能性が高くなります。

したがって、症状が現れてから12時間から48時間の間に受診するのがおすすめです。

2-3.検査

インフルエンザの検査には、いくつかの方法があり、それぞれに特徴と利点があります。

まず、最も一般的な方法として抗原検査があります。
抗原検査では迅速診断キットを使用し、鼻や喉の粘膜を綿棒で採取して行われます。検査結果は10〜30分程度で判明し、A型とB型のインフルエンザを識別することができます。

ただし、精度は50〜70%程度であり、特に感染初期には偽陰性の可能性があります。偽陰性の要因は、初期段階ではウイルス量が少ないため、検出できない場合があるためです。

次に、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)があります。PCR法は非常に高感度な検査方法で、ウイルスの遺伝子を増幅して検出します。

そのため、インフルエンザウイルスの有無を非常に高い精度で確認することができます。
しかし、時間がかかるため結果が出るまでに数日を要するので、迅速な診断が必要な場合には適していません。

さらに、ウイルス分離法という方法もあります。インフルエンザウイルスを直接培養して検出する最も確実な方法です。

ウイルスの存在を確実に確認できますが、結果が出るまでに1〜2週間かかるため、臨床的な診断にはあまり利用されません。
主に研究目的や詳細なウイルス分析に使用されます。

最後に、抗体検査法があります。抗体検査法はインフルエンザに感染した後の体内で作られる抗体を検出します。

感染後10〜14日経過してから行うことで、過去のインフルエンザ感染を確認するのに有効です。急性期の診断には適していませんが、感染歴を調べるために利用されます。

2-4.治療

インフルエンザの治療には、主に抗インフルエンザウイルス薬と対症療法が用いられます。

【抗インフルエンザウイルス薬】
抗インフルエンザウイルス薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザなど)は、ウイルスの増殖を抑える効果があります。発症してから48時間以内に服用することが効果的です。

【対症療法】
症状を和らげるための解熱剤や鎮痛剤が使用されます。十分な休息と水分補給をすることも重要です。
栄養バランスの取れた食事を摂り、体力を維持することも回復を早めるために必要といえるでしょう。

3.インフルエンザとわかったら注意する点


インフルエンザにかかった場合、早期回復に努め合併症を防ぎましょう。ここからは、生活の仕方や回復後の注意点についてご紹介いたします。

3-1.お家での注意点

インフルエンザに感染し自宅療養を行う際に注意が必要な点がいくつかあります。

まず、処方された薬は必ず指示通りに最後まで服用することが大切です。症状が改善したからといって薬の服用を途中でやめてしまうと、ウイルスが再増殖し、症状が再発する可能性があります。

次に、水分補給をしっかりと行いましょう。とくに高熱が出ているときには、大量の水分が身体から失われます。
意識的にこまめな水分摂取を心がけ、脱水症状を防ぎましょう。水やスポーツドリンク、経口補水液などを適宜飲むといいでしょう。

食事についても注意が必要です。消化の良い食事を摂ることで、胃腸に負担をかけないようにしましょう。おかゆやスープなどが特におすすめです。栄養バランスの取れた食事を心がけることが、体力の回復を助けます。

また、部屋の湿度を適切に保つことも重要です。
部屋の湿度を50~60%に保つことで、ウイルスの活動を抑制し、鼻や喉の粘膜を保護することができます。加湿器を使用するか、濡れタオルを部屋に干すなどの方法で湿度を保ちましょう。

さらに、室内の空気を新鮮に保つために、1日数回の部屋の換気を行いましょう。室内のウイルス濃度を下げることができ、感染のリスクを減らすことができます。

最後に、インフルエンザに感染した子どもが異常行動を起こすことがあります。めったにないことですが、異常行動により高層階から転落するなどの死亡事故が報告されています。
未成年者がインフルエンザと診断された場合は、一人にしないようにし、常に大人の目が届くようにして安全を確保することが重要です。

これらの点に注意しながら、自宅での療養を行うことで、インフルエンザの回復を早めることができます。また、家族や周囲の人々への感染拡大を防ぐことにも繋がるでしょう。

3-2.外出はいつから可能?

インフルエンザと診断された場合、学校や職場への復帰には慎重な判断が必要です。

学校の場合、学校保健安全法に基づき、出席停止の期間が定められています。発症後5日を経過し、さらに解熱後2日を経過するまで出席停止となります。
幼児の場合は解熱後3日を経過するまでが必要です。

職場においては法律で一律の基準が定められているわけではありませんが、医学的には発症前日から発症後3〜7日間の外出自粛が推奨されています。
多くの企業では、学校と同様の基準を採用していることが多いですが、具体的な出勤停止期間は会社によって異なります。

そのため、勤務先の方針に従い、必要に応じて上司や人事部に確認しましょう。

一般的に、インフルエンザウイルスの感染力が最も高いのは発症1日前から発症後3日までとされています。この期間中は特に他人への感染リスクが高いため、慎重な行動が求められます。

復帰のタイミングを決める際には、症状が完全に回復したことを確認することです。
職場の上司や学校の担当者と相談し、適切な復帰時期を決めることが大切です。焦って復帰するのではなく、十分な休養を取ることが感染拡大の防止とご自身やお子さまの健康回復につながります。

4. おわりに

インフルエンザは適切な治療と予防で症状を軽減し、感染を防ぐことができます。

症状が現れたら早めの受診と治療が大切です。また、感染を広げないために、自宅療養中の注意点を守りましょう。

インフルエンザの予防には、ワクチン接種や日常的な手洗い・うがいの徹底も有効です。健康管理をしっかり行い、インフルエンザの流行を無事に乗り切りましょう。

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