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咳をした時に胸の痛み。もしかしたら、こんな病気かも

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

咳をした際に胸に痛みを感じて不安を感じたことはありますか?咳による胸の痛みの原因はさまざまなことが考えられます。

長引く咳や激しい咳による筋肉痛による痛みの場合や、深刻な病気が原因で引き起こされる可能性もあります。

自己判断せずに、症状が続く場合には早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。

この記事では、咳による胸の痛みの原因と対処法についてご説明いたします。

1.咳で胸の痛み。なぜ?


ここからは、咳をすることで胸に痛みを感じる理由についてご説明いたします。

1-1.咳のしすぎで筋肉痛に

咳をしすぎると、咳そのものが胸部の筋肉や臓器に大きな負担をかけ、筋肉痛が起こることがあります。

咳が続く風邪や気管支炎などでは、咳のたびに胸の筋肉が収縮するためです。とくに、激しい咳は、肋骨周囲の筋肉に負担をかけるので、筋肉痛を引き起こす原因となります。

極端にひどい咳の場合には、肋骨が疲労骨折することもあります。

1-2.肺炎

肺炎は肺の感染症で、細菌やウイルス、真菌が原因で発生します。

主な症状には、咳、発熱、息切れ、胸の痛みなどがあり、炎症が胸膜に広がると、呼吸や咳をする際に胸に強い痛みを感じることがあります。

胸の痛みを引き起こす原因は、肺炎にかかると肺内の気泡(肺胞)が炎症を起こすためです。肺炎が進行すると、呼吸困難や全身の倦怠感などの症状も現れるため、早期の治療が重要です。

1-3.肺結核

肺結核は結核菌による感染症で、慢性的な咳、痰、発熱、体重減少などの症状がでます。進行すると、肺の炎症が胸膜にまで広がり、胸の痛みが出てくることがあります。

結核は特に免疫力が低下している方が感染しやすく、適切な治療を受けなければ重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

胸の痛みは、結核が肺の外に広がり、胸膜に影響を与えることによって生じることが原因です。

1-4.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDは慢性的な気道の炎症と閉塞を伴う疾患で、喫煙が主な原因とされています。肺の組織が破壊されることによって引き起こされ、慢性的な呼吸困難や咳が続きます。

息切れ、長引く咳、痰の増加が主な症状です。進行すると、呼吸困難や胸の痛みが現れることがあります。

とくに冬や感染症が流行する時期に症状が悪化することが多く、継続した定期的な治療が必要です。

1-5.心臓疾患

狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患も、咳と胸の痛みを引き起こすことがあります。

心臓疾患は、心臓への血流が不足することで発症し、症状として胸部に圧迫感や痛みを伴います。咳をすることで症状が悪化することも多いです。

心臓疾患の痛みは、しばしば左肩や腕に広がるように発生し、急激な息切れや冷や汗を伴うことがあります。これらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診することが重要です。

【参考文献】❝Dry Cough and Chest Tightness❞ by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/21888-dry-cough-and-chest-tightness

2.咳で胸が筋肉痛になるほどの疾患とは?


咳が長引き、胸の筋肉痛を引き起こす原因となる病気の代表的なものをご説明いたします。咳が主な症状なため、頻繁な咳や強い咳が筋肉痛を悪化させ胸の痛みにつながることがあります。

2-1.喘息

喘息は気道が狭くなり、呼吸が困難になる病気です。主な症状は咳、喘鳴、息切れなどがあります。

咳が長引くと、胸や腹部の筋肉が疲労し、筋肉痛を引き起こすことがあります。症状が悪化する原因はアレルゲンや運動、ストレスなどです。

適切な管理と薬物療法により、症状のコントロールが可能です。

2-2.咳喘息

咳喘息は、通常の喘息と異なり、気道の狭窄はなく、咳のみが主な症状です。

長引く咳が特徴であり、これが筋肉痛の原因となることがあります。

気管支の過敏性が高まることで発症し、夜間や早朝に咳が悪化することが多いです。適切な治療により、症状の改善が期待できます。

【参照文献】独立行政法人 環境再生保全機構『「もしかしてぜん息?」と思っている方へ』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html

2-3.新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症は、さまざまな症状を引き起こしますが、咳が顕著な症状の一つです。

咳が激しくなると、胸の筋肉に負担がかかり、筋肉痛が生じることがあります。

そのほか、呼吸困難、発熱、倦怠感などの症状を伴うことがあり、重症化すると肺炎や呼吸困難を引き起こすことがあります。

早期の診断と治療が重症化を防ぐために重要です。

2-4.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ菌による肺炎で、激しい咳が特徴です。

激しい咳が1か月ほど続くことがあり、その結果、胸の筋肉が痛くなることがあります。

とくに若年層で多く見られ、咳のほかに発熱や喉の痛みなどの症状がでます。抗生物質による治療が効果的であるため、早期の治療が重要です。

2-5.百日咳

百日咳は、長期間続く激しい咳が特徴の感染症です。

咳が約3か月(100日)続くことがあり、咳による筋肉痛が出ることがあります。

特に乳幼児や高齢者の方は、重篤な症状を引き起こすことがあるため、予防接種が重要です。治療には抗生物質が使われ、咳を軽減するための対処療法も行われます。

3.呼吸器内科で、咳で胸が痛い場合に行う検査は?


咳で胸に痛みがある場合、呼吸器内科ではさまざまな検査を行います。検査により、原因を特定し、適切な治療をおこなうことが可能です。

3-1.画像検査

胸部X線検査やCT検査などの画像検査により、肺や胸部の状態を詳細に確認し、肺炎や肺結核、COPDなどの疾患の有無を診断します。

胸部X線検査は、肺の影や異常な構造を確認するための基本的な検査です。CT検査はより詳細な画像を確認でき、病変の正確な位置や範囲を評価するのに役立ちます。

3-2.血液検査

血液検査では、感染症や炎症の有無を確認するために、白血球数やCRP(C反応性タンパク)などの値を測定します。

この値により、感染症や炎症性疾患の診断がしやすくなります。

また、血液ガス分析により、血液中の酸素や二酸化炭素のレベルを測定し、呼吸機能の評価も行います。血液ガス分析により、重篤な呼吸不全の早期発見が可能です。

3-3.呼吸機能検

呼吸機能検査は、肺の機能を確認するために行われます。

パイロメトリーと呼ばれる検査により、肺活量や気流速度を測定し、COPDや喘息などの診断に役立てます。

気道の狭窄や閉塞の程度を評価し、適切な治療方針を決定するために重要です。

ピークフロー計を使用すると、自宅で呼吸状態が確認でき、自己管理にも役立てることができます。

4.激しい咳でつらい時、こんなことを試してみよう!


激しい咳が続くときには、次のような対処法を試してみることで、一時的に症状を和らげることができます。

4-1.水分摂取

水分摂取は、喉の乾燥を防ぎ、咳を和らげる効果があります。

とくに温かい飲み物は、喉を潤し、咳の刺激を減らすことができるのでおすすめです。冷たすぎる飲み物は、喉に刺激を与える場合があるので避けましょう。

また、水分を十分に摂ることで、痰を薄め排出を楽にする効果もあります。喉の潤いを保つために、こまめに水やお茶を飲むことを心がけましょう。

4-2.部屋の加湿

部屋の加湿は、乾燥した空気を防ぎ、一時的に激しい咳を和らげるのに有効です。

加湿器を使用するか、濡れタオルを室内に干すことで、適切な湿度を保ちましょう。

適度な湿度は、喉や気道の乾燥を防ぎ、咳の頻度を減らすことができます。鼻や喉の粘膜を保護し、感染症の予防にも役立つでしょう。

4-3.ハチミツの摂取

ハチミツは、喉の炎症を抑え、咳を和らげる効果があるとされます。ハチミツは自然の抗菌作用を持ち、喉の痛みや炎症を軽減する効果が期待できます。お湯に溶かして飲むと、さらに効果的です。
ただし、1歳未満のお子さまにはボツリヌス菌のリスクがあるため、ハチミツを与えてはいけません。

5.おわりに

咳による胸の痛みが続く場合は、自己判断せずに呼吸器内科やかかりつけ医などの医療機関を受診しましょう。

適切な診断と治療を受けることで、早期に症状を改善することができます。

咳は、一般的な風邪から深刻な疾患の兆候まで、さまざまな原因によって引き起こされるため、医師の診断を受けることが重要です。

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