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気胸の症状や検査、治療について

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

気胸は、肺に突然穴が開き、肺から空気が漏れることで胸痛や呼吸困難を生じます。
気胸を起こすと、突然の胸の痛みと息苦しさを感じます。

重症化すると、心臓が圧迫され血圧が下がりショック状態を引き起こす場合もある怖い病気です。

原発性自然気胸という、特定の原因がなく発症する気胸もありますが、さまざまな肺の病気がきっかけとなる場合があります。

今回の記事では、気胸の症状や検査、治療を中心に、特殊な気胸も紹介します。

気胸は、症状が出ない場合や軽い違和感しかない場合もありますので、気になる症状がある方は、ぜひ最後までお読みください。

1.症状


気胸は、肺に穴が開き、肺の外側(胸腔)に空気が漏れ出してしまうために、肺がしぼみ膨らまなくなってしまう病気です。

以下のような症状があらわれます。

・ 胸の痛み
・ 呼吸困難
・ 咳

症状がない場合には、胸部のレントゲンを撮ったときに見つかる場合もあります。

また、気胸には、以下のような発症しやすい人の特徴があります。

・ 10代後半~20代前半の長身やせ型の男性
・ 喫煙歴のある高齢者

これらの特徴に当てはまる人は、突然の胸の痛みや息苦しさを感じたら、一度受診しておきましょう。

【参考文献】❝Pneumothorax (Collapsed Lung)❞ by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15304-collapsed-lung-pneumothorax

2.特殊な気胸


気胸にはいくつか種類があります。

・ 原発性自然気胸
・ 続発性気胸
・ 外傷性気胸
・ 月経随伴性気胸

気胸の中でも、異所性子宮内膜症やリンパ脈管筋腫症が原因で生じる気胸は、女性にしか生じない特殊な気胸です。

ここでは、この2つの原因で起こる女性特有の気胸について解説します。

2-1.異所性子宮内膜症

子宮や卵巣以外に生じた内膜症を、異所性子宮内膜症といいます。

そもそも子宮内膜症とは、なんらかの原因で子宮の内膜組織が、子宮内部以外で増殖する病気です。

この子宮内膜の組織が、血管を介して腹腔内や胸腔内に入り込み増殖します。
そのため、月経をきっかけに、増殖した内膜が剥がれ、気胸を発症します。

月経のたびに気胸を発症するのが月経随伴性気胸の特徴です。
90%が生理の前日から2日目までに気胸を生じ、ほぼ右の肺でしか起こりません。

ホルモン療法を中心に治療がおこなわれますが、手術による治療がおこなわれる場合もあります。

【参考情報】『月経随伴性気胸』気胸・肺胞スタディグループ
https://lungcare.jp/details05.html#:~:text=%E6%9C%88%E7%B5%8C%E9%9A%8F%E4%
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2-2.リンパ脈管筋腫症

リンパ脈管筋腫症とは、LAM細胞と呼ばれる異常細胞が肺や身体中のリンパ節、腎臓で増殖する稀な病気です。

妊娠可能な若い女性に発症し、30歳前後で病気に気づく場合が多いです。

LAM細胞が肺で増殖すると、肺組織の中に嚢胞(体の中にできる液体の入った袋のようなもの)ができます。
嚢胞はゆっくりと増殖し、肺の中で徐々に嚢胞が増え、その嚢胞が破裂すると気胸を引き起こします。

嚢胞が多いと、何度も気胸を起こすのが、リンパ脈管筋腫症の特徴です。
嚢胞がある程度増えてきた段階で、労作時に息切れを感じるようになります。

しかし、「運動不足かな」と思う程度の軽い息切れです。
初期の段階では自覚症状はなく、息切れが出はじめても病気とは認識されにくいのです。

息切れがひどくなったり、気胸を起こしたりしてから、リンパ脈管筋腫症が発覚するケースが多いです。

リンパ脈管筋腫症は、徐々に肺の機能が低下していく場合が多く、根治が難しい病気とされています。
そのため、厚生労働省で難病指定されている疾患です。

【参考情報】『リンパ脈管筋腫症(LAM) 指定難病89』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/173

3.検査


気胸を疑う症状がある場合、まずは胸部レントゲン検査をおこない、肺の状態を確認します。

息を吸った状態と、吐いた状態のレントゲンを確認することで、より気胸がわかりやすくなります。

以下の表は、レントゲン検査での気胸の重症度分類です。

<気胸の重症度>

重症度 状態
軽度 肺の頂上(肺尖部)が鎖骨より上にある
中等度 肺の頂上(肺尖部)が鎖骨より下にある
高度 肺の虚脱が著しい
緊張性 空気が漏れ続け胸腔内が陽圧になっている

気胸がわかりにくい場合や他の肺疾患を疑う場合、CT検査をおこない、より詳しく検査します。

4.治療


気胸の治療方法は、重症度により異なりますが、治療で肺が膨らむのを補助して症状を改善させるのが目的です。

肺がしぼんでいる期間が短く、軽度の場合は安静にして様子を見ます。

気胸が中程度の場合、外来通院用携帯ドレナージキット(体内に溜まった液体を体外に排出する医療器具)を利用し、外来通院で治療がおこなえます。
携帯ドレナージキットとは、小さなボトルがついたチューブを外来で胸に留置する処置をします。

留置したチューブで胸腔に漏れ出た空気を抜きながら、日常生活を送ることができます。
ただし、携帯ドレナージキット装着中は、激しい運動や入浴はできません。

気胸の程度が強い場合は、胸腔ドレナージという方法でしぼんでいる肺の周りの空気を体外に排出します。

胸腔ドレナージとは、胸腔内にドレーンと呼ばれるチューブを挿入し、胸腔内の空気や液体を排出する、外科的な処置です。
長期間気胸が続く場合や肺のしぼみが大きい場合、入院してドレナージ治療を行う場合があります。

胸腔ドレナージで改善しない場合や左右両側の気胸の場合、胸腔鏡手術で治療がおこなわれるケースもあります。

5.おわりに

気胸は、なんらかの原因で肺に突然穴が開き、肺から空気が漏れる状態の病気です。

肺がしぼんでしまうため、胸の痛みや息苦しさを感じます。

気胸は突然発症する可能性のある疾患です。

若くて細身の男性に起こりやすいとされていますが、女性特有の疾患から気胸を引き起こす場合もあります。

突然の胸の痛みや呼吸困難などの症状があれば、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

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