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喘息の女性が妊娠中に感じる不安や疑問

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

妊娠はとても喜ばしいことですが、喘息を持つ方が妊娠した場合、喘息の治療について不安や疑問を感じるかもしれません。

妊娠が喘息の症状にどのような影響を与えるのか、妊娠中に使用できる薬はどのようなものがあるのか、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるのかなど、心配される方は多いとされます。

この記事では、妊娠中の喘息管理に役立つ知識とポイントをご紹介します。

喘息の症状をコントロールし、安心して妊娠生活を送れるようにしましょう。

【参考文献】❝Asthma and Pregnancy❞ by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/managing-asthma/asthma-and-pregnancy#:~:text=Asthma%20is%20common%20among%20pregnant,Your%20symptoms%20may%20even%20improve

1. 妊娠すると喘息症状は悪化する?


妊娠は女性のからだに多くの変化をもたらします。

とくに、妊娠初期や後期は変化が大きく、喘息の症状が悪化しやすい傾向があります。これは、体重増加やホルモンバランスの変化が原因です。

ただし、妊婦さんの体調は個人差が大きく、喘息の症状への影響はさまざまです。

そのため、医師は健康状態を細かく診る必要があります。

診察のうえで、喘息症状に応じた適切な治療を行います。妊娠中に症状が変化した場合には、薬の見直しや調整が必要です。

喘息管理は母体と胎児の安全を守るために非常に重要といえます。

妊娠中は、ご自身の症状の変化に注意し、医師との連絡を密に取りましょう。

定期的な診察を受け体調変化を正確に伝えることで、適切な治療を受け続けることが可能です。

2.薬は使っても良いのか


妊娠中の喘息治療に使用される薬の安全性、胎児に奇形を引き起こす可能性について心配されることがありますが、多くの喘息治療薬は安全とされています。

以下で、主な薬についてご解説いたします。

・吸入ステロイド薬
妊娠中でも安全に使用できることが多くの研究で示されています。喘息のコントロールに基本的な治療薬で、胎児への影響は最小限です。

・吸入β2刺激薬
単体または吸入ステロイド薬との配合剤として使用され、妊娠中の喘息発作の緊急対応に効果的です。

・吸入抗コリン薬
喘息の症状緩和に役立ちますが、使用前に医師と相談が必要です。

・クロモグリク酸ナトリウム
安全性が比較的高いとされ、長期管理に有効です。

・経口ステロイド薬
重症の喘息発作に対する治療で必要とされる場合がありますが、使用は慎重に行うべきとされています。

・ロイコトリエン受容体拮抗薬
一部の薬剤は妊娠中の使用が制限されていますが、必要性が高い場合に限り考慮されることもあります。

・テオフィリン除放製剤
喘息コントロールに用いられることがありますが、用量の調整が必要です。

・経口β2刺激薬
必要に応じて使用されますが、副作用に注意が必要です。

・ステロイド薬の注射
重症の管理に用いられることがありますが、妊娠中は可能な限り避けるべきです。

・アミノフィリン
使用には注意が必要です。

・ボスミン®
緊急時の治療に限定して使用されることがあります。

3.妊娠中も喘息症状をコントロール!3つのポイント


妊娠期間中も適切に喘息の症状を管理するポイントについてご説明いたします。

3-1.治療は継続する

妊娠は女性のからだにさまざまな変化をもたらすため、喘息を持つ妊婦さんの治療は慎重に行う必要があります。

喘息の症状を適切に管理することは、母体の健康と同時に、胎児の安全にも直接影響します。

治療の際には、まず最初に主治医に妊娠していることを伝えることが重要です。主治医は妊娠を考慮した安全性の高い薬を検討することができます。

同時に産婦人科医にも喘息の状態を伝えましょう。

喘息の悪化は、母体にはもちろんのこと胎児にも深刻な影響を及ぼす可能性があるため、治療の継続は不可欠といえます。

喘息の症状を管理することで、胎児の低酸素血症リスクを最小限に抑え、母体の安定を図ることができます。

3-2.妊娠中は風邪やインフルエンザに注意

妊娠中は免疫機能が低下するため、抵抗力が弱まり風邪やインフルエンザといった感染症にかかりやすくなります。

感染症は喘息発作を引き起こすきっかけとなり、気道の炎症を悪化させる可能性があります。

また、感染症による高熱やそのほかの症状は呼吸をさらに困難にし、酸素不足を引き起こすリスクも高まります。

このため、妊娠中の方は感染症からご自身を守ることが特に重要です。

喘息管理の一環として、予防接種を受けること、定期的な手洗い、マスクの着用など、基本的な予防策を心がけましょう。

万が一、感染症にかかってしまった場合には、早急に医師の診察を検討してください。

早期に適切な治療をすることで、喘息の悪化やそのほかの合併症のリスクを最小限に抑えることが可能です。

妊娠中は自己の健康だけでなく、胎児の安全も考慮に入れながら、感染症対策を徹底しましょう。

3-3.「喘息発作の元」を避ける

妊娠中は、喘息発作を引き起こすさまざまな要因からご自身を守ることが大切です。

アレルゲン、気温の変化、運動、感染症、ストレスは喘息発作の引き金となりえます。

特に過労とストレスは喘息発作を誘発することがあります。

妊娠中は疲れやすくなるため、より注意が必要です。適度な休息を取り、十分な睡眠をとるようにしましょう。抵抗力を保ち、喘息の悪化を防ぐことができます。

アレルゲンがある環境や極端な気温変化から身を守ることも、発作の予防に役立ちます。

また、喘息発作の予防策として、定期的に医師の診察を受けることも大切です。

医師が喘息の状態を把握し、生活環境や日々の活動の調整のアドバイスを受けることができます。

【参照文献】独立行政法人 環境再生保全機構 『 女性のぜん息患者さんへ』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/women.html

4.おわりに

妊娠は喘息の症状に影響を及ぼすことがあり、適切な薬の選択や治療の継続、発作の予防が必要です。

医師の指示に従い、安全で効果的な薬を使用し、母体と胎児の健康を守りましょう。

また、妊娠中は感染症にかかりやすく、感染症は喘息発作の引き金となるため、予防接種や衛生管理に注意を払うことも忘れないようにします。

喘息発作のリスクを最小限に抑えるためには、ストレスや過労を避け、適切な休息を取ることが必要です。

主治医、産婦人科医と頻繁にコミュニケーションをとり、定期的な診察を受けることで、喘息のコントロールが可能です。

母体と胎児の健康を守るために、喘息管理に役立つポイントを妊娠期間中の生活に取り入れましょう。

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