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好酸球性肺炎ってどんな病気?

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

肺炎は菌やウイルスの感染が原因だと考えることが多いですが、他の原因でも肺炎になることがあります。

それが「好酸球性肺炎」という病気です。

好酸球はアレルギー反応に関与する白血球の一種です。特定の薬剤や化学物質、タバコ、寄生虫、カビ(真菌)などのアレルゲンの吸入により好酸球性肺炎を発症することがあります。

アレルゲン以外では好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの疾患が原因で発症する可能性もありますが、原因不明の場合もあります。

原因や経過により分けられる急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎について、それぞれの経過や症状、治療について説明していきたいと思います。

【参考文献】❝Eosinophilic Pneumonia❞ by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23955-eosinophilic-pneumonia

1.急性好酸球性肺炎


急性好酸球性肺炎は喫煙を開始した後や禁煙後に喫煙を再開した人がかかりやすいと言われるため、喫煙との関与が指摘されています。

あらゆる年代で発症しますが、20~40歳の若年層でも発症し、女性より男性の患者が多い病気です。

1-1.症状

急性好酸球性肺炎の場合、発症すると進行が早く、短期間(7日未満)で症状が現れるようになります。

おもな症状

・乾いた咳
・呼吸困難
・倦怠感
・寝汗
・胸膜性胸痛(息を吸った時の痛み)
・喘息のような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」とした呼吸(喘鳴)

徴候として呼吸数の増加や発熱(38.5℃以上)、特徴的な呼吸音が確認されることもあります。

治療が遅れることで呼吸困難が進行し急性呼吸不全となり、人工呼吸器が必要な状態になる可能性も高くなります。

進行が早い急性好酸球性肺炎では命に関わるリスクも高くなりやすいため、正確な診断を行い、呼吸状態の経過や全身状態を慎重に確認する必要があります。

1-2.検査

急性肺炎症状がある患者で呼吸不全のリスクが高く、抗菌薬に反応が見られない場合、好酸球性肺炎を疑います。

肺炎の原因を正確に調べるためには以下のような検査が行われます。

・胸部X線検査、CT検査
・血液検査
・気管支内視鏡検査(洗浄や生検のため)

画像検査(胸部X線検査、CT検査)では炎症が起きている部分が白い陰影として現れることで、肺炎の有無を確認することが可能です。

急性好酸球性肺炎の場合は胸水により、心臓の病気(心不全)のような画像が確認されることがあります。

血液検査では血液中の好酸球の増加を確認し、気管支内視鏡による肺の洗浄液などから好酸球が確認されることで、急性好酸球性肺炎の確定診断を行っていきます。

1-3.治療

急性好酸球性肺炎は感染症が原因ではないため、抗菌薬を使用しても効果は見られません。

自然に回復するケースもありますが、多くの場合はプレドニンでの治療が行われます。

急性好酸球性肺炎の予後は良好であることが多く、効果的な治療を行うことで通常2~4週間以内で治ります。

【参考情報】『アレルギー性肺疾患・好酸球性肺炎』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-03.html

2.慢性好酸球性肺炎


慢性というと病気が進行しない場合や極めてゆっくり進行することを意味しますが、慢性好酸球性肺炎の場合は、再発性の急性や徐々に進行する亜急性の状態を指します。

急性好酸球性肺炎とは違い、喫煙との関連は報告されておらず、ほとんどの患者さんが非喫煙であり、30~40歳の女性に多い疾患とされています。

病因としてアレルギー体質が疑われますがメカニズムが明確になっていない部分も多く、原因不明の疾患でもあります。

原因不明の好酸球性肺炎のうち、2~6ヶ月の経過をたどるものが慢性好酸球性肺炎に該当します。

2-1.症状

慢性好酸球性肺炎は数日から数週間かけてゆっくりと進行し、治療をしなければ人工呼吸器を必要とする状態まで悪化する可能性もある疾患です。

おもな症状

・咳嗽
・発熱
・倦怠感
・「ヒューヒュー」「ゼーゼー」とした呼吸(喘鳴)
・寝汗

慢性好酸球性肺炎では多くの症例で喘息を併発している患者が確認されています。

また、症状が再発した患者には体重減少が見られることもあります。

2-2.検査

慢性好酸球性肺炎の診断には以下のような検査を行う必要があります。

・胸部X線検査およびCT検査
・血液検査(肺炎の感染性の原因除外)
・気管支肺胞洗浄

胸部X線検査等の画像検査からは炎症の有無を確認することができます。

慢性好酸球性肺炎は胸部X線検査で典型的な画像所見および特徴的な症状を確認し、より細かく見られるCT検査と併せ診断を行っていきます。

血液検査からは好酸球の数値や慢性の炎症の有無などを確認することができます。

慢性好酸球性肺炎の診断には感染性の原因が無いかを確認する必要があるため、培養検査が行われることもあります。

慢性好酸球性肺炎の診断にはさまざまな検査の結果が必要になりますが、通常は診断の確定のために、気管支肺胞洗浄を行います。

洗浄を行った後の洗浄液からは好酸球の量を知ることができ、好酸球が40%を超えると慢性好酸球肺炎が強く示唆されます。

2-3.治療

慢性好酸球性肺炎は感染による肺炎では無いため抗菌薬などの効果はなく、ステロイド薬が効果的とされています。

ステロイドの使用後、多くの患者は14日以内に症状およびX線異常所見が消失し、1カ月後にはほとんどの患者で改善が確認されています。

ただ、完全に回復する急性好酸球性肺炎とは違い、ステロイドの治療後に症状や画像検査上で再発が確認されることがあります。

初回の罹患後、数か月から数年後に再発が起こることがあり、ステロイドでの治療が長期間(数年間)にわたるケースもあります。そのため、1年程度は注意が必要です。

3.おわりに

好酸球性肺炎は菌やウイルスが原因の肺炎と違い、肺の中に好酸球が認められる特殊な肺炎です。

急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎に分けられ、それぞれ原因や経過、特徴が変わってきます。

通常の肺炎とは違い抗菌薬が効かないため、正確な診断を迅速に行い、早い段階で適切な治療を行うことが重要です。

対応の遅れで重い症状に進行することのないよう、少しでも気になる症状があれば早めに呼吸器内科を受診するようにしましょう。

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