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息が吸えない咳の原因とすぐできる対処法4選

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

激しい咳が続き、「息が吸えない」「息苦しい」と感じると、不安やストレスが強くなり、睡眠を阻害します。眠れないと体力を消耗していく一方で、病気と戦うための免疫力が低下する悪循環に陥る危険性もあるでしょう。

この記事では、息が吸えないほどの咳の原因や対処法や受診の目安について詳しくお伝えします。

1.息も吸えないほど激しい咳が出る病気とは


息も吸えない激しい咳が出るなら、以下の病気が疑われます。

・呼吸器感染症・肺がん:発熱や倦怠感、風邪症状など
・感染症以外の呼吸器疾患:熱はないものの、咳が2週間以上続く
・その他:過換気症候群(不安や緊張などで呼吸が乱れ、様々な症状が現れる病気)や誤嚥、ストレスによるもの

咳の種類や症状の出方によって原因はさまざまです。

次の章以降で、具体的な病気とその特徴について詳しくお伝えします。

【参考文献】❝Four types of coughs and when to seek treatment❞ by Allina Health
https://www.allinahealth.org/healthysetgo/heal/4-types-of-coughs-and-when-to-seek-treatment

2.激しい咳と息苦しさが現れる感染症


まずは、激しい咳と息苦しさが特徴の感染症についてお伝えします。

2-1.新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルスに感染すると乾いた咳とともに、発熱や人によっては味覚障害を発症します。また、咳や息苦しさは後遺症として続く報告もされています。

2-2.気管支炎・肺炎

激しい咳や息苦しさがあれば、細菌やウイルス感染が原因の気管支炎・肺炎の疑いもあります。気管支炎・肺炎になると咳に加えて、喉の痛みや粘り気のある痰がでます。

「夜、咳き込んで眠れない」「息を吸う時に胸がへこむ(陥没呼吸)」などの症状があれば、重症化する前に速やかに受診しましょう。

2-3.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ・ニューモニア感染が原因の長引く咳、乾いた咳と発熱が特徴的なマイコプラズマ肺炎でも乾いた咳がでます。咳症状は発熱や倦怠感など他の症状から3〜5日遅れて発症し、解熱後も3〜4週間は続く特徴があります。

2-4.肺結核

肺結核は「結核菌」という細菌が肺に感染して起こる病気です。
肺結核の症状にも激しい咳があります。咳にも痰や胸の痛みを伴うことがあり、症状の進行が穏やかであることが特徴です。そのため、感染後まったく気づかず過ごしているケースも少なくありません。

2-5.その他

これまで紹介した感染症以外にも激しい咳や息苦しさがあるなら、以下の感染症が疑われます。

・インフルエンザ
・百日咳(痙攣性の咳発作を特徴とする急性気道感染症)
・クループ症候群(犬の吠えるような咳が特徴的な、主に小児にみられる呼吸器感染症)
・クラミドフィラ(クラミジア)肺炎(クラミドフィラと呼ばれる細菌が肺に感染して起こる肺炎)

これら4つの感染症についても、これまで紹介したものと同様に激しい咳や息苦しさを伴います。

3.激しい咳と息苦しさが現れる呼吸器疾患


激しい咳と息苦しさがあるなら、この章で紹介する4つの呼吸器疾患の可能性も考えられます。

3-1.喘息

喘息は気管支の炎症で呼吸がしにくくなる呼吸器の疾患です。アレルギーや生活環境などが原因となり、咳や息切れが発作的に悪化します。

喘息の特徴は、炎症で気道が狭くなり「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音が長期的(長いと8週間前後)に続くことです。

3-2.咳喘息

咳喘息とは喘息の一歩手前の状態のことです。原因は喘息と同じで、長引く咳や人によっては喉に「イガイガ感(痒い感じ)」「しめつけ感」などの違和感が生じる場合もあります。

悪化すると喘息に移行するため、重症になる前に受診することをオススメします。

3-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

長年の喫煙習慣や粉塵を吸い込む職業の人に発症しやすいCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が原因で、激しい咳が出ている可能性もあります。

COPDの咳の特徴は、長期的かつ黄緑色の粘り気が強い痰が絡むことです。

3-4.肺がん

激しい咳と息苦しさが続くなら、肺がんの可能性もあります。

肺がんは肺細胞の遺伝子が傷つくことで発症するがんで、主な原因は喫煙習慣です。肺がんが疑われる咳なら2週間以上続き、改善に乏しいでしょう。

4.突然の激しい咳や息苦しさへの対処法


この章では、自宅でもできる突然の激しい咳や息苦しさへの対処法をお伝えします。

4-1.楽な姿勢で体を休める

座る、横になるなどご自身が最も楽に感じる姿勢で過ごしましょう。オススメは「起座(きざ)呼吸」です。

起座呼吸とは上半身を起こして後ろに寄りかかり、足を伸ばして座る姿勢です。肺の膨らむスペースを確保し、呼吸がしやすくなるメリットがあります。

4-2.鼻から息を吸い、ゆっくりと深呼吸をする

一時的に呼吸を落ち着けるなら、深呼吸が有効な対処法です。激しい咳は呼吸を乱し、気持ちを不安にします。深呼吸を通して、咳症状だけでなく、気持ちも穏やかにすることが大切です。

4-3.温かい飲み物を飲む

温かい飲み物を飲むと上気道の保湿や線毛運動を活発にして、痰の排出を促します。また、息苦しさを和らげる効果も期待できるでしょう。

とくにハチミツ入りのホットドリンクがオススメです。ただし、乳児ボツリヌス症の観点から、1歳未満のお子さんのハチミツの摂取は禁止されています。

4-4.発作治療薬があれば使う

喘息持ちで医師から発作治療薬が処方されているなら、症状を和らげるためにも一度試してみましょう。

喘息発作治療薬なら気管支を広げて、炎症を抑える作用があります。即効性もあるため、症状が落ち着くまでの時間も早く、効果を実感しやすいでしょう。

5.病院を受診する目安


前章で紹介した対処法を試しても咳が改善しなければ、早めに受診が必要です。

この章では咳で病院を受診する目安についてお伝えします。

5-1.すぐに救急で受診してほしい場合

激しい咳が続くとともに、以下のような症状があれば即受診しましょう。

・呼吸が苦しくて動けない、眠れない
・息を吸う時に胸が凹む(陥没呼吸)
・犬の鳴き声のような「ケンケン」、オットセイが吠えるような「オウッオウッ」という呼吸音がある

このような症状があるなら、重症もしくは今後重症になるリスクが高いため、病院で専門的な治療をしてもらいましょう。

5-2.様子を見てもいい場合

十分な睡眠と食事・水分補給ができているなら、自宅で様子を見ても良いでしょう。2週間経っても症状が改善しない、または痰に血が混じるなら、速やかに受診が必要です。

5-3.呼吸器内科を受診してほしい場合

咳や息苦しさが2週間以上続いているなら呼吸器疾患が疑われるため、呼吸器内科のある病院を受診しましょう。

例えば、以下の呼吸器疾患が考えられます。

・喘息
・COPD
・肺炎
・肺がん

これらは呼吸器内科で咳の原因を探り、適切な治療を受けなければ治せません。

【参考情報】『重篤副作用疾患別対応マニュアル』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1b05.pdf

6.おわりに: 咳が悪化するなら早めに受診を

咳や息苦しさを改善したい人は、この記事で紹介した対処法をお試しください。試してみたにも関わらず症状が改善しないなら、速やかに病院を受診しましょう。

また、咳の原因が喘息や咳喘息だと市販薬の服用で症状が悪化する危険性があります。そのため、医師に相談することをオススメします。

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