喘息の子どもが保育園や幼稚園に入園する場合、知っておくべきことは?
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
喘息のお子さまが保育園や幼稚園に入園するとなると、「発作が起きたらどうしよう…」と不安に感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。
初めての集団生活で、お子さま自身も慣れない環境で緊張したり、体調を崩したりすることが心配ですよね。
そんな時こそ、保護者の方や園の先生、主治医がしっかりと連携を取り、お子さまを見守っていくことが大切です。
日常生活で気を配るべきことや、運動や掃除、行事などで注意が必要な場面も少なくありません。
呼吸器感染症の予防対策も含め、事前に準備を整えることで、安心して園生活を送れるようにしましょう。
この記事では、喘息のお子さまが保育園や幼稚園に入園する際の具体的に注意するポイントをご説明いたします。ぜひ参考にしてください。
1.「生活管理指導表」の提出など、主治医・園との連携が大切
保育園や幼稚園に入園する前に、園と主治医との連携をしっかり行うことが、喘息を持つお子さまにとっては非常に重要です。
まず、入園面接時や説明会には、必ずお子さまが喘息であることを正確に伝えましょう。
お子さまの健康状態を正しく理解してもらうために、「生活管理指導表」の提出が必要です。
「生活管理指導表」とは園から受け取った用紙に主治医が記入し、発作時の対処法や必要な配慮を具体的に説明するための書類です。
生活管理指導表には、喘息の症状や状態、発作が起こった際の対処法、日常的にどのような配慮が必要かといった内容が記載されます。園に提出することで、先生たちが適切な対応を取る準備ができます。
また、発作時の対応についても具体的に伝えておくことが大切です。
例えば、発作が起きた場合にどのように処置してもらいたいか、必要な薬の種類や使用方法、そのほか特別な配慮があれば、事前に詳細に話し合いましょう。
園側の対応は個別のケースにより異なるため、保護者の方からも積極的に園の先生とコミュニケーションを取ることが大事です。お互いに協力し合うことで、より安心して園生活を送ることができます。
【参考情報】環境再生保全機構『「学校生活管理指導表」の提出が基本』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/45/feature/feature01.html
2.発作が起きやすい運動と掃除に注意しましょう
喘息のお子さまは、特定の運動や掃除によって発作が引き起こされることがあります。
日常的な園生活の中で、こうしたリスクを減らすための準備をしておくことが大切です。
2-1.運動にあたっての注意点とは?
運動はお子さまの成長にとって重要ですが、喘息を持つお子さんの場合は注意が必要です。
まず、運動前には、主治医と園の先生にお子さんの状態を相談し、必要であれば運動前に気管支拡張薬の吸入を行うなどの対策を取りましょう。
気管支を広げる薬をあらかじめ使用しておくことで、発作を防ぐことができます。
また、発作が起こりやすい運動や激しい運動の場合は、無理に参加させず、見学することも考慮に入れてください。
また、身体を慣らすために、準備運動をしっかり行うことも重要です。とくに冬の寒い時期は、冷たい空気を吸い込むことで気管が収縮し、発作が誘発されることがあります。
運動中や外遊びの際にマスクを着用することで、冷たい空気の影響を減らし、発作の予防につながるでしょう。
子どもが好きな運動を安全に楽しめるよう、常に子どもの状態を見守りながら、無理のない範囲でサポートしてあげましょう。運動はお子さまの成長のためにも重要ですが、何よりもお子さんの安全が第一です。
【参考情報】Mayo Clinic “Exercise-induced asthma”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300
2-2.掃除にあたっての注意点とは?
保育園や幼稚園では、掃除の時間が日常的にあります。喘息のお子さまにとっては掃除の際のホコリやダニなどのアレルゲンが、発作を引き起こす原因になりかねません。
園によっては、雑巾がけや床の掃除をお子さまたちがする場合がありますが、ホコリを吸い込むことで発作が誘発される可能性があるため注意が必要です。
掃除をする際には、マスクの着用をお願いしてみましょう。
マスクをすることで、ホコリやアレルゲンの吸い込みを防ぐことができます。また、できるだけホコリが舞わない掃除を担当させてもらう、もしくは掃除自体を控えさせてもらうといった選択肢も園に相談してみると良いでしょう。
また、園で動物を飼育している場合、動物の毛や糞が喘息の原因になることがあります。
動物の世話や掃除当番をすると、アレルゲンに直接触れる機会が増えるため、動物の世話からは外してもらうほうが安心です。事前に園側に配慮をお願いし、お子さんの喘息が悪化しないように工夫しましょう。
3.行事の参加は、事前に内容を確認し準備しましょう
保育園や幼稚園では、さまざまな行事やイベントが行われますが、喘息を持つお子さまにとって、いつもとは異なる環境が発作を誘発する原因になることがあります。
とくに、遠足や運動会、お泊り会などの大きな行事では、普段よりも体力を使うことや、屋外での活動が多いため、発作のリスクが高まります。
たとえば、動物園への遠足や工場見学、パン作りなど、動物の毛やホコリ、粉塵が舞う環境では、喘息発作が誘発されやすくなります。
このような行事に参加する場合は、必ず事前に行事の内容を確認し、対策をする必要があります。
マスクの着用や、アレルゲンが少ない場所で見学を検討するなど、主治医と園の先生と相談して、適切な対応を取るようにしましょう。
また、花火やキャンプファイヤーなどの煙が発生する行事でも同様です。こうした場面でも、煙を避けて離れた場所で見学する、マスクを着用するなどの対策が効果的です。
行事の前に主治医と園の先生としっかり情報を共有し、万が一の発作時に備えた準備をしましょう。
【参考情報】環境再生保全機構『悪化因子の対策 日常生活の改善|成人ぜん息(ぜんそく、喘息)』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/lifestyle.html
4.インフルエンザなど、呼吸器感染症の予防をしましょう
保育園や幼稚園での集団生活は呼吸器感染症にかかるリスクが高まります。
とくに、風邪やインフルエンザなどの感染は、喘息の症状が悪化する原因になります。そのため、感染症予防対策はしっかり行いましょう。
インフルエンザの予防接種は、喘息のお子さまにとってとくに重要です。インフルエンザにかかることで呼吸器の状態が悪化し、重篤な喘息発作を引き起こすことがあるので、毎年予防接種を受けるようにしましょう。
ただし、インフルエンザワクチンには卵の成分が含まれているため、卵アレルギーを持つお子さまの場合は、主治医に相談し、ワクチン接種が適切かどうか確認してください。
インフルエンザだけでなく、日常的な手洗いやうがいも、感染症予防の基本として習慣づけておくことが大切です。
【参照文献】独立行政法人環境再生保全機構『子どものぜん息 ハンドブック』
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/archives_28016_1.pdf
5.おわりに
喘息のお子さまは、自分で症状を正確に伝えることが難しい場合が多いでしょう。
安心して園生活を送るためには、保護者の方が主治医や園の先生としっかりと連携を取り、対策を整えることが大切です。
日々の小さな心配を解消しながら、周囲の協力を得て、お子さまの健康を守っていきましょう。
お子さまが元気に楽しく園生活を送れるよう、丁寧にサポートしていくことが、何よりも大切です。