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2週間続く咳の原因を探る!あなたの咳はただの風邪?それとも…?

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

咳が出ると「ただの風邪だ」と考える方がほとんどだと思いますが、長く続くときは「風邪」ではないことが多いとされています。
2週間以上咳が続いている時には注意が必要です。

2週間以上咳が続く場合はどのような病気か考えられるのでしょうか?

1.咳が止まらない場合に疑われる病気とは


2週間以上咳が続く場合考えられる病気は、急性気管支炎、肺炎、肺結核などの感染症によるものと 気管支喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)過敏性肺臓炎 間質性肺炎などの非感染性のものが考えられます。

1-1.感染症

<急性気管支炎>
風邪は主にウイルスが鼻や喉といった上気道に感染をおこし数日から2週間程度で治癒に向かいます。
一方ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルスなどの一部のウイルスやマイコプラズマ、クラミジア、百日咳といった細菌は、気管支まで炎症がおよび激しい咳が長引くことがあります。

◆『気管支炎ってなに?』>>

<肺炎>
肺炎はウイルスや細菌が感染し、肺に炎症が起きます。風邪をきっかけに肺炎を起こすこともあるので、注意が必要です。
我が国では、肺炎球菌 インフルエンザ菌 肺炎マイコプラズマによる肺炎が多いとされています。今年はマイコプラズマ肺炎が大流行しました。

◆『肺炎の基本情報』>>

【参考情報】Mayo Clinic “pneumonia”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pneumonia/symptoms-causes/syc-20354204

<肺結核>
結核菌が肺に感染し、炎症が起こる病気です。
長引く咳、痰、倦怠感などが特徴で、放置すると他の臓器に広がることもあります。

1-2.非感染症

<気管支喘息>
気管支喘息の症状の特徴は、呼吸をするときに「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という喘鳴と呼ばれる音が鳴ること、夜間から早朝に症状が出やすいこと、咳が続くことで時に呼吸困難が起こること、タバコの煙やハウスダスト、運動、季節の変わり目など何かをきっかけに症状が出やすいことなどが挙げられます。喘息の診断にもっとも手がかりになる症状は、喘鳴です。

【参考情報】『「もしかしてぜん息?」と思っている方へ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html

気管支喘息の患者の気道は、症状が出ていない時でも常に炎症を起こしています。そして、健康な人に比べて気道が狭くなっていて、空気が通りにくくなっています。炎症が起こっている気道は敏感な状態になっていて、症状が出るきっかけになるものが炎症している気道への刺激となり、発作が出てしまいます。

◆『喘息とはどんな病気か?症状・原因・治療方法を解説!』>>

<咳喘息>

気管支喘息に似ている病名にはなりますが、症状に違いがあります。気管支喘息の診断の大きな手がかりは喘鳴だと紹介しましたが、咳喘息には喘鳴はありません。乾いた咳は続きますが、呼吸困難はないとされています。

咳喘息の原因は、気管支喘息と同様に気道が炎症している状態で、タバコの煙やハウスダスト、運動、季節の変わり目などがきっかけにとなり咳が出ます。

気管支喘息ではありませんが、炎症を抑えないと風邪やアレルギーなど何かをきっかけに再発する恐れがあります。そして、炎症を繰り返していると気管支喘息になる場合もあります。

<慢性閉塞性肺疾患(COPD)>
COPDは肺の生活習慣病とも言われています。最大の原因は喫煙で、タバコの煙を吸い込むことで、気管支が炎症を起こし、咳や痰が出て、気管支が細くなることにより、空気の流れが悪くなります。また、肺胞が破壊され、肺気腫の状態になると、呼吸の機能が低下します。

症状は歩行時や体を動かしたときに息切れを感じること、慢性の咳や痰が特徴的な症状です。

【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html

◆『COPD(慢性閉塞性肺疾患)を知っていますか?』>>

<過敏性肺炎>
カビや鳥類の排泄物に含まれるタンパク質、キノコの胞子などを吸い込むことが原因で、アレルギー反応を起こし、乾いた咳、息切れ、発熱の症状が出ます。

特に原因となる物質はカビで、中でもトリコスポロンというカビが挙げられます。
トリコスポロンは高温多湿を好むため、夏の風呂場や脱衣所などの水回りに注意が必要です。

原因となるものを避けることで改善しますが、長期間触れていると炎症は慢性化し、肺は固くなっていきます。このような状態になると、完全に回復させることは難しいです。

◆『過敏性肺炎の基本情報』>>

【参考情報】『過敏性肺炎』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-02.html

<間質性肺炎>
肺の組織に炎症が起き、硬くなってしまう病気です。
主な症状は息切れ、乾いた咳などが特徴で、徐々に進行していくことが多いです。
進行すると、呼吸困難がひどくなり、日常生活に支障が出ることもあるため、早期発見と治療が大切です。

2.治療


このように咳が出る病気はいくつかありますが、咳の原因となる病気によって、治療方法は異なります。

2-1.感染症が原因の咳

抗生物質や抗ウイルス薬など、原因となる病原体に対する薬物治療が中心となります。

<急性気管支炎>
ウイルスが原因のことが多いため 基本的には安静や水分補給といった対症療法が主とななります。一部のウイルスや細菌感染では適宜抗菌薬が使用されます。

<肺炎>
原因となる菌もさまざまで種類も多いので、検査で原因の菌が特定され、その菌に効く薬が処方されます。

<肺結核>
抗結核薬を使い、治療期間が6か月ほどかかります。菌を喀出し他の人に感染する可能性がある期間は隔離され、治療にあたります。

2-2.感染症以外が原因の咳

気管支拡張剤、ステロイド薬など、炎症を抑えたり、気道を広げたりする薬物療法、呼吸リハビリテーションなどが行われます。

<気管支喘息>
使われる薬は2種類あり、「長期管理薬(コントローラー)」と「発作治療薬(リリーバー)」に分けられます。名前の通り、長期的に服用する長期管理薬を使って、炎症を抑え、気管支を拡張し、発作を予防します。そして、発作治療薬は発作が出てしまったときに、気管を広げる働きをしてすぐに効き目は現れます。

<咳喘息>
気管支喘息と同様に吸入ステロイドやロイコトリエン拮抗薬(抗アレルギー薬) 気管支拡張薬などを使用します。

<慢性閉塞性肺疾患(COPD)>
禁煙、薬物療法、呼吸リハビリテーションなどがあります。重症化した場合には、酸素療法や外科療法になることもあります。そして、合併症が発症している場合は、これらの治療も必要になります。

<過敏性肺炎>
抗原を回避することが重要です。症状が重い症例ではステロイドや酸素療法が必要になります。

<間質性肺炎>
原因や症状の程度によりますが、ステロイドなどの免疫抑制剤や抗線維化薬などが使用されます。

3.ひどくなる前に予防と対策


乾燥しているときには、喉を潤すことが重要になります。部屋は加湿器などを用いて、湿度を保ち、こまめに水分を取りましょう。外出時にはマスクをつけ、冷暖房設備での喉の乾燥を防いだり、アレルゲンなどの刺激への予防もできます。

このように咳への対処法はありますが、2週間以上咳が続く場合や、息苦しさ、呼吸困難がある時は、風邪でないことがあります。咳の原因を知り、適切な治療や薬の服用のためにも、医療機関を受診しましょう。喉、気管支、肺など、呼吸に関する臓器の病気専門に扱う内科が呼吸器内科で、これまでに取り上げた病気は呼吸器内科が専門の医療機関になります。

4.おわりに

2週間以上咳は、様々な病気が原因で起こりえます。長く続く場合、ただの風邪だと自己判断せずに、呼吸器内科を受診することが治療の第一歩です。原因を調べて、呼吸器内科で適切な診断と専門的な治療を受けましょう。

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