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ペットの飼育と喘息

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

喘息のために、ペットを飼うことを諦めてはいませんか。

ペットと過ごす時間は多くの幸せや喜びをもたらします。一方で、喘息を持つ方にとって、ペットの毛やフケが喘息のきっかけとなるので注意が必要です。

この記事では、喘息を持つ方でも安全にペットと暮らす方法をご説明します。

衛生管理や適切なペットの種類、家の中の工夫などで、喘息のリスクを最小限に抑えつつペットとの時間を快適に過ごしましょう。

1.動物アレルギーについて


動物アレルギーは、動物のからだの成分(毛、フケ、フンなど)が原因で起こるアレルギー症状のことです。

原因は、免疫系の異常反応と考えられます。

通常の免疫は、からだを守るために不要な異物に対して反応するのに対し、アレルギーの場合は、体内に入ったアレルゲンに対して免疫が過剰に反応することで起こります。

過剰な免疫反応では、免疫グロブリンE(IgE)抗体の産生の促進がみられます。

IgE抗体が再び同じアレルゲンと接触すると、さまざまなアレルギー症状を引き起こすことになります。

アレルギーの症状には皮膚のかゆみや湿疹、呼吸器系の咳や喘鳴、消化器系の不調などがあり、重篤な場合にはアナフィラキシー反応を引き起こすこともあります。

【参照文献】環境省『家族の同意とアレルギー』
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/1911a/pdf/4.pdf

2.アレルギー検査とは


動物アレルギーの診断には、アレルゲンを特定するためのリンパ球反応検査、IgE検査、アレルギー強度検査などの複数の検査があります。

リンパ球反応検査では、アレルゲンに反応するリンパ球の活動を調べて、アレルギーの有無を把握します。

IgE検査は、アレルゲンに特異的なIgE抗体の量を測定し、具体的なアレルゲンの特定が可能です。

また、アレルギー強度検査では、血中の関連細胞を調べてアレルギーの程度を測定します。

一般的にはリンパ球反応検査とIgE検査を組み合わせることで、アレルゲンの特定とアレルギーの強度を明確にします。

アレルギー強度検査は、アレルゲンがはっきりしない場合でも、アレルギーの存在とその程度を把握するために有効です。

【参考文献】❝Exposure to dogs and cats and risk of asthma❞ by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9994694/

3.アレルギーの人がペットとの生活で注意することは?


アレルギーを持つ方がペットと共に生活する際には特別な配慮が必要です。

アレルゲンの室内への侵入を最小限に抑える方法、ペットの適切なからだのケア、家具やカーペットの選び方など、アレルギーのある方がペットとの生活で注意すべきポイントについて解説いたします。

3ー1.屋外での飼育

アレルギーのある方がペットを飼う場合は、アレルゲンの室内への侵入を最小限に抑えることがポイントです。

可能な限りペットを屋外で飼育し、室内にアレルゲンを持ち込むのを減らしましょう。

室内でしか飼えない場合、定期的な換気と徹底した掃除が不可欠です。ペットの毛やフケなどの飛散を防ぐために、こまめなペットの洗浄や手入れが重要となります。

3-2.ペットの体ケアをこまめにする

ペットの毛やフケが飛び散らないように、ペットを清潔に保ちましょう。

丁寧なケアにより、アレルゲンの拡散を抑えることができます。

ブラッシングや、シャンプーを定期的におこなうことが必要です。ブラッシングやシャンプーにより毛やフケが飛び散ることを最小限に抑えることができます。

また、ペットの寝床の掃除もこまめに行い、毛の蓄積を防ぎましょう。

ただし、アレルギーのある方がペットの手入れをする際には注意が必要です。

ペットの寝床やケージを掃除するときはマスクや手袋を着用し、ペットの毛、羽、フケ、フンなどのアレルゲンが体内に入るのを防ぎます。

アレルゲンが空中に舞い上がることのないよう、特に注意が必要です。

アレルギーの症状が重症化すると、呼吸困難やアナフィラキシーショックなどになる可能性があるため、症状の変化には十分注意しながらおこないましょう。

花粉の季節には、ペットが室外に出るのを避け、外からの花粉の持ち込みを避けることも大切です。

3-3.家具、カーペットは手入れのしやすいものを使う

ペットとの快適な暮らしを実現するためには、家具やカーペットの選び方が重要です。
手入れがしやすい素材や構造のものを選択しましょう。

ペットの毛やフケが溜まりにくいもの、すぐに拭き取ったり掃除機をかけたりできるタイプのものが理想的だといえます。

掃除がしやすいよう、すぐに移動できたり持ち上げたりできるのもポイントです。キャスターを付けるのもいいでしょう。

このような家具やカーペットはアレルゲンを簡単に除去できるため、日常の清掃が簡単にでき、家の中のアレルゲン濃度を低く保つのに役立ちます。

また、フローリングの場合にも配慮が必要です。

例えば、カーペットの全面敷きは避け、必要に応じて洗えるラグを使用するのがいいでしょう。掃除が楽になり、ダニやほこりの蓄積を防ぐことができます。

アレルギー対策された絨毯やラグも販売されています。通気性が良く湿気がこもりにくいため、アレルギー症状のリスクを減らすのに効果的です。

洗えるカーテンを使うことも、空気の質を良好に保つために有効です。
掃除がしやすい家具を選び、ほこりやアレルゲンの蓄積を防ぐことは、喘息の悪化を抑える上で非常に重要です。

これらのポイントを押さえて、アレルギーのリスクを軽減できる家具、カーペットは手入れのしやすいものを使いましょう。

4.おわりに

ペットとの暮らしのなかで、とくに、咳がひどくなったり、息苦しさを感じるようになった場合、早めに呼吸器内科へ受診し主治医に相談しましょう。

適切な診断と治療を受けることが重要です。早期に受診することで、症状の悪化を防ぎ、喘息発作を押さえ健康状態を維持することができます。

ペットと長く健康に暮らすためにも、ご自身の健康には十分注意を払いましょう。

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