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止まらない咳…これって人にうつる?

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

この記事では、止まらない咳が感染症の兆候かどうか、また、それが他の方にうつる可能性があるかについてご解説します。

感染症が原因の場合は咳やくしゃみによってウイルスや細菌が飛散し、感染する可能性があります。

一方、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー疾患など、感染症でない病気も咳の原因となりますが、これらは他の方にはうつりません。

誤った咳エチケットが感染拡大のリスクを高めるため、正しい方法を実践することが重要です。

1.咳で人にうつる可能性があるのは


咳によって他の方に感染する可能性のある病気は、「感染症」と分類されます。

感染症とは、細菌やウイルスなどの病原体が原因で発症する疾患です。咳やくしゃみを通じて飛散した病原体が他の方の体内に侵入することで感染が広がります。

咳でうつる可能性のある代表的な感染症には、以下のようなものがあります。

【風邪】
多くの異なるウイルスが原因となり、喉の痛み、鼻水、くしゃみ、咳などの症状を引き起こします。

【インフルエンザウイルス感染症】
インフルエンザウイルスが引き起こす急性の呼吸器感染症で、発熱、咳、全身の倦怠感などが特徴です。

【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)】
新型コロナウイルスによる感染症で、咳、発熱、息苦しさなどが見られます。

【結核】
結核菌による感染症で、長期間にわたる咳、痰、場合によっては血痰が特徴です。

これらの感染症は、咳やくしゃみによって病原体が飛散し、他の方の呼吸器系に直接入ることで感染が起こります。

また、飛散した病原体が物の表面に付着し、その表面に触れた後に無意識のうちに顔や口、鼻を触ることでも間接的に感染することがあります。

【参考文献】❝Chest infection❞ by nidirect
https://www.nidirect.gov.uk/conditions/chest-infection

2.咳では人にうつらない病気


咳が出る病気の中には、他の方に感染することがない非感染性の疾患も多くあります。

代表的な非感染性の疾患は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。また、花粉症などのアレルギー疾患も咳が出る場合があります。

これらの病気の咳は、アレルギー反応や慢性的な炎症によって引き起こされるもので、感染性の病原体によるものではありません。

【喘息】
気道が敏感になっている状態で、アレルゲンや冷気、運動などの刺激によって気道が狭くなり、息苦しさや咳、ヒューヒューとした呼吸音がでます。

【COPD】
長期間の喫煙や大気汚染などが原因で、気道と肺の損傷が進みます。呼吸困難や慢性的な咳、痰が特徴的です。

【花粉症】
特定の花粉に対するアレルギー反応で、くしゃみや鼻水、鼻詰まりが主な症状です。また、咳が出ることがあります。
これらの病気で咳が出る場合は、咳そのものが感染を引き起こすものではないため、他の方にうつる心配はありません。

しかし、周囲の方々は咳の原因が感染症かどうか外見から判断することはできないでしょう。

そのため、公共の場で咳が出る際には感染症の可能性を考慮して、咳エチケットを守ることが重要です。

マスクの着用や、咳やくしゃみをするときにはティッシュや肘の内側で口と鼻を覆いましょう。

感染が疑われる場合の拡散防止だけでなく、マナーとしても他の方に配慮する意味になります。

3.咳エチケット


咳やくしゃみによる飛沫感染は、感染症の広がりを助長する主な原因の一つです。

そのため、公共の場では咳エチケットを徹底することが大切です。

咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際に適切な方法で口と鼻を覆うことにより、ご自身だけでなく他の方の健康を守るための重要な行動マナーです。

正しい咳エチケットの方法と、避けるべき誤った方法についてご解説します。

【参考情報】『咳エチケット』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html

3-1.正しい咳エチケットの方法

咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際に周囲の方に対して配慮を示し、感染症の拡散を防ぐための行動マナーです。

3つの正しい咳エチケットをご紹介します。

1.マスクを着用する
マスクは、咳やくしゃみによって飛散する飛沫を効果的に阻止することができます。

着用する際は、鼻からあごまでをしっかりと覆い、顔とマスクの間に隙間がないように密着させることが重要です。

それぞれのマスクの取扱説明書に従って正しく装着しましょう。

2.ティッシュやハンカチで口や鼻を覆う
マスクが手元にない場合、咳やくしゃみをするときはティッシュやハンカチで口と鼻を覆い飛沫の飛散を防ぎます。

使用後のティッシュは、すぐにゴミ箱に捨てることが大切です。

3.上着の内側や袖で覆う
ティッシュやハンカチがない場合は、上着の内側や袖で口と鼻を覆いましょう。

手のひらを使わないことがポイントで、手に病原体が付着するのを防ぎましょう。

以上の咳エチケットの効果を高めるために、咳やくしゃみの後には手洗いをすることが大切です。

手に付着した病原体を洗い流し、ドアノブやスイッチなど共有の物に触れた際の感染リスクを減らすことができます。

正しい咳チケットは、ご自身だけでなく他の方への配慮としても非常に重要です。

3-2.誤った咳エチケット

咳やくしゃみをする際の2つの避けるべき行為として悪い例をご紹介します。

1.手で咳やくしゃみを押さえる
手で直接咳やくしゃみを押さえると、その手にウイルスや細菌が付着します。

この手でドアノブや手すり、公共の物に触れると表面に病原体が移り、他の方が触ることで感染リスクが高まります。

2.何もせずに咳やくしゃみをする
何もせずに咳やくしゃみをすると、飛沫が周囲に広範囲に飛び散ることになります。

咳やくしゃみの飛沫は最大で2メートルもの距離に到達するとされ、飛沫には多数の病原体が含まれている可能性があります。

その結果、周囲の方々が飛沫にさらされることで感染するリスクが高くなります。

4.おわりに

感染症によって引き起こされる咳は、他の方への感染リスクを伴います。

咳やくしゃみによって飛散する飛沫には病原体が含まれることがあり、他の方の呼吸器系に侵入することで感染が広がる可能性があるためです。

とくに、公共の場所や密閉された空間では感染リスクが高まるので注意が必要です。

感染症が疑われる場合や、既に診断された場合には、他の方への感染拡散を防ぐための適切な対策をしましょう。

マスクの着用、咳エチケット、頻繁な手洗いなどの徹底が必要です。

また、体調がすぐれない場合には、無理をせず自宅で休息をとったり早めに呼吸器内科などへの診察を検討することも重要と言えるでしょう。

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