季節の変わり目は喘息予防!
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
季節の変わり目、とくに秋は喘息発作が起こりやすい時期です。
気温の急激な変化、ダニの死骸やフン、風邪やインフルエンザ、秋の花粉などが喘息発作のリスクを高めます。
発作のリスクの要因を把握し、喘息発作を予防することが重要です。
この記事では、喘息の患者さんが季節の変わり目に注意すべき内容についてご紹介します。
【参考文献】❝4 strategies for controlling your asthma in the fall❞ by Michigan Medicine
https://www.michiganmedicine.org/health-lab/4-strategies-controlling-your-asthma-fall
1.なぜ秋は喘息発作がおこりやすい?
秋は気温の変動が大きく、アレルゲンが増加し、風邪が流行しやすいため、喘息発作が起こりやすい季節です。
ここでは、なぜ、秋に喘息発作がおこりやすくなるかをご説明致します。
1-1.気温が急に低下する
秋は、夏の暑さから秋の涼しさへ移行する季節の変わり目で、とくに朝晩と日中の気温差が大きくなります。
1日のうちでも気温が大きく変動するといえるでしょう。
そのため、秋はからだへの負担が大きくなります。
気温が急に低下すると、からだが急激な寒暖差に対応しようとして呼吸器系が刺激され、喘息の発作を引き起こしやすくなります。
冷たい空気は気道を収縮させるため、喘息発作が起こりやすい状態になるのです。
1-2.至る所にダニの死骸やフンが!
ダニは喘息の主なアレルゲンの一つであり、その死骸や糞便に含まれるアレルゲン性タンパク質が喘息の患者さんの気道を刺激し、喘息発作を引き起こすことが知られています。
秋には気温の変化や湿度の上昇に伴いダニが大量に繁殖し、その結果、室内に溜まったダニの死骸やフンが喘息発作を起こしやすくなります。
これらのダニの死骸やフンは非常に小さく、空気中に舞い上がりやすいため、気道に吸い込まれると炎症を引き起こすのです。
一匹のダニから多量のアレルゲン性タンパク質が放出され、これらが直接気道に影響を与え、炎症を引き起こします。
ダニは特に湿気の多い環境を好むため、寝具やじゅうたん、カーペットなどの場所に大量に繁殖するので注意しましょう。
実際、1gのほこりには数十匹から数千匹ものダニが含まれているとされています。
1-3.風邪をひきやすい
季節の変わり目である秋は風邪やインフルエンザなど呼吸器感染症にかかりやすい季節です。
気温の変化がストレスとなり、自律神経の乱れが生じやすくなります。
自律神経の乱れは体温調節や免疫機能の低下を招きます。
さらに、急な寒暖の変化にからだが適応しきれず、気管支や肺が冷やされるのも原因です。
また、秋は乾燥しやすく、ウイルスが空中に漂いやすく活性化しやすい環境になります。
呼吸器感染症による気道の炎症増加は、喘息の患者さんの気道過敏性を高め、発作を誘発しやすくするため、風邪は喘息の悪化につながる重要な要因といえます。
1-4.秋の花粉
秋の季節は、ブタクサやヨモギなどの植物から放出される花粉が空気中に広がります。
これらの花粉は、喘息の患者さんにとってアレルゲンとなり得るため、喘息発作のリスクを高めることがあります。
花粉は気道に炎症をおこし、呼吸困難、喘鳴(ぜいぜいという音)、咳などの喘息特有の症状を引き起こします。
秋になると呼吸器系の症状が悪化したり、喘息発作が頻繁に起こったりする場合、花粉症の可能性を疑うことが重要です。
このような症状が見られる場合は、アレルギー専門医による診察と花粉症の検査を受けましょう。
検査により花粉アレルギーと診断されれば、適切な治療と対策で秋の花粉による喘息症状の管理が可能となります。
【参照文献】一般社団法人日本小児アレルギー学会『アレルギー疾患疫学調査文献データベース』
https://www.jspaci.jp/epidemiology/
2.気温が急に変化するのはどんなとき?
喘息発作の原因となる気温の急な変化は、自然現象や気象条件によって引き起こされます。
典型的な気温変動の要因の寒冷前線の通過、夜間の放射冷却、フェーン現象についてご説明いたします。
2-1.寒冷前線が通過した後
寒冷前線が通過すると、気温が急激に下がります。
主な理由は、暖かい空気と寒冷な空気の接触です。
寒冷前線は、暖かい空気が寒い空気を押しのける境界線であり、暖かい空気が上昇して冷やされることで気温が急降下します。
2ー2.空に雲のない夜の翌朝
雲のない夜は地表から放射された熱が大気中に逃げやすく、その結果、地表の気温が下がります。
この現象を放射冷却と呼びます。
朝になると太陽光によって地表が再び暖められますが、夜間の放射冷却によって地表は十分に冷えており、それが気温の急な下降をもたらします。
2-3.フェーン現象
フェーン現象は、山脈を越える風が急激に加熱・乾燥することで生じる現象です。
風が山を越える際、山の風上側では湿った空気が上昇して冷やされ、その結果山頂部で雨や雪が降ります。
一方、山を越えた風は急激に加熱され、乾燥した空気となります。
この乾燥した風が山を降りてくる際、気温が急上昇し、湿度も低下するため、フェーン現象発生地域では急激な気温上昇や乾燥した風が吹くことが特徴です。
3.対策が必要な梅雨のジメジメと冬の乾燥
湿度が高くジメジメとしている梅雨と寒くて乾燥している冬は、室内の湿度を快適に保つために対策をする必要があります。
湿度が40%未満になると、気道の粘膜が荒れ、喘息の発作が起こりやすくなるため、特に注意が必要です。
梅雨の時期は湿度が高すぎる傾向のため、カビが発生したりダニが繁殖しやすくなります。
除湿機の使用や定期的な換気を行い、室内湿度を適切にコントロールすることが大切です。
一方、冬の乾燥した時期は、加湿器を使用して室内の湿度を適切に保ちましょう。
湿度を40%〜60%の範囲に保つことで、気道の粘膜を守り、喘息の発作のリスクを減らせます。
季節に応じて湿度管理に注意を払うことで、気道の状態を保ち、喘息発作の予防が可能です。
4.おわりに
喘息の患者さんにとって、季節の変わり目はとくに注意が必要です。
秋は気温の変動が大きく、ダニの活動が活発になり、風邪やインフルエンザが流行しやすく、花粉の問題も加わります。
これらはすべて、喘息発作のリスクを高める要因となります。
寒冷前線の通過、夜間の放射冷却、フェーン現象など、気温の急な変化も喘息のきっかけです。
喘息の発作を予防するためには、室温や湿度の調整が重要です。
梅雨と冬の季節にはとくに注意し、適切な室内環境を保つことで気道の粘膜を保護し、喘息発作のリスクを減らせます。
季節の変わり目には環境の変化に注意を払い、喘息発作のリスクを減らしましょう。