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COPD(慢性閉塞性肺疾患)を知っていますか?

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

COPDとは「Chronic Obstructive Pulmonary Disease 」の頭文字をとったもので、慢性閉塞性肺疾患のことを指します。

慢性気管支炎や肺気腫(肺の組織が壊れた状態)と呼ばれていた病気の総称です。

喫煙習慣を背景とした生活習慣病のひとつです。

今回の記事では、COPDの原因や症状、検査、治療について詳しく解説します。

COPDについて正しく理解し、進行を防ぎましょう。

1.COPDについて


COPDとは、「Chronic Obstructive Pulmonary Disease 」の頭文字をとったものです。

慢性気管支炎や肺気腫など、気流の遮断や呼吸関連の問題を引き起こす一連の疾患の総称で、進行すると生命を脅かす肺の病気です。

有害物質を長期間にわたって吸入すると、肺に刺激を与えます。

細い気管支に炎症を起こし、咳や痰などの症状があらわれます。

その結果、気管支の中が狭くなるため、空気の流れが悪くなり、呼吸困難や息苦しさを感じるようになります。

COPDは、完治が難しい病気ですが、適切な治療を行えば進行を遅らせることが可能です。

【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)の現状について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/dl/s0611-8a.pdf

【参考文献】❝COPD❞ by mayo clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/copd/symptoms-causes/syc-20353679

2.原因


COPDの原因は喫煙です。

これは、受動喫煙も含まれます。

COPD患者の90%が喫煙によるものであり、一番の原因といえるでしょう。

その他には、有害物質の吸入や大気汚染が原因になります。

3.症状


COPDであらわれる症状は以下のとおりです。

・1日に何度も咳が出る
・運動時や動作時に息切れがしやすい
・透明~白色、黄色、緑色などの痰出る
・喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)がきかれる
・呼吸器の感染症にかかりやすくなる
・チアノーゼが出る

COPDの患者は、呼吸器感染症や大気汚染、天候の影響などが原因で、急激に症状が悪化する「急性増悪」の状態となります。

たとえば、健常者は感冒症状程度で済むライノウイルス(鼻風邪のウイルス)やRSウイルス(呼吸器の感染症)でも、COPDの患者は急性増悪の原因になります。

重症例では、急性呼吸不全から意識障害を起こすケースもあり危険です。

増悪を繰り返すほど、肺の機能は低下していきますので、普段から呼吸器の感染症には十分注意しましょう。

【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状』長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/manseiheisokuseihaishikkan/shoujou.html

4.検査


COPDの診断には、問診や視診、触診をおこなった上で、さまざまな検査も必要です。

問診では、喫煙歴や生活習慣、咳や痰などの量、症状があらわれている期間などについて患者から聞き取りを行います。

会話をしながらも、息切れの有無や会話の途切れなども観察します。

COPD患者では、バチ状指(指先が太鼓のバチのように丸く膨らんでいる状態)やビール樽状胸郭(胸郭が広がり、ビール樽のように見える状態)、口すぼめ呼吸が特徴です。

これらの症状があらわれているか、視診で手の爪や胸郭の形、呼吸の仕方を確認します。

触診では、皮膚の張りやリンパ節の状態を確認し、聴診では胸部と背部の呼吸音を聞きます。

COPDでおこなわれる検査は、肺機能検査やレントゲン、血液検査、CTなどさまざまです。

どのような検査がおこなわれるか、詳しく解説します。

4-1.肺機能検査(スパイロメトリー)

スパイロメトリーと呼ばれる検査は、肺にどれだけ多くの空気を吸い込むことができ、どれだけ大量にすばやく吐き出せるかを調べるための検査です。

筒状のマウスピースをくわえ、息を吸ったり吐いたりして検査します。

1秒率が70%未満であればCOPD の可能性が高いです。

4-2.胸部X線検査

胸部のレントゲン検査で所見がみられるのは、病気が進行してからです。

胸部レントゲン検査では、早期発見は難しいでしょう。

COPDの患者の胸部レントゲン検査では、肺が黒っぽく写ったり、引き伸ばされて写ったり、心臓が細長く写ったり、特徴があります。

また、肺が膨張しやすいため、横隔膜が通常よりも下がって平らになります。

4-3.血液検査

血液検査は、COPDの状態を知るためだけでなく、全身状態を把握するために必要です。

4-4.動脈血ガス検査

動脈血ガス分析とも呼ばれ、呼吸不全が起こると、血液中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素(CO2)濃度が上昇します。

呼吸不全の程度は、動脈血液中のCO2量によってI型呼吸不全(正常内か低値)とII型呼吸不全(高値)に分けられます。

動脈血ガス検査は、動脈からの採血が必要です。

血液中の酸素濃度だけを調べる場合には、パルスオキシメーターと呼ばれる機械を指に付けるだけで測定できます。

4-5.CTスキャン

COPDの患者のCTは、肺胞が破壊された部分(肺気腫)は、黒っぽく写ります。

画像検査は、COPDの診断だけでなく、間質性肺炎や肺がんなど、他の疾患との鑑別に有用です。

5.治療


COPDの完治は難しいですが、適切な治療をおこなうことで進行を遅らせることが可能です。

COPDの主な治療は、5つあります。

5-1.禁煙治療

COPDは、「たばこ病」とも呼ばれるほど、喫煙が影響しています。

喫煙を続けることは、呼吸機能の低下を加速させます。

禁煙が治療の基本となりますので、まずは禁煙をおこないましょう。

5-2.薬物療法

COPDの薬物療法で使われる主な薬は以下のようなものです。

・気管支拡張薬
・去痰薬
・鎮咳薬
・吸入ステロイド薬

症状の程度や薬の作用時間などを考慮し、さまざまな種類を組み合わせて治療をおこなっていきます。

5-3.吸入療法

吸入療法とは、薬剤をエアゾール粒子やドライパウダー状にして吸い込むことで、気道に直接薬を到達させる方法です。

直に気管支に薬が届くため、すばやい効果が期待できます。

吸入の方法は2種類あります。

簡易吸入キットを用いた吸入方法と、ネブライザーと呼ばれる機械を用いた吸入方法です。

自宅でおこなう吸入の場合は、簡易吸入キットを用いる場合が多いでしょう。

5-4.酸素療法

低酸素血症が進行した場合、在宅酸素療法の導入が必要となります。

在宅酸素療法をおこなうことで、息苦しさが改善され、生活がしやすくなるでしょう。
また、全身に酸素が行き渡るため、心臓や他の臓器の負担も軽減されます。

5-5. 呼吸器リハビリテーション

運動のサポート、呼吸法の指導、栄養相談などを通じて、患者さんの生活の質を改善します。

5-6.手術

COPDの治療は基本的に内科的な治療がおこなわれますが、改善が見られない場合、外科的な治療をおこなう場合があります。

一部だけ膨張した肺を切除する外科手術(肺容量減少術)がおこなわれます。

開胸せず胸腔鏡を用いた方法もあり、その場合は侵襲が少なくて済むでしょう。

ただし、COPDの根本的な解決にはならないため、内科的な治療の継続も必要です。

6.おわりに

COPDは、気管支の中が狭くなり、痰や咳、息切れなどの症状があらわれる病気です。

完治は難しいですが、適切に治療をすれば進行を遅らせることができます。

喫煙習慣が背景となっている場合が多く、治療の基本は禁煙をすることです。

長期の喫煙歴があり、咳や痰が長く続く場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

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