診療時間
ご予約・ご相談はこちらから

喘息の人が旅行で注意するべきポイント

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

旅行は非日常を味わえる、とても楽しいイベントです。

しかし、喘息の人は普段と違う環境に対し不安を感じるでしょう。

「喘息を気にせず旅行を楽しみたい!」

そのためには、事前の準備が大切です。

今回の記事では、喘息の人が旅行をする際の注意点や確認しておく点などを紹介します。

喘息があって旅行に不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

万全の準備をして、旅行を楽しみましょう。

【参考文献】❝Traveling with Asthma and Allergies❞ by Asthma and Allergy Foundation of America
https://aafa.org/asthma/living-with-asthma/traveling-with-asthma-allergies/

1.処方された薬を持参する


医師から処方された薬は必ず持って行きましょう。

普段、服用している薬だけでなく、発作止めの頓服薬や吸入薬も持って行きます。

交通事情の影響でやむなく延泊になったり、薬をこぼしたり、失くしたりする可能性があります。

滞在日数分より多めの薬を持って行くと安心です。

また、旅行先の宿泊施設や観光場所周辺の医療機関も調べておきましょう。

救急対応をしてくれる病院を見つけておくと、いざというときに慌てず対応ができます。

保険証やお薬手帳はもちろんですが、喘息の行動計画(アクションプラン)や喘息日記、ピークフローメーターも持って行きましょう。

また、旅行に行く前に、念のため主治医に報告し、不安を感じている部分は相談しておくとよいでしょう。

2.吸入薬は必ず機内持ち込みを


飛行機内は、乾燥や空調、気圧などの関係で、咳の症状が出やすい環境です。

発作が出たときにすぐに対応できるよう、必ず吸入薬も機内に持ち込みましょう。

お薬手帳や薬品のラベル、医師の診断書など、医薬品の情報がわかるものを携帯しておくとスムーズに搭乗できます。

吸入器や吸入薬は、医療機器の扱いになるため、機内へ手荷物での持ち込みが可能です。

国内線の場合は、吸入器の持ち込みだけでなく、使用もできます。

ただし、電源が使用できない可能性がありますので、噴霧式吸入器やバッテリー駆動の吸入器を持って行きましょう。

また、事前に診断書の提出を求められる場合もある為、持ち込みルールは航空会社に問い合わせたりホームページを見たりして事前に確認しましょう。

国際線の場合は、行先の国によって持ち込めない薬剤や申告が必要な薬剤があります。

また、薬の説明を求められる場合があるため、病名と薬剤名を英語で記載したものを準備しておくと説明がスムーズです。

「薬剤証明書」と呼ばれる書類があるので、主治医へ相談をし、旅行までに準備しておきましょう。

【参考情報】『ぜん息と旅行』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/travel.html

3.宿泊先の予約と、確認しておきたい点


以下のポイントに注意し、宿泊先を予約しましょう。

・禁煙室の予約をする
・アレルギー対応寝具に変更してもらえるか確認する

また、学校の宿泊行事の場合、花火やキャンプファイヤーでの煙、温泉の匂いが刺激となり発作が出る場合があります。

そのため、事前に主治医と担任の先生、保健の先生と相談し、必要があれば対策をしましょう。

海外への旅行の場合は、喘息の発作も旅行保険でカバーされているか確認しておきます。

旅行先の季節や感染症の状況を調べ、出発前に予防接種しておくのもいいでしょう。

観光地に行く場合、人込みを避けるのは難しいかもしれません。

そのため、旅行中も手洗いやうがいをおこない、必要時はマスクを着用するなど、感染予防に努めることが大切です。

海外で発作を起こした場合、文化も違い言葉も通じず、不安は大きいですよね。

しかし、大きな発作が出た場合には、迷わず周囲に助けを求めましょう。

ステイ先の人にも、喘息があることを説明し、発作が起きたときには救急要請をしてほしいと伝えておくと、慌てず対応してもらえます。

旅行先でおこなうスポーツやアクティビティによっては、医師の診断書が必要になる場合があります。

ダイビングやシュノーケル、パラグライダー、バンジージャンプなどのアクティビティは、診断書が必要な場合が多く、診断書があっても参加を断られるケースもあります。

スポーツやアクティビティに参加したい場合は、事前に旅行会社やレジャー施設に確認しておきましょう。

4.喘息について同行者へ知らせる


旅行に行く同行者が、喘息について知らないと、急に発作が出た場合に驚いてしまいます。

同行者にも、喘息について説明しておきましょう。

・どのようなときに発作が出やすいか
・発作が出たときにはどう対応してほしいか
・薬はどこに入っているか
・救急要請してほしいときの状況はどのような状態のときか

このようなポイントを伝えておくと、同行者が慌てることなく対応してもらえます。

5.余裕のある旅程を組む


旅行の行先によって、気候の違いや時差があります。

これらは、喘息発作を起こす要因です。

旅行先に到着したら、その土地の気候に合わせた服装に着替えましょう。

また、花粉やほこりを防ぐためにマスクを着用することも、喘息予防には有効です。

そして、現地到着日は外出をせず、体が時差や環境になじむようゆっくり過ごします。

休んで移動の疲れを癒し、次の日からに観光やレジャーができるよう予定を組むとよいでしょう。

旅行の予定は、詰め込み過ぎず、疲れたと感じたら適宜休憩がとれるよう余裕を持ったスケジュールにします。

限られた時間での旅行では、満喫したい気持ちもあるでしょう。

しかし、疲労の蓄積は喘息発作を引き起こす可能性が高くなります。

疲労が蓄積しないように、無理のない行程を組んでおくと安心です。

調子が悪いと感じたら、予定よりも早めに旅行を切り上げたり、予定をキャンセルして休息したりするよう調整が必要です。

6.おわりに

喘息のある人が旅行をする場合、旅行に向けてコンディションを良くしておくことは大切です。

また、旅行へ行く際には、普段の内服薬はもちろんですが、発作止めの薬や吸入薬も忘れずに持って行きましょう。

飛行機での移動の場合、手荷物に薬や吸入器を持ち込みます。

そのためには、事前に航空会社への手続きや医師からの診断書が必要ですので、早めに準備しておきましょう。

無理なくゆったりとしたスケジュールを組むことで、疲労が蓄積しにくく、休憩する時間も確保できます。

喘息のある人でも、注意するポイントを押さえておけば、旅行を楽しめますよ。

喘息がある人で、旅行を計画している方や旅行に行きたいけど不安に感じている方は、一度主治医に相談してみましょう。

記事のカテゴリー

診療時間
アクセス