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アレルギーと喘息について

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

「喘息」という病名を聞いたことがあるかと思います。

「咳が多く出る」というイメージがあると思いますが、発作を引き起こす原因がいくつかあるということは知っていましたか?

その原因の中の多くはアレルギーとされており、特定することで対策も見つかります。
では、どんなアレルギーが喘息を引き起こすきっかけになるのか、説明します。

【参考文献】❝Allergies and asthma❞ by mayo clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/in-depth/allergies-and-asthma/art-20047458#:~:text=Allergies%20and%20asthma%20often%20occur,allergies%20can%20cause%20asthma%20symptoms.

1.喘息の原因とは


喘息とは気管支などの空気の通り道を指す気道が、刺激によって炎症することで敏感になってしまい、発作的に狭くなることを繰り返す病気です。

喘息の症状として、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音を伴って咳き込むこと、息苦しさが挙げられます。

炎症の原因は、ハウスダスト(ダニ、ほこり)、特定の食物、花粉、カビ、ペットの毛や羽、フケ、フン、煙、気候、喫煙、受動喫煙、運動、過労、ストレスなどさまざまあります。

喘息は子供から高齢者まで幅広い年齢層でみられる病気です。

小児喘息の原因のほとんどのきっかけはアレルギーが多く、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある子供、家族に喘息の人がいると、子供も喘息になりやすいと言われています。
乳児だと「苦しい」と訴えかけることができないため、大人が注意深く観察する必要があります。

【参考情報】『子どものぜん息ハンドブック』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/archives_28016_1.pdf

2.喘息はアレルギー疾患のひとつ


喘息の患者さんはアレルギー体質の人が多く、人それぞれアレルゲンが異なります。

環境によって左右されるものもあれば、食物がアレルゲンという場合もあり、発作を起こさないためにもアレルゲンを身の回りから除去する必要があります。

3.喘息を引き起こすアレルゲンはどんなものがあるの?


先ほど炎症の原因をいくつか挙げましたが、この中で喘息を引き起こすアレルゲンは、ハウスダスト(ダニ、ほこり)、特定の食物、花粉、カビ、ペットの毛や羽、フケ、フンです。

3-1 ハウスダスト(ダニ、ほこり)

主要なハウスダストはダニやほこりで、ダニはハウスダストと分類されるものの中では約1~0.2mmで比較的大きいものになります。

生きているダニが症状を引き起こす原因ではなく、ダニのフンや死骸が原因となっています。

ダニは1年中存在していますが、高温・高湿を好みこのような気候の時期には繁殖をします。

気温が25度、湿度が75%ぐらいが繁殖に最適な条件ですので、夏に活発に活動しますが、フンや死骸が舞うのは秋になってくるため、ダニがアレルゲンの患者さんは秋にひどくなると言われています。

寝具の中や布団の中は、高温・高湿の条件に合致するため、注意が必要です。

ダニ対策の基本は換気、除湿によって部屋の湿度を上げないことで繁殖や育成を防ぎ、掃除機などでダニの死骸を取り去ることが大切になってきます。

過度に湿度を下げてしまうことは乾燥に繋がり、風邪や鼻炎の原因になる事もあります。
湿度は50%以下を目指しますが、40%以下にならないように湿度管理も忘れずにおこなってください。

3-2 特定の食物

食物アレルギーの大半は蕁麻疹、かゆみ、あかみなどの皮膚症状が現れます。

次が呼吸器症状で「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音を伴う咳、呼吸困難、くしゃみなどがあります。
場合によっては、血圧の低下や意識障害などのアナフィラキシーをおこしてしまうことがあるので注意が必要です。

原因となる食物は年齢や国、そして個人よって異なりますが、鶏卵、牛乳、小麦が全体の70%を占めており、特に鶏卵は40%近くを占めます。

疑わしい食物を発見したら専門医に相談し、問診、検査をおこなうことでアレルゲンの特定が必要です。

問診では何歳ごろ、何を、どの程度食べたか、何分後に症状が出たか、どんな症状だったかなどの細かい情報まで患者さんからお伺いし、原因となる食物、重症度をある程度予測します。

そして食物アレルギーの原因となる食物の特定のための検査は、
①血液検査②皮膚プリックテスト③食物経口負荷試験 の3つでおこないます。

【参考情報】『食物アレルギー』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/food_allergy.html

①血液検査
いくつか種類はありますが、「特異的IgE」を測定する検査が一般的な検査方法です。
IgEとは感作(アレルゲンが体の中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらき、「IgE抗体」という物質が作られる状態)の程度を表しており、IgEが高いほど強く感作されています。

しかし、検査が陽性となった食物でも、食べた時の症状を認めなければ食物アレルギーとは診断されません。除去する必要もなくなります。

また、特異的IgE抗体の値からは、食べられる可能性がある食物の量や、誘発される症状の強さを正しく推定することはむずかしいとされています。

②皮膚プリックテスト
皮膚の上に直接アレルゲン液を置き、プリックテスト専用の針で、アレルゲン液を置いた部分の皮膚を軽く刺します。
アレルギーの可能性があると、針で刺された部位にぼわっとしたふくらみができます。

③食物経口負荷試験
血液検査と皮膚プリックテストは、確定の診断はできず、ある程度の診断になります。

食物経口負荷試験は、問診や上記の検査で疑われた食物を病院で実際に摂取してみる検査です。
症状が出る可能性がありますが、医療スタッフがすぐに対応できる状態で摂取するので、症状が出ても安心です。
こちらの検査だと、実際に食べて症状の有無を判断するので、最も確実な判断方法です。

3-3 花粉

室内での主なアレルゲンはハウスダストですが、屋外でもアレルゲンはもちろん存在し、花粉が特に気になる存在です。

地域やその年の気候によって多少前後はありますが、2~4月にスギ、3~5月にヒノキ、8~9月にブタクサが代表的な花粉です。

鼻と気管支は空気の通り道が繋がっており、花粉が鼻の粘膜を刺激し、炎症が起こることで鼻炎が起きます。
その刺激や炎症は気道へと伝わることで、喘息の症状が悪化します。

花粉への対策は薬を服用することもありますが、吸い込まないこと、室内に持ち込まないことも対策になります。

屋外ではマスク、防護メガネを使うことで花粉を防ぎます。
室内に持ち込まないようにするには、髪や衣服に付着させないことが大事で、衣服はつるつるした素材のものが効果的です。
室内に入る時は、花粉をはたき落とすことも大切です。

3-4 カビ

喘息を悪化させやすいカビの代表例として、アスペルギルス、クラドスポリウム、アルテルナリアが挙げられます。

アスペルギルスは温かく乾燥した場所に発生し、畳や寝具に多く生えます。空気中に飛びやすいです。

クラドスポリウムは温かくジメジメしたところに生えます。
湿気の多いお風呂場や水回りに多く発生します。

アルテルナリアは湿気の高いところに多く生え、浴室や水回り、押入れの奥や台所の床下収納に多く発生します。

対策としては十分な換気、部屋の湿度を50%前後に保つことです。

湿度が上がる部屋には除湿器を使うことや、押し入れや靴箱などのジメジメする場所には、乾燥剤や除湿剤を入れることことで、湿度を下げることができます。

水回りやお風呂場は濡れたままにせず、こまめに掃除と換気をおこなうことで、カビの発生を防ぎます。

3-5 ペットの毛や羽、フケ、フン

ペットの毛や羽、フケ、フンがアレルゲンとなり、喘息の症状が出たり悪化することがあります。

喘息の患者さんは室内で飼うイヌ、ネコ、ハムスターなどの毛やフケ、マウス、ハムスターなどの尿が原因になることがあります。
これらの動物だけでなく、ウマ、ヒツジ、ウサギなどの飼育している場合も、症状を起こすことがあります。

【参考情報】「動物アレルギー」時事メディカル
https://medical.jiji.com/medical/021-0007-01

しかし、今飼育されている場合は簡単に手放すことはできません。
できれば屋外で飼育すること、室内で飼育する場合が寝室にペットを入れないことや飼育する部屋を決めておく必要があります。
アレルゲンが溜まりやすいカーペットは使用しないことをおすすめします。

ペットは癒しの効果もあります。
ペットを飼うことで気持ちが安定することや、散歩が必要なペットと一緒に散歩に行くことで体力がつくというメリットもあります。

血液検査で飼っている動物のIgE抗体を測定することもできます。

喘息だからペットは飼えないと決めつけすぎず、飼い方をしっかり考えて決めることはできます。

4.喘息治療について


喘息には発作の程度、頻度によって4種類に区分され、軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型に分けられます。

【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 成人ぜん息の治療、治療の全体図』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/index.html

①軽症間欠型
喘息の頻度は週に1回未満で、症状は軽度で短く、夜間の症状が月に2回未満の方は軽症間欠型と言われます。
日常生活に支障はなく、喘息の症状も軽度のため、横になって休むことで落ち着きます。

②軽症持続型
喘息の頻度は週に1回以上であるが、毎日ではなく、月に1回以上日常生活や睡眠が妨げられる場合があります。
夜間症状は月に2回以上あります。
毎日ではないが時々症状が出ることで、「いつものことだから」と見過ごしてしまう場合もあります。

③中等症持続型
喘息の頻度は毎日で、週に1回以上日常生活や睡眠が妨げられ、夜間症状は週に1回以上あります。
吸入薬がほぼ毎日必要な状況にまでなります。

④重症持続型
喘息の頻度は中等症持続型と同様に毎日で、日常生活に制限が必要になるぐらいにまで強い症状が出ます。
夜間症状も度々あります。

頻度や症状の強さに関しては4つの区分によってさまざまですが、患者さん一人ひとりの重症度、症状によって、使う薬や量、組み合わせを決めます。

4-1 喘息治療の目的

喘息治療における大きな目的は、症状や発作が起こらない状態を保つことです。

症状や発作が起こらない状態とは、コントロール良好な状態のことを指します。
薬を適切に使うとともに、自己管理をしっかりとおこなえば喘息は自分でコントールができる病気です。

【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 治療』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html#step

4-2 吸入ステロイド薬について

ステロイド薬は、炎症を抑える強い作用を持ち、飲み薬や注射などで長期間使用すると、薬が全身に作用し、さまざまな副作用が起きることがあります。
医師の指示に従えば問題ありませんが、自己判断で内服を中止したりはしないようにしましょう。

現在の喘息治療の中心になっている吸入ステロイド薬は、ステロイド薬の副作用のリスクを減らす工夫を施された薬です。

気道だけに作用する薬なので、通常の投与量では全身の副作用はほとんどありません。
小児から高齢者、妊娠中でも使用でき、長期間でも安心して使うことができます。

吸入ステロイドはステロイド薬の副作用のリスクは減りましたが、副作用がまったく出ないということではありません。
声がかれたり、口に残ると粘膜の免疫を抑制してしまい、カンジダというカビの一種は増えたりすることがあります。

口の中のカンジダによる感染症を防ぐため、吸入後には必ずうがいをしましょう。
それでも声がかれてしまう患者さんは、使用を自己判断で止めたり、治療を諦めたりせず、医師に相談をし、薬の種類を変えるなどをしてもらい対処してください。

4-3 抗アレルギー薬について

ロイコトリエン受容体拮抗薬という、喘息の長期管理薬として用いられ喘息の発作が出ないように予防する薬です。

症状が治まっても、気道の炎症が続いているため、医師の指示通りに続ける必要があります。
吸入ステロイド薬よりも効果は弱いものの、炎症をしずめます。

ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬もあり、アレルギー性の炎症を起こす物質や気管支収縮を抑える物質ができるのを抑える薬です。

5.おわりに

喘息はアレルギーと関係していることがわかったと思います。
対策することで、アレルゲンからある程度自分自身を守ることもできます。

喘息は発症するアレルゲンを知り、薬を定期的に服用することでコントロールできます。
すぐに短期間で治ることは難しいですが、自分自身を理解することで症状を抑えることはできます。

ただの咳だと思わず、お近くの呼吸器内科に症状を相談し、喘息ならアレルゲンを見つけコントロールできるようにしていきましょう。

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