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新型コロナは咳が出る?対処法や後遺症、受診の目安も解説

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

咳や熱が続くと「もしかして、コロナにかかったかな」と心配になりますよね。

日本では、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行しました。しかし、まだ患者数は増加傾向にあり、注意が必要な状況です。

今回の記事では、新型コロナの症状と咳の対処法について解説し、検査や治療、受診の目安についても分かりやすく紹介します。

ぜひ、最後までご覧ください。

【参考文献】❝Approach to post COVID-19 persistent cough❞ by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10174656/

1.新型コロナウイルス感染症とはどんな病気か


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染することが原因で発症します。

感染者の咳やくしゃみ、会話などによりウイルスを含む飛沫が飛ぶことで、それを他の人が吸い込み感染します。

このウイルスに感染した場合、主に呼吸器症状を引き起こし、咳や痰の症状が現れることが特徴です。

代表的な症状は以下の通りです。

・37.5度以上の発熱
・鼻水
・咳
・息苦しさ
・喉の痛み
・痰
・味覚や嗅覚の異常
・体のだるさ
・下痢

発熱や咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛は、初期症状として多く見られます。

喉のイガイガやムズムズなどの痛みから始まり、咳と熱が出るパターンが多く、始まりは風邪と見分けにくいのも特徴です。

【参考情報】『新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

2.新型コロナの咳の症状


新型コロナの咳症状はいくつかのパターンに分かれます。パターン別に解説します。

2-1.咳が出ないこともある

主に呼吸器症状を引き起こすことが多い新型コロナですが、無症状の場合には、咳が出ません。

また、発熱や喉の痛みなどの症状があっても咳が出ないことがあります。

2-2.痰が出ることも、出ないこともある

咳には2種類あり、新型コロナではどちらのタイプの咳も出る可能性があります。

・乾性咳嗽(痰の絡まない乾いた咳)
・湿性咳嗽(痰の絡んだ湿った咳)

痰の絡まない乾性咳嗽の場合は、咳が出ても痰はほとんど出ません。

2-3.後遺症として咳が残ることがある

風邪やインフルエンザと同様、新型コロナも治れば咳が治まることがほとんどです。

しかし、まれに後遺症として「咳が止まらない」「咳が長引く」場合があります。

後遺症は罹患後症状とも呼ばれています。長いと3カ月以上も咳が続き、つらい状態と言えるでしょう。

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html

3.新型コロナの検査と治療


新型コロナに感染した場合の検査と治療について解説します。

3-1.検査

検査をする場合、2つの方法があります。

・抗原検査キットを用いて自宅で検査
・病院で検査

自宅で検査をする場合は、医療用・一般用医薬品として認められた抗原検査キットを購入して使いましょう。

抗原検査キットは、ドラッグストアや薬局で売られています。

パッケージに「体外診断用医薬品」または「第1類医薬品」と書かれているものが一般用です。

まれに「研究用」と書かれたものが売られているようですが、国の承認を受けていないため性能は保障されていません。

病院でPCR検査をする場合は、その病院が検査できる病院なのか、受診してすぐに検査してもらえるのか、事前に問い合わせをするようにしましょう。

PCR検査の検体採取方法は、唾液を検査容器の中に唾液を指定量入れる方法と、鼻腔と鼻咽頭の粘膜を綿棒でぬぐう方法の2つです。

PCR検査は、採取した検体から新型コロナウイルスに特徴的な遺伝子の配列を検出して、陽性(+)と陰性(-)で判定します。

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf

3-2.治療

新型コロナは、多くの場合が軽症です。そのため、新型コロナと診断されたら、まずは自宅で安静にして様子をみましょう。

特別な治療をしなくても、安静にしていれば、ほとんどの場合は回復します。

また、自宅待機期間中は、元気でも出歩かずに自宅で療養しましょう。

発症後5日間は他人に感染させるリスクが高いと言われています。発症日を0日目として5日間は外出を控えてください。

学校保健安全法施行規則においても、「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」を新型コロナウイルス感染症による出席停止期間としています。

咳症状が強い時は、鎮咳剤を用いてつらい症状を和らげる対症療法が可能です。

また、重症化予防として、ラゲブリオやパキロビッドなどの抗ウイルス剤を用いて重症化を防ぐ方法があります。

つらい症状がある人や、高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人は、医師にその旨を伝えましょう。

4.新型コロナかも?咳の対処法


自分でできるつらい咳症状の対処法を紹介します。

4-1.市販薬を使う

咳症状がつらい場合、市販薬を使う事も有効です。

市販の咳止め薬に含まれる有効成分は以下の3つです。

・コデインリン酸水和物
・チペピジンヒベンズ酸塩
・デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物

「コデインリン酸水和物」は、麻薬性鎮咳薬で乾いた咳に効果を発揮します。ただし、12歳未満の子どもには使えませんので注意しましょう。

「チペピジンヒベンズ酸塩」と「デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物」は非麻薬性鎮咳薬です。

鎮咳作用は弱いですが、依存性や便秘などの副作用の心配がありません。

4-2.痰が絡んでいるなら出す

喉に痰が絡んだ状態もつらいですね。

市販薬に含まれる、痰を出しやすくする成分は以下の通りです。

・ブロムヘキシン塩酸塩
・L-カルボシステイン
・L-エチルシステイン塩酸塩

「ブロムヘキシン塩酸塩」は、気道の分泌液を促し、痰を出しやすくします。

「L-カルボシステイン」や「L-エチルシステイン塩酸塩」は、粘り気のある痰に効果的です。痰をさらさらにし、痰の切れを良くします。

また、薬だけではなく、痰を出しやすくする方法も取り入れると効果的です。

・こまめに水分を補給して痰をやわらかくする
・のど飴をなめる
・マスクをする

喉がイガイガして、痰がへばりついているような感覚は、早くどうにかしたいと思いますよね。

加湿をすることで、痰が出やすくなります。

ぜひ、以上の方法を試してみてください。

4-3.ハチミツの摂取

ハチミツの摂取も咳の緩和に効果があるとされています。

喉への刺激も少ないため、温めて飲むのがおすすめです。

子どもの咳の緩和にも役立つという研究があります。ただし、1歳未満は乳児ボツリヌス症の危険があるので食べさせてはいけません。

5.新型コロナかも?病院を受診する目安


「新型コロナかもしれない」と思う症状が出た場合の、受診目安を紹介します。

受診の前に、診療可能な医療機関かどうか、あらかじめ確認するようにしましょう。

5-1.いますぐ受診してほしい場合

以下の症状があればすぐに病院を受診してください。

・呼吸が苦しくて動けない、眠れない
・顔や唇の色が青い
・肩で息をしている
・ぐったりしている

具合が悪く、自力で受診できないような場合は、救急車を呼びましょう。

5-2.すぐではなくても受診してほしい場合

以下のような症状がある場合、すぐではなくても受診しておくと安心です。

・咳や発熱、息苦しさ、倦怠感などの症状が強い
・咳や発熱、息苦しさ、倦怠感などの症状が4日以上続いている
・症状は軽いが、重症化リスクが高い人に当てはまる

5-3.コロナでない可能性は高いが、受診してほしい場合

熱はなく、咳や息苦しさが2週間以上続いている場合も受診しましょう。

新型コロナである可能性は低いですが、喘息や慢性気管支炎、COPDなど他の病気が隠れている場合があります。

6.おわりに

「新型コロナにかかったかも」と思う症状がある場合、まずは自宅で安静にし体を休めましょう。

つらい症状がある場合、市販薬を使うことも効果的です。

咳だけの症状では、新型コロナと判断はできません。激しい咳や長引く咳には、他の病気の可能性もあります。

症状が強い人や重症化リスクがある人は、早めに病院を受診しましょう。

【参考情報】国立感染症研究所『新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2023年8月4日現在)』
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/12188-covid19-ab124th.html

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