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喘息発作が起きたらどうする?段階別の対処法

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

喘息発作が急に起きた場合、慌てずに対処することができるでしょうか。

喘息発作には軽度、中等度、重度の段階があり、それぞれの症状と対処法を理解することが重要です。

この記事では、喘息発作の段階を理解し、それぞれに適切な対処をする方法をご説明します。また、ピークフロー値(喘息の重症度を測る数値)の測定方法とその重要性についてもご解説します。

喘息発作の対処法を把握し、喘息のコントロールができるようになりましょう。

1.喘息発作には段階があります


喘息の発作は症状の重さに応じて「小発作」「中発作」「大発作」の3つの段階に分類されています。それぞれの段階でみられる症状を以下でご説明いたします。喘息発作に対して適切に対応するには、これらの症状と対処法を正確に理解することが必要です。状況に応じて迅速に行動しましょう。

小発作の症状

小発作では、咳や軽い喘鳴が主な症状として現れます。

呼吸時にゼーゼーという音を感じることが多く、これは気道が狭まっていることを表しています。喘鳴は、空気が狭くなった気道を通過する際に生じる音です。

小発作の段階では、呼吸に苦しみながらも、まだ横になることができる状態を保っています。喘息発作が比較的軽度であるため、適切な対応を迅速に取れば症状を抑えることが可能です。

中発作の症状

中発作では、咳や喘鳴がひどくなり、深刻な呼吸困難になります。

中発作の段階では苦しくて横になることができないほどの呼吸が困難です。また、呼吸困難に加えて発熱を伴うこともあり、顔色や唇が青白くなることがあります。

青白い顔色はチアノーゼと呼ばれ、十分な酸素が血液に運ばれていないことを示しています。

さらに、激しい咳の後には強く息を吸い込む必要がある場合があります。

大発作の症状

大発作の場合、非常に苦しくて動けなくなり、会話をすることも難しくなります。

意識が不明瞭になることもあり、症状は極めて重篤です。

自分での呼吸が困難であり、迅速な医療の介入が必要となります。直ちに医療機関での治療が必要なので、迷わず救急車を呼びましょう。

【参照文献】独立行政法人 環境再生保全機構『 発作が起こったら…』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/attack.html

2.喘息発作時の対処法


それぞれの段階の喘息の発作の対処法をご説明いたします。

喘息発作の段階に応じてこれらの対処法を適切に行うことで、症状の管理と早期の治療が可能となります。とくに症状の悪化を感じた場合は、迷わず医療機関を受診することが重要です。

【参考文献】❝asthma attack❞ by National Institutes of Health
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/attacks

2-1. 小発作の対処法

小発作が起きた場合、まず気管支拡張薬を使用して発作が収まるのを待ちます。

発作が悪化するような場合は、初回の吸入から20分後に再度気管支拡張薬を使用し、必要であればさらに20分後に3回目の吸入を行います。

ピークフロー値が70%以上に回復し、その状態が3〜4時間続くならば、一時的には安心です。

しかし、発作が収まった後も喉や胸に違和感が残る場合は、休養が必要です。

薬を使用しても2時間以内に症状が改善しない、あるいは症状が悪化する場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

2-2. 中発作の対処法

中発作時には、安静にして気管支拡張薬を使用しながら症状の経過を観察します。

気管支拡張薬を吸入しても30分以内に症状が改善しない場合は、医師の診察を受けることが必要です。症状が悪化するか、改善が見られない場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。

2-3. 大発作の対処法

大発作時には、すぐに救急車を呼んで病院で治療を受けます。

救急車を待つ間も、20分おきに気管支拡張薬を吸入し、医師から処方された経口ステロイド薬を服用しましょう。

かかりつけ医がいる場合はそこでの治療がすすめられますが、夜間や休診日であれば救急外来を利用する必要があります。

3.ピークフロー値を記録し、把握しておこう


ピークフロー値は、気道の状態を客観的に評価することができる数値です。息を吐き出す速さを測定することで、気道の状態の評価が可能です。

そのため、喘息をコントロールするための重要な指標となります。

ピークフロー値の測定には専用のピークフローメーターを使用します。

深く息を吸い込んだあと、できるだけ強く速く息を吐き出すと、ピークフロー値が記録できます。気道が狭まっているとピークフロー値は低下し、気道が広がっていれば値は高くなります。

この数値により、喘息の症状や発作の程度を把握します。

具体的には、自己最良値の80〜60%は小発作、60〜30%は中発作、30%以下は大発作の指標として用いられます。この値に応じて、必要なときに適切な治療を行うことが可能です。

さらに、日々のピークフロー値を測定し記録することで、喘息のコントロール状態を観察し、治療薬の効果を確認できます。

一般的には1日に2〜3回の測定が推奨されています。その結果を喘息日誌に記入し、医師との間で共有することで、より効果的な治療計画を立てることが可能になります。

喘息日記には日々のピークフロー値や呼吸に関連する症状、使用している薬の種類と量を記録するのがおすすめです。

喘息日誌をつける際の記入例を以下でご紹介します。

日付と曜日
日誌をつける日付と曜日を記入します。これにより、症状の変化を時間の経過とともに追跡できます。

ピークフロー値の記録
朝と夜など1日2〜3回のピークフロー値を測定し記録します。

症状の記録
喘息の症状、呼吸の苦しさ、咳や喘鳴の有無、発作の頻度や強さなどを詳細に記録します。

薬の使用
使用した吸入薬や経口薬の種類、量、使用回数を記録します。必要であれば吸入器具の使い方やその他の注意事項も記載すると良いでしょう。

発作のきっかけ
喘息発作を引き起こす可能性がある要因やアレルギー反応などの発作のきっかけを記録します。

特記事項
その日にとくに異常があった場合や気になることがあれば、詳細に記録します。医師と相談する際に非常に役立つことがあります。

喘息日誌を毎日続けて記録し、定期的に医師と共有することで、喘息の状態をよりよく理解し、適切な治療計画を立てることができます。

とくにピークフロー値の低下は、気道の狭まりや炎症が進行していることを示しており、注意が必要です。早期に医師の診察を受けることで適切な対処が可能になります。

喘息の管理にはピークフロー値の測定と記録が不可欠であり、症状の変化に敏感に対応しましょう。

4.おわりに

喘息の管理において、予期せぬ発作に対処する準備をしておくことが重要です。喘息の症状は人によってそれぞれ異なります。自分に合った対処法を知っておくことが重要です。

日頃から発作が起きたときの対処法を医師と相談しておきましょう。使用する薬、薬の使い方、症状がどの程度が受診のタイミングかなどについて、事前に医師と話し合い、明確な計画を立てておく必要があります。

それにより実際に発作が起こった際に迷うことなく、迅速かつ適切な対応が可能となるでしょう。

また、必要な薬を常に持ち歩くことを習慣にして忘れないようにします。夜間や休日に発作が起きた場合に備え、夜間や休日に対応可能な病院を調べて、住所や電話番号を控えておきましょう。

これにより、もし喘息の発作が起きても、落ち着いて適切に対処することができます。

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