喘息とはどんな病気か?症状・原因・治療方法を解説!
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
喘息とは、空気の通り道である気道に炎症が起こって狭くなることで、激しい咳や息切れなどの症状が現れる病気です。
喘息を治療せずに放置していると、悪化して治りにくくなり、日常生活にも支障をきたすようになります。
咳や息苦しさが続いている人は、この記事を通して喘息の原因や症状を知り、適切な医療機関を受診してください。
1.喘息とはどんな病気か
喘息とは、気道が慢性的な炎症を起こして狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。
炎症で敏感になった気道は、ホコリや煙などのささいな刺激にも反応するようになります。そして、刺激に反応すると咳が出ます。
気道の炎症は、咳や息苦しさなどの症状がない時でも続いています。治療で症状が出なくなったからといって、自己判断で薬の服用や通院を止めてしまうと、重症化・難治化する恐れがあります。
【参考情報】 『喘息(ぜんそく)』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html
【参考文献】❝Asthma❞ by cleveland clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6424-asthma
2.喘息の症状
喘息の主な症状は、咳、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー、ヒューヒューという特有の呼吸音)、息苦しさの3つです。このような症状が2週間以上続くときは、喘息の疑いがあります。
さらに、以下の項目に心当たりのある方は、特に喘息が疑われます。
・アレルギーがある
・血縁者にアレルギーの人がいる
・季節の変わり目に症状が出る
・明け方や夜間など特定の時間帯に症状が出る
・市販の咳止め薬を飲んでも症状が治まらない
ただの風邪で2週間以上咳が続くことは、めったにありません。心配な方は、病院を受診して咳の原因を調べましょう。
【参考情報】『「もしかしてぜん息?」と思っている方へ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html
3.喘息の原因
喘息の原因は、アレルギー性と非アレルギー性に分けられます。
3-1.アレルギー性
アレルギーが原因で発症する喘息です。子どもに多いのが特徴です。
アレルギーの原因物質となるアレルゲンの種類には、以下のようなものがあります。
・ダニ
・花粉
・タバコ
・ペットの毛
・ハウスダスト
どの物質で喘息が引き起こされるのかは、人によって違いますが、検査で調べることができます。
【参考情報】『アレルギー性気管支喘息』徳島県医師会
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/686-277
3-2.非アレルギー性
非アレルギー性喘息は、成人に多いのが特徴です。
発作を引き起こす原因としては、次のようなものが考えられます。
・肥満
・ストレス
・過労
・アルコール
・寒暖差
・呼吸器感染症
中でも、風邪などの呼吸器感染症がきっかけで症状が悪化することが多いので、手洗いなどの基本的な感染症対策をしっかり行いましょう。
4.喘息の検査
喘息が疑われるときは、以下のような検査を行います。
4-1.画像検査
X線(レントゲン)で胸部の画像を撮影し、肺の状態や喘息以外の病気の有無を確認するために行います。より詳しく調べたい場合は、CT検査を行います。
4-2.血液検査
血液検査は、主にアレルギーについて調べるために行います。アレルギーがあるときに高くなる好酸球、総IgE、抗原特異的IgE抗体などの値を確認します。
4-3.呼吸機能検査
肺の機能や気道の状態を調べる検査です。スパイロメトリー、モストグラフ、呼気NO検査などの種類があります。
【参考情報】『検査と診断|ぜん息を知る』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/test.html
5.喘息の治療薬
喘息の治療薬は、気道の炎症を抑える長期管理薬(コントローラー)と、発作を抑える発作治療薬(リリーバー)が中心となります。
5-1.長期管理薬
長期管理薬は、気道の炎症をコントロールして発作を防ぐ薬です。最もよく使われるのは、吸入ステロイド薬です。
吸入ステロイド薬には、気道の炎症を抑える効果があります。使い続けることで、喘息の症状も軽くなっていきますが、効果が実感できるまでに1~2週間ほどかかります。
気管支を広げるβ2刺激薬もよく使われます。吸入ステロイド薬とβ2刺激薬が配合された薬もあります。
5-2.発作治療薬
発作が起きたときに、ただちに症状を改善するために、一時的に使う薬です。
使うとすぐに効き目が現れますが、喘息の原因となる気道の炎症を抑えることはできません。
根本的な治療には、長期管理薬を毎日服用することが必要となります。
【参考情報】『気管支ぜんそく|呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html
6.喘息と似た症状のある病気
激しい咳や息苦しさがあっても、喘息ではない可能性もあります。
以下、喘息とよく似た症状が現れる病気を紹介します。
6-1.咳喘息
喘息とよく似た病気ですが、喘鳴や息苦しさはなく、咳だけが長引く病気です。
喘息と同じように、アレルギーやストレスなどが原因で発症すると考えられています。
6-2.気管支炎
ウイルスや細菌に感染して、気管支に炎症が起こる病気です。
咳、痰、発熱、鼻水など、風邪のような症状が強く現れます。
6-3.百日咳
百日咳菌に感染して起こる、急性の呼吸器感染症です。
風邪のような症状から始まって、次第に咳が強くなります。コンコンと激しく短い咳が何日も続きます。
百日咳は、生後2か月から接種できるワクチンで予防することができます。しかし、ワクチンの効果が切れた大人が感染し、発症する例もあります。
6-4.クループ症候群
風邪やインフルエンザなどの感染症によって引き起こされる症状です。
「犬が吠えるような」とか「オットセイの鳴き声のような」と言われる特徴のある咳が出て、声のかすれ、呼吸困難などの症状が現れます。
6-5.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ・ニューモニエという病原体が原因の感染症です。
激しい咳がしつこく続くほか、発熱やのどの痛み、頭痛、倦怠感などの症状があります。
6-6.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
タバコの煙などの有害物質が原因で発症する病気です。
肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなり、咳や息苦しさなどの症状が現れます。
7.おわりに
2週間以上咳が続いているなら、喘息を疑い、呼吸器内科を受診しましょう。
呼吸器内科が近くになければ一般の内科、できれば、呼吸器の専門医やアレルギーの専門医がいる病院を選ぶとよいでしょう。
喘息は、市販薬ではよくならない病気です。症状を改善するには、病院で自分に合った薬を処方してもらう必要があります。
毎日の服薬には根気がいりますが、適切な治療を続けることで、健康な人と変わらない生活を送ることも可能です。
特に、小児の喘息は治療により寛解(ほとんど治ったといえる状態)に至ることが多いです。