呼吸器内科でわかる喉の不調の原因と声がれ対策
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
「風邪は治ったのに声がれと咳だけが続く」「喉がイガイガして喋るとむせてしまう」
こうした喉の不調が長く続くと、日常生活だけでなく、声をよく使う方にとってはお仕事にも影響が出てしまうことでしょう。
本記事では長引く声がれや咳に注目し、喉の不調が起こる仕組みや普段からできる対策をわかりやすく解説します。
1. 喉の不調の原因は?呼吸器内科でわかること

声がれや咳が続くとき、呼吸器内科では風邪や喉の使いすぎの他に、アレルギー性咽喉頭炎(いんこうとうえん)の可能性も考えながら診察を進めます。
喉は声を出すだけでなく、空気の入り口でもあります。
そのためアレルギーで喉の粘膜が敏感になると、症状が出現しやすくなるのです。
1-1. 風邪や感染症と間違えやすいアレルギー性の炎症
風邪の場合は発熱や倦怠感を伴うことが多いですが、アレルギー性の炎症では熱がないのに咳や声がれが続くのが特徴です。
花粉やハウスダスト、PM2.5などの刺激物質が喉や気道に入り込むことで、粘膜が過敏に反応し、炎症を引き起こすケースもあります。
風邪などの感染症が治っても喉のイガイガだけがずっと続いていたり、電話などの会話の途中で咳が止まらなくなったりする場合も、アレルギー性の炎症が喉や声帯に関係していることがあるのです。
1-2. 喉の炎症は声をよく使う人に多い?
歌手やアナウンサーだけでなく、教師・コールセンター・営業職など、日常的に声を使う機会が多い職業では、発声の回数が自然と増えるため、声帯や喉頭(のどぼとけ付近)の粘膜に、どうしても負担がかかりやすくなることがあるともいわれています。
そのため、声をあまり使わない人と比べると、声帯のまわりに違和感や炎症がみられることが多い傾向があるようです。
声がれ・喉の違和感・乾いた咳・痰がからむ感じなどが3ヶ月以上続いたら、慢性喉頭炎(こうとうえん)が関係している可能性もあります。
長時間の電話応対や自己流の発声でのスピーチ、大きな声を出し続ける習慣などは知らないうちに声帯に過剰なストレスを与えてしまいます。
声帯が十分に休めず炎症が慢性化してしまうこともあるため、日頃から喉を酷使しすぎないよう注意が必要です。
【参考情報】『Acute Laryngitis』National Heart, Lung, and Blood Institute (NIH)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK534871
1-3. 呼吸器内科では喉と咳の関係性に注目
呼吸器内科では、喉の痛みや声がれが続く場合、どんな病気が隠れているかを確認しながら診察を進めます。
アレルギー性咽喉頭炎だけでなく、喘息、気管支炎など複数の要因が同時に影響していることも少なくありません。
夜間や早朝の咳、階段や坂道での息切れや苦しさが出ている場合は、喉だけでなく気道全体の炎症や呼吸器の疾患が影響していることもあります。
こうしたサインが続くときは、症状の変化をみながら、必要に応じて専門科で相談すると安心です。
【参考情報】『アトピー咳嗽/喉頭アレルギー』日本内科学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/10/109_2137/_pdf
2. アレルギー性咽喉頭炎とは

喉の痛みと声がれが重なって続くと、違和感のために生活の中で不便を感じる方もいるでしょう。
呼吸内科では、鼻炎や気管支炎と同じように、喉の奥や気道にアレルギー反応が起きることで症状を引き起こす、アレルギー性咽喉頭炎の可能性も視野に入れて診察を進めます。
2-1. アレルギー性咽喉頭炎が起こるしくみ
喉の不調の原因となるアレルギー性咽喉頭炎は、花粉やハウスダストなどのアレルギー物質が喉の粘膜に触れることで起こります。
ウイルスや細菌の感染ではなくアレルギー反応が原因という点が特徴です。
喉の奥や声帯を含む喉頭は、空気の通り道として外界の刺激を受けやすく、アレルギー物質が付着すると粘膜が反応して、腫れや過敏性が生じやすいのです。
「喉の粘膜がアレルギー物質に反応して赤く腫れ、声や咳の症状につながる状態」というのが、アレルギー性咽喉頭炎のイメージです。
【参考情報】『喉頭アレルギーの診断と治療』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/122/1/122_70/_pdf
2-2. アレルギー性咽喉頭炎の主な症状チェック
アレルギー性咽喉頭炎では、喉の粘膜や声帯に炎症が起こるため、次のような特徴的な症状が見られます。
● 声がれ(特に朝に強い)
起床時に「声が低い」「かすれて出しにくい」と感じやすく、声帯のむくみが関係しています。
● 喉のイガイガ・乾燥感・異物感
つばを飲み込んだときに引っかかるような感覚や、何かが貼りついているような違和感が続きます。
● 咳払いが増える
うまく声が出しにくい感じが続き、つい「エヘン、エヘン」と咳払いが増え、会話中や仕事中に気になることがあります。
● 乾いた咳(空咳)が続く
胸の症状がなく検査でも異常が見つからない場合でも、喉頭の炎症が原因で咳が続くケースは少なくありません。
● 声を使うと悪化し、休むと改善しやすい
長時間話して喉を酷使する職業では症状が強まりやすく、休息をとると軽くなる傾向があります。
● 季節や環境で悪化する
春・秋の花粉、ダニ・ハウスダスト、埃、冷気、急な温度差などが刺激となり、症状が強く出ることがあります。
これらの症状は、風邪の咽頭炎や甲状腺疾患、GERD(逆流性食道炎)など他の病気と似ていることもあり、原因がわからないまま続いてしまう場合があります。
喉の違和感や声のかすれ、空咳が続くときは無理せず医師に相談しましょう。
【参考情報】『Laryngitis』Mayoclinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/laryngitis/symptoms-causes/syc-20374262
2-3. 原因となるアレルゲンは?
アレルギー性咽喉頭炎の原因となるアレルゲンには以下のようなものがあります。
・スギ・ヒノキ・イネ科などの花粉
・ダニ・ハウスダスト
・カビ(真菌)
・ペットの毛やフケ
・PM2.5 などの細かい汚染粒子
また、アレルゲンだけでなく日常の環境も症状を強めることがあります。
・急な寒暖差
冷たい空気が喉の粘膜を刺激し、炎症が悪化しやすくなります。
・エアコンによる乾燥
粘膜の潤いが失われるとバリア機能が弱まり、刺激に反応しやすくなります。
・外気の汚れ
微粒子が声帯に付着すると、アレルギー反応が起こりやすくなります。
そのため、季節や環境の変化に合わせた対策が症状の安定につながります。
3. 季節や環境による悪化を防ぐ生活習慣

喉のトラブルは、生活環境や習慣を整えることで予防しやすくなります。
アレルギー性咽喉頭炎は、季節や周囲の環境に左右されやすい特徴があり、春・秋の花粉シーズン、空気が乾燥する冬、エアコンをよく使う夏など、季節ごとの変化に合わせて症状が強まることがあります。
ここでは、声を使う仕事の方でも続けやすい、今日から試せる対策をご紹介します。
3-1. 花粉シーズンに気をつけたいポイント
花粉シーズンの対策は、まず「花粉に触れる機会を減らす」ことが基本です。
花粉飛散情報の活用と、マスク・眼鏡・帰宅後の洗顔・うがいが基本対策となります。
テレビの天気予報やスマートフォンのアプリなどで花粉飛散情報をチェックし、飛散量が多い日は外出を控えるか、しっかりとマスクを着用しましょう。
特に、花粉が多い日は屋外での長時間の活動や運動を控える工夫が重要です。運動をすると呼吸量が増え、より多くの花粉を吸い込んでしまいます。
ジョギングやウォーキングは、花粉飛散量が少ない早朝や雨上がりを選ぶとよいでしょう。
帰宅後は、玄関前で衣服についた花粉を払い落とし、すぐに手洗い・洗顔・うがいをする習慣をつけましょう。
また、空気清浄機を玄関や寝室に設置する、洗濯物は室内干しにするなど、喉への負担を減らす室内環境づくりも効果的です。
【参考情報】「花粉症対策」厚生労働省
https://www.env.go.jp/content/000194676.pdf
3-2. 室内環境を整えるコツ
季節に限らずアレルギーの原因となるハウスダスト対策も重要です。
ハウスダスト・ダニ・カビとアレルギー疾患の関係は深く、湿度60%以下を目安とした管理が推奨されています。
湿度が高すぎるとカビやダニが繁殖しやすく、逆に低すぎると喉の粘膜が乾燥して炎症を起こしやすくなります。湿度計を設置し、適切な湿度を保つように心がけましょう。
また、カーペット・ぬいぐるみ・カーテンなど「ホコリがたまりやすい場所」の見直しも大切です。
カーペットはフローリングに変更する、ぬいぐるみは定期的に洗濯する、カーテンは洗える素材を選ぶなど、こまめな清掃ができる環境を整えましょう。
加湿器やエアコンの使い方にも注意が必要です。加湿器は水を入れっぱなしにするとカビが生えやすいため、毎日水を交換し、定期的に清掃してください。
エアコンのフィルターも月に1回は掃除し、内部クリーニングも年に1回は業者に依頼するとよいでしょう。
喉のための適切な温度・湿度の目安は、室温20〜25℃、湿度40〜60%です。特に冬場の暖房使用時は乾燥しやすいため、加湿器を併用することをお勧めします。
【参考情報】『Dry Air Can Negatively Impact Your Health — Here’s What To Do About It』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/can-best-combat-effects-dry-winter-air
3-3. 声をよく使う人の「喉を守る」セルフケア
声を使う仕事をしている方にとって、喉の状態はパフォーマンスを左右する大切な要素です。日頃から喉をいたわる習慣をつけましょう。
まず、声を出す前後のウォーミングアップ・クールダウンが効果的です。
業務の前に、軽く声を出して声帯を温める、首や肩のストレッチをして緊張をほぐす、といった準備をするだけで、声帯への負担を軽減できます。
水分補給も非常に重要です。こまめに水や温かいお茶を飲んで、喉を潤しましょう。
ただし、カフェインやアルコールは利尿作用があり、体内の水分を奪うため、飲み過ぎには注意が必要です。
喫煙は喉や気道に大きなダメージを与えます。タバコの煙は粘膜を直接刺激し、炎症を悪化させるだけでなく、声帯の血流を悪化させて声がれの原因にもなります。
もし喫煙習慣がある方は、禁煙を強くお勧めします。
【参考情報】『Keeping Your Voice Healthy』Athletes and the Arts
https://athletesandthearts.com/wp-content/uploads/AthArts-keeping-your-voice-healthy-1118.pdf
4. 喉の違和感で呼吸器内科を受診する目安

「喉の不調は気になるけれど、病院に行くほどでもないかもしれない」と受診を迷われる方もいるでしょう。
しかし、長引く喉の違和感や咳の中には、早めに原因を確認した方がいいケースも含まれます。
4-1. 受診を考えた方が安心な症状のサイン
以下のような症状がある場合は、早めに呼吸器内科を受診することをお勧めします。
3週間以上続く咳、8週間以上続く「慢性咳嗽」は医師への相談が必要です。急性の咳は多くが風邪やインフルエンザによるもので、2週間以内に自然に治まります。
しかし、それ以上続く場合は、何らかの慢性的な原因があると考えられます。
声がれが1か月以上改善しない場合や、飲み込みにくさ・息苦しさを伴う場合も要注意です。声がれが長引くと、声帯ポリープや声帯結節などの病変ができている可能性もあります。
また、飲み込みにくさがある場合は、喉頭の腫れや神経の問題も考慮する必要があります。
夜間・早朝の咳、階段や坂道での息切れを伴う場合は、喘息なども考慮が必要です。特に、横になると咳が出る、夜中に咳で目が覚める、といった症状は気管支喘息の典型的なサインです。
また、軽い運動で息切れがする場合は、肺や心臓の機能に問題がある可能性もあります。
4-2. 呼吸器内科だからできる検査
「喉の症状は耳鼻咽喉科と呼吸器内科どちらを受診したらいい?」と思われる方も多いでしょう。
確かに、耳鼻咽喉科は鼻・喉・耳を細かく診る専門科です。喉頭内視鏡で声帯を直接観察したり、鼻炎の治療を行ったりするのは耳鼻咽喉科の得意分野です。
一方、呼吸器内科は、喉から気管支、肺まで「呼吸にまつわる全体」を評価し、咳や息切れの背景を総合的に判断する診療科です。特に、喉の症状に加えて咳や息苦しさがある場合、呼吸器内科での評価が重要になります。
呼吸器内科では、スパイロメトリー(呼吸機能検査)、胸部画像検査(X線やCT)、アレルギー検査(血液検査や皮膚テスト)、呼気NO検査(一酸化窒素を測定して気道の炎症を評価)など、咳の原因を絞り込むための様々な検査を行います。
例えば、スパイロメトリーでは肺活量や気道の狭窄の程度を測定し、喘息の有無を判断できます。呼気NO検査は気道の好酸球性炎症(アレルギー性炎症)を反映する検査で、数値が高い場合はアレルギー性の炎症が強いことを示します。
こうした検査により、「喉だけの問題なのか、気管支や肺にも炎症があるのか」を正確に判断できます。必要に応じて耳鼻咽喉科と連携しながら、最適な治療を提供することも可能です。
【参考情報】「呼吸機能検査ガイドライン」本呼吸器学会肺生理専門委員会
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/04/dl/s0420-6k.pdf
4-3.受診前にメモしておくと診察がスムーズに
受診の前に、次のような情報をメモしておくと、診察がスムーズに進みやすくなります。
・症状が出始めた時期:いつ頃から続いているのか、急に悪化したタイミングがあるか
・悪化しやすい時間帯や季節:朝・夜・季節の変わり目など、特定のパターンがあるか
・悪化しやすい状況:会話中、運動時、冷たい空気、ほこりっぽい環境、特定の食べ物など
・服用中の薬:市販薬も含めて、現在飲んでいる薬をすべてまとめておく
・これまでの検査結果:他院での検査データや診断名があれば持参する
・声を使う仕事の内容:発声量の目安や、教室・オフィスなどの環境について
こうした情報がそろっていると、医師が原因を整理しやすくなり、より適した治療方法を提案しやすくなります。
少しでも不安があれば、お気軽にご相談いただければと思います。
5. おわりに
声をよく使うお仕事の方にとって、喉の不調は「少し無理をしただけ」と我慢してしまいがちです。
しかし、声がれや咳が長く続く背景には、花粉やハウスダスト、寒暖差などによるアレルギー性の炎症が隠れていることがあります。
そのままにしておくと自然には治りにくく、慢性化したり、声帯のトラブルや喘息につながることもあります。
「たかが喉の不調」と軽く考えず、早めに呼吸器内科で状態を確認し、適切な治療と生活環境の見直しを行うことが大切です。



