寒暖差アレルギーで咳が止まらない!気温差による喉のイガイガ原因と対策
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
電車に乗った瞬間や、暖房の効いたオフィスから外に出た瞬間に「コンコン」と咳き込んでしまうことはありませんか?
風邪ではないのに、季節の変わり目や寒暖差で咳が止まらない。それはもしかすると、一般的に「寒暖差アレルギー」と呼ばれる症状や、気道の過敏性が原因かもしれません。
この記事では、寒暖差に体が反応してしまう原因を「自律神経」の視点から解説し、通勤・仕事中・寝室などシーン別の具体的な対策をご紹介します。
1. 寒暖差アレルギーとは?咳が出る人の特徴

「寒暖差アレルギー」という言葉をよく耳にするようになりましたが、医学的に正確に言うと、これはアレルギー反応(IgE抗体が関わる反応)ではありません。
鼻の症状であれば「血管運動性鼻炎」と診断されることが多いですが、これは急激な温度変化によって自律神経が乱れ、粘膜が腫れたり過敏になったりする状態を指します。
この自律神経の乱れによる過敏な反応が、鼻だけでなく、喉や気管支で起こると、しつこい咳の原因となります。
1-1. 風邪や花粉症との違いチェック
寒暖差による咳なのか、ウイルスや花粉によるものなのかを見分けることは、適切な対処の第一歩です。以下の特徴に当てはまる場合、寒暖差が影響している可能性が高いでしょう。
・発熱がない
風邪のような熱っぽさやだるさはあまり感じない。
・透明な鼻水が出る
黄色や緑色ではなく、水のようなサラサラした鼻水が出る。
・特定の場所で咳き込む
暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動した時など、温度が変わるタイミングで咳が出る。
・目のかゆみがない
花粉症と違い、目の充血やかゆみは伴わないことが多い。
これらはあくまで目安ですが、「気温差」がトリガー(引き金)になっている感覚があれば、気道のケアを見直す必要があります。
◆『1週間以上咳がとまらない時はどうすればいい?』について>>
【参考情報】『Common Cold』Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/common-cold/index.html
【参考情報】『Hay Fever (Allergic Rhinitis)』American College of Allergy, Asthma & Immunology
https://acaai.org/allergies/allergic-conditions/hay-fever/
1-2. なぜ「咳」が出るのか?気道の過敏性
寒暖差によって咳が出る人の気道(空気の通り道)は、健康な人よりも「過敏」になっている傾向があります。これを医学的には「気道過敏性(きどうかびんせい)」と呼びます。
通常、私たちの気道は多少の冷たい空気が入ってきても、加温・加湿機能が働いて肺を守ります。
しかし、気道が過敏になっていると、わずかな温度変化(一般的に7度以上の差)が刺激となり、気管支の筋肉(平滑筋:へいかつきん)が収縮して咳反射を引き起こします。
特に、もともと「咳喘息」や「喘息」の素因を持っている方は、この寒暖差が発作のスイッチになりやすいため、より一層の注意が必要です。
◆『喘息とはどんな病気か?症状・原因・治療方法を解説!』について>>
【参考情報】『季節の変わり目に、鼻水、くしゃみが止まらないのは、寒暖差アレルギーのせいかも』 日本気象協会
https://tenki.jp/suppl/m_nakamura/2016/11/20/17451.html
2. 気温差が自律神経と気道に与える影響

なぜ温度が変わるだけで、私たちの体は咳という反応を示すのでしょうか。その鍵を握っているのが「自律神経」です。
2-1. 自律神経の「誤作動」が咳を招く
自律神経には、活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」があります。これらは気温に合わせて血管を広げたり縮めたりして体温を調節しています。
しかし、1日の寒暖差が7度以上あると、このスイッチの切り替えが追いつかなくなります。これを「自律神経の乱れ」と言います。自律神経がバランスを崩すと、気道の粘膜にある血管のコントロールもうまくいかなくなり、粘膜が充血して腫れぼったくなります。その結果、喉がイガイガしたり、空気の通り道が狭くなって咳が出やすくなったりするのです。
2-2. 気道の「繊毛運動」の低下
私たちの喉や気管支の内側には、細かい毛のような「繊毛(せんもう)」が生えています。この繊毛は常に動いていて、入ってきたウイルスやホコリを外へ排出する役割(粘液繊毛輸送系)を担っています。
通常時、繊毛は元気に動いて異物を排除し、気道粘膜を潤いを保つ役割を果たしていますが、寒冷や乾燥した環境では、繊毛の動きが鈍くなり、異物が粘膜に付着しやすくなります。この状態が続くと、風邪や感染症のリスクが高まる恐れがあります。
寒暖差で繊毛機能が低下した状態で、さらに冷気が刺激となると、体は防御反応として激しい咳を起こし、無理やり異物を追い出そうとするのです。これが、止まらない咳の正体の一つです。
【参考情報】『呼吸器Q&A Q3. 夜間や早朝にせきが出ます』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q03.html
3. 1日の温度差で気をつけたいシーン【通勤・寝室・お風呂】

寒暖差アレルギーを防ぐには、極端な温度変化を体に感じさせないことが重要です。
ここでは、働く世代が特に直面しやすい3つのシーンにおける、具体的な対策をご紹介します。
3-1. 【通勤】マフラーとマスクで「加温・加湿」
朝の通勤時は、温かい布団や家の中から急に冷たい屋外へ出るため、最もリスクが高いタイミングです。特に、首には太い血管が通っており、首が冷えることで全身の交感神経が緊張してしまいます。
そのため、マフラーやネックウォーマーで首を温めることは、防寒だけでなく自律神経を安定させる効果があります。
また、マスクは感染対策だけでなく、呼気を利用して「携帯用の加湿器」としても機能します。
マスク内で適度な湿度と温度に保たれた空気を取り込むことで、気道への冷気刺激を和らげ、呼吸器を守ることができます。
◆『寒暖差で咳が止まらない?実は咳喘息かもしれません』について>>
3-2. 【お風呂・脱衣所】温度差を最小限にする
冬場に多いのが、入浴前後の咳き込みです。暖かいリビングから寒い脱衣所へ行き、さらに熱いお湯に浸かるという激しい温度変化は、気道にとって大きなストレスです。
そこで、脱衣所を予備暖房するために小型のヒーターなどを使って温めておくことも対策のひとつです。
また、シャワーを使って浴室を蒸気で満たしてから入るのも有効ですが、過度な湯気は逆に刺激になる場合があるため、咳が出る場合は換気扇を適度に回し、湿度が上がりすぎないように調整しましょう。
3-3.【寝室】明け方の冷え込み対策
就寝中、特に明け方は気温がぐっと下がります。副交感神経が優位になっている就寝中に冷気を吸い込むと、気道が収縮して「モーニングアタック(朝の発作)」を起こしやすくなります。
これを防ぐためには、布団から出る肩や首を冷気から守ることが大切です。肩当てやネックウォーマーを着用して寝ることで、布団の隙間から入る冷気を防ぐことができます。
また、エアコンのタイマーを活用し、起床時間の30分〜1時間前に暖房が入るように設定すると、起きる時の室温差を減らし、快適に目覚めることができます。
【参考情報】『冬場の住居内の温度管理と健康について』東京都健康長寿医療センター
https://www.tmghig.jp/research/release/2013/1211.html
4. 喉と気道を守る生活習慣(湿度・マスク・水分・姿勢)
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ここでは、医療的な視点から、もう少し踏み込んだ「喉と気道を守るための生活ケア」を解説します。
単に「加湿しましょう」というだけでなく、なぜその数値が必要なのかを理解して実践するようにしましょう。
4-1. 湿度は「40〜60%」を厳守する
よく「加湿が大事」と言われますが、実は加湿のしすぎも良くありません。
湿度が40%を下回るとウイルスが空気中に浮遊しやすくなり、気道粘膜も乾燥して防御機能が低下します。
一方、湿度が70%を超えるとカビやダニが繁殖しやすくなり、これらがアレルゲンとなって喘息など別の咳を引き起こすリスクが高まります。
気道粘膜が最も安定して機能するのは、湿度が40〜60%の状態です。湿度計を部屋に置き、この範囲をキープすることを心がけましょう。加湿器がない場合は、濡れタオルを室内に干すだけでも効果があります。
4-2. 水分補給は「1時間に一度、ひと口」
一度に大量の水を飲むよりも、少量をこまめに摂取する方が、喉の潤いを保つのには効果的です。
気道の繊毛は、表面が適切な粘液で覆われていないとうまく動きません。乾燥を感じる前に、1時間に一度程度、温かい飲み物で喉を潤すことで、繊毛運動をサポートすることができます。
冷たい水は気道を収縮させる刺激になることがあるため、日頃から常温または温かい飲み物 を飲むように意識しましょう。
4-3. 「鼻呼吸」を意識してフィルターを通す
口呼吸は、冷たく乾燥した外気や、ホコリ・ウイルスを直接喉の奥(咽頭・喉頭)にぶつけてしまう行為です。
一方、鼻は優秀な「加温・加湿機能付き空気清浄機」です。鼻を通ることで、空気は温められ、湿度を与えられ、異物が除去された状態で肺に届きます。
マスクの下で口が開いてしまっていませんか? 意識的に口を閉じ、鼻呼吸を徹底することが、最も基本的な気道保護になります。
5. 咳を起こしにくくする“自律神経の整え方”

寒暖差アレルギーの根本には「自律神経の乱れ」があります。喉のケアと並行して、体全体の自律神経を整えることで、気温差に負けない体づくりを目指しましょう。
5-1. 「3つの首」を温める
東洋医学的にも言われることですが、「首・手首・足首」の3つの首を冷やさないことは、自律神経の安定に直結します。
これらは皮膚の近くに太い血管が通っているため、ここを温めると温まった血液が全身を巡り、効率よく体温を上げることができます。
特にデスクワーク中、足首が冷えている方は多いです。レッグウォーマーやひざ掛けを活用し、下半身を冷やさないようにしましょう。
5-2. 質の良い睡眠と腸内環境
自律神経を回復させる唯一の時間は「睡眠中」です。寝不足が続くと、交感神経が常に緊張状態になり、わずかな寒暖差にも過剰に反応してしまいます。
また、腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経と密接に関わっています。
発酵食品や食物繊維を摂り、腸内環境を整えることは、遠回りのようでいて、実は免疫機能や自律神経の安定に役立ちます。
5-3. 軽い有酸素運動で心肺機能を強化
寒暖差に弱い人は、体温調節機能が鈍っている可能性があります。
ウォーキングやストレッチなど、軽く汗ばむ程度の運動を習慣にすることで、自律神経の働き(体温調節機能)をトレーニングすることができます。
激しい運動である必要はありません。血流を良くし、呼吸筋を柔軟に保つことが、咳き込みにくい強い気道を作ることにつながります。
【参考情報】『快眠と生活習慣』厚生労働省 e-ヘルスネット
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
【参考情報】『The Brain-Gut Connection』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/wellness-and-prevention/the-brain-gut-connection
6. おわりに
寒暖差による咳は、単なる「季節のせい」と我慢するものではなく、体が「環境の変化についていけない」とサインを出している状態です。
マフラーやマスクでの保温・保湿、湿度40〜60%の管理、そして自律神経を整える生活習慣を取り入れることで、辛い咳を予防・軽減することができます。
ただし、咳が2週間以上続く場合や、夜も眠れないほど激しい場合、呼吸が苦しい場合は、単なる寒暖差アレルギーではなく、咳喘息や他の呼吸器疾患が隠れている可能性があります。
「たかが咳」と放置せず、長引く場合は一度呼吸器専門医にご相談ください。



