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食後の咳が気になる方へ 食物アレルギーと咳の関係を知ろう

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

「食事をした後に、なぜか咳が出る」「特定の食べ物を食べると、喉がイガイガする」こんな経験はありませんか?

実は、食物アレルギーが原因で咳が出ることがあります。食物アレルギーというと、じんましんや腹痛をイメージする方が多いかもしれませんが、呼吸器の症状として咳や喉の違和感が現れることも少なくありません。

この記事では、食物アレルギーと咳の関係について、分かりやすく解説していきます。

1. 食物アレルギーとは?

食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれる成分(主にタンパク質)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態のことです。

本来は体を守るはずの免疫が、無害な食べ物を「敵」と判断して攻撃してしまうため、さまざまな症状が現れます。

1-1. 食物アレルギーの主な症状

食物アレルギーの症状は、皮膚、消化器、呼吸器など、全身のさまざまな部位に現れます。

<皮膚症状>じんましん、かゆみ、赤み、湿疹
<消化器症状>腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
<呼吸器症状>咳、喉のイガイガ感、呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)
<全身症状>アナフィラキシーショック(血圧低下、意識障害など)

よく知られている症状にはじんましんや腹痛がありますが、呼吸器症状、例えば咳や喉の違和感も食物アレルギーによって引き起こされることがあります。

食後にこうした症状が現れる場合、食物アレルギーが原因で咳が出ている可能性も考えられます。

食後の咳が食物アレルギーによるものか、咳喘息が関与しているのかも考慮する必要があります。

【参考情報】『Food Allergy Symptoms』American College of Allergy, Asthma & Immunology
https://acaai.org/allergies/allergic-conditions/food/

◆『咳が止まらない。アレルギーが原因かも?』について>>

1-2. 食物アレルギーを引き起こしやすい食品

食物アレルギーを引き起こしやすい食品は、年齢によって異なります。

子どもでは鶏卵、牛乳、小麦が三大アレルゲンとされていますが、大人では甲殻類(エビ、カニ)、果物、そば、魚類などが多くなります。

また、最近では果物や野菜による口腔アレルギー症候群も増えています。

【参考情報】『食物アレルギー』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf

2. 食物アレルギーが咳を引き起こすメカニズム

食べ物を食べた後に咳が出る場合、どのような仕組みで症状が起こるのでしょうか。

食物アレルギーによる咳には、大きく分けて「即時型」と「遅延型」の2つのタイプがあります。

2-1. 即時型アレルギー反応

即時型アレルギー反応は、食べ物を摂取してから数分から2時間以内に症状が現れるタイプです。

体内に入ったアレルゲン(アレルギーの原因物質)に対して、IgE抗体という免疫物質が反応し、ヒスタミンなどの化学物質が放出されます。

このヒスタミンが喉や気管支の粘膜を刺激することで、以下のような症状が起こります。

・喉のかゆみやイガイガ感
・咳き込み
・気管支の収縮による呼吸困難
・喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)

即時型の場合、食事との関連が分かりやすいため、比較的原因を特定しやすいという特徴があります。

2-2. 遅延型アレルギー反応

一方、遅延型アレルギー反応は、食べてから数時間から数日後に症状が現れるタイプです。

即時型とは異なり、IgG抗体やT細胞などが関与する免疫反応で、症状の出方がゆっくりしています。

遅延型の場合、以下のような特徴があります。

・食事と症状の関連が分かりにくい
・咳や喉の違和感が持続する
・慢性的な気管支の炎症を引き起こすことがある
・原因食品の特定が難しい

遅延型アレルギーによる咳は、風邪や他の呼吸器疾患と区別しにくいため、見逃されやすいという問題があります。

【参考情報】『アレルギーについて』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/

3. 食物アレルギーによる咳の典型的な症状

食物アレルギーが原因で起こる咳には、いくつかの特徴的な症状があります。

以下のような症状に心当たりがある場合は、食物アレルギーの可能性を考えてみましょう。

3-1. 喉のイガイガ感と咳

食事中や食後すぐに、喉がイガイガする、ムズムズするといった違和感を感じることがあります。これは口腔アレルギー症候群(OAS)の典型的な症状で、特に果物や野菜を生で食べたときに起こりやすいです。

花粉症がある方は、花粉のアレルゲンと似た構造を持つ果物や野菜に反応することがあります(交差反応といいます)。例えば、スギ花粉症の方がトマトを食べたときや、シラカバ花粉症の方がリンゴを食べたときなどに症状が出ることがあります。

喉のイガイガ感に続いて、咳が出始めることも多く、「何かが喉に引っかかっている感じ」「喉をかきたくなる感じ」と表現される方もいます。

◆『むせるような咳でつらい。原因や考えられる病気』について>>

3-2. 軽い呼吸困難感

食物アレルギーによる気管支の反応が強い場合、咳だけでなく軽い呼吸困難感を伴うことがあります。「息が吸いにくい」「胸が苦しい」「呼吸が浅くなる」といった症状です。

これは、アレルギー反応によって気管支が収縮し、空気の通り道が狭くなるために起こります。喘息を持っている方では、食物アレルギーが喘息発作のきっかけになることもあるため、特に注意が必要です。

3-3. 食後の持続的な咳

即時型ではなく遅延型のアレルギー反応の場合、食後数時間から半日ほど経ってから咳が始まり、それが数日間続くことがあります。この場合、食事との関連に気づきにくく、「風邪が長引いている」と思い込んでしまうこともあります。

特定の食品を食べた後に決まって咳が続く場合は、遅延型の食物アレルギーを疑ってみる必要があるでしょう。

◆『アレルギーと喘息について』について>>

【参考情報】『食物アレルギー』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/food_allergy.html

4. 食品添加物や加工食品が咳の原因になることも

食物アレルギーというと、卵や牛乳、小麦などの食材そのものを思い浮かべる方が多いですが、実は食品添加物や加工食品に含まれる成分が咳の原因になることもあります。

4-1. 亜硫酸塩(保存料)による反応

ワインやドライフルーツ、加工食品に含まれる亜硫酸塩という保存料は、喘息や咳を悪化させることが知られています。特に喘息を持っている方では、亜硫酸塩に敏感に反応することがあり、咳き込みや呼吸困難を引き起こすことがあります。

ワインを飲んだ後に咳が出る、ドライフルーツを食べると喉が苦しくなる、といった症状がある場合は、亜硫酸塩が原因かもしれません。

4-2. ヒスタミンを含む食品

食品自体にヒスタミンが含まれている場合、アレルギー反応に似た症状が起こることがあります。これを「仮性アレルゲン」と呼びます。

ヒスタミンを多く含む食品には、以下のようなものがあります。

・発酵食品(チーズ、味噌、キムチなど)
・魚の干物や缶詰
・トマト、ほうれん草
・チョコレート

これらの食品を大量に摂取すると、アレルギー反応がなくてもヒスタミンの作用によって咳や喉の症状が出ることがあります。

4-3. 人工甘味料や着色料

人工甘味料や着色料などの食品添加物も、一部の方には咳や喘息症状を引き起こすことがあります。特に、タートラジン(黄色4号)などのアゾ系色素は、喘息患者の症状を悪化させることが報告されています。

加工食品やお菓子、清涼飲料水を摂取した後に咳が出る場合は、これらの添加物が原因の可能性も考えられます。

5. 食事日記と医療受診の準備

食物アレルギーが原因で咳が続いている可能性がある場合、まずは日々の食事と症状の関係を知ることが重要です。

自己判断で食品を除去してしまうと栄養バランスの偏りや診断の混乱につながるため、正しい手順で情報を整理し、医療機関で相談できるよう準備をしていきましょう。

5-1. 食事日記のつけ方

食事日記は、毎日の食事内容と症状の経過を記録することで、食物と症状の関連性を把握するための重要なツールです。

<記録する項目の例>

・日時
・食べた物(できる限り詳しく)
・食べた量
・症状の有無と程度(咳、喉のかゆみ、鼻水、じんましんなど)
・症状が出た時間と持続時間

最低でも 2週間〜1か月 記録すると、パターンが見えてくることがあります。写真付きで記録できるスマートフォンアプリを利用すると便利です。

◆『アトピー咳嗽の症状や検査、治療について』について>>

5-2. 食事日記をもとに受診の準備

食事日記を続けていると、「特定の食品を食べたあとに咳が出やすい」などの傾向が見えることがあります。

ただし、個人で食品を除去したり、負荷試験を行うことは推奨されません。特にアレルギーが疑われる場合、誤った自己判断は症状の悪化や重篤な反応につながることがあります。

医療機関を受診する際は、次のような情報をまとめておくと診断の助けになります。

・症状が現れた日時と状況
・症状が出たときに食べていた食品
・症状の具体的な内容(咳、喉の違和感、皮膚症状など)
・生活環境や体調の変化

これらを医師に提示することで、診断の精度が高まり、適切な検査や治療につながります。

◆『喘息と症状が似ている病気。呼吸器内科を受診しよう』について>>

5-3. 医師による診断と治療

食物アレルギーが疑われる場合、診断は必ず医師の管理下で行うことが重要です。

医療機関では状況に応じて以下の検査が行われます。

・血液検査(特異的IgE抗体検査)
・皮膚テスト(プリックテストなど)
・医師管理下で安全に行う食物負荷試験

これらの結果を総合して、アレルゲンの特定や治療方針が決定されます。

必要に応じて、咳や呼吸症状への対策や、生活上の注意点についてもアドバイスが受けられます。

5-4. 受診のタイミング

以下のような場合は、早めに医療機関(呼吸器内科・アレルギー科)を受診してください。

・呼吸困難や喘鳴(ゼーゼー)がある
・全身のじんましんや顔の腫れなどを伴う
・症状が繰り返し起こる
・原因となる食品の見当がつかない
・小児の場合、症状が読み取りづらく判断が難しい

早期に受診することで、適切な検査と治療につながり、症状の悪化を防ぐことができます。

◆『長引く咳がつらい!予防、対策をしよう!』について>>

【参考情報】『食物アレルギー診療ガイドライン2021』日本小児アレルギー学会
https://www.jspaci.jp/guide2021/

【参考情報】『Food Allergy』National Institute of Allergy and Infectious Diseases
https://www.niaid.nih.gov/diseases-conditions/food-allergy

6. おわりに

食事の後に咳が出る、喉がイガイガするといった症状は、食物アレルギーが原因かもしれません。

即時型と遅延型の反応があり、食品そのものだけでなく添加物が原因になることもあります。まずは食事日記をつけて、ご自身の症状と食事の関連を観察してみましょう。

原因食品が特定できれば、それを避けることで症状を改善できます。

ただし、呼吸困難など症状が強い場合や、原因がはっきりしない場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

適切な診断と対策で、快適な食生活を取り戻しましょう。

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