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合併しやすい、喘息と鼻炎について

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

喘息と鼻炎はどちらもアレルギーと深く関係する病気であり、このふたつを同時に発症している方も多くいます。

喘息を持つ方の80%が鼻炎の症状も抱えているとのデータもあり、その関係性について気になる方も多いでしょう。

今回の記事では、喘息と鼻炎の特徴やその関連性について詳しく解説します。

どちらの症状も適切に管理することがポイントです。両方の症状にお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

1.そもそも「喘息」とは?


喘息とは、気道に慢性的な炎症が起こっている状態で、少しの刺激で以下のような症状が出やすくなっています。

・咳
・痰
・息苦しさ
・ヒューヒュー・ゼーゼーとした喘鳴(ぜんめい)
・のどの違和感

アレルゲン(花粉やダニなど)、運動、気温の変化などの刺激に敏感に反応して気道が狭くなるため、発作的な症状があらわれます。

喘息の治療には、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬、減感作療法が用いられ、症状が重い場合は経口ステロイドや生物学的製剤(ゾレアなどの注射製剤)を使用することもあります。

喘息の治療は、根気よく継続した治療が大切です。

喘息にはタイプがあり、大きく分けて「アレルギー性喘息」と「非アレルギー性喘息」があります。

◆『喘息』について詳しく>>

【アレルギー性喘息】
アレルギー性喘息とは、花粉やダニ、カビ、ペットの毛などのアレルゲンによって発症するタイプの喘息です。

特に小児喘息の多くがこのタイプに分類されます。アレルギー体質の人は、鼻炎やアトピー性皮膚炎も併発しやすい傾向です。

◆『喘息とアレルギー』について詳しく>>

◆『喘息とペット』について詳しく>>

【非アレルギー性喘息】
非アレルギー性喘息とは、アレルギーとは関連がなく、ウイルス感染やストレス、寒暖差などが原因で起こるタイプの喘息です。

大人になってから発症することが多く、アレルギー検査をしても特定のアレルゲンが見つからない場合が多いです。

風邪を引いた後に長引く咳が続く場合、非アレルギー性喘息の可能性があるでしょう。

【参考情報】『ぜん息とは』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/index.html

【参考文献】”Asthma” by MayoClinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

◆『季節の変わり目の喘息予防』について詳しく>>

2.そもそも「鼻炎」とは?


鼻炎とは、鼻の粘膜が炎症を起こし、以下のような症状を引き起こす病気です。

・くしゃみ
・鼻水
・鼻づまり

鼻炎の治療は、鼻炎の治療には、抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド薬、アレルゲン免疫療法などが用いられます。

鼻炎は大きく「アレルギー性鼻炎」と「非アレルギー性鼻炎」の2つのタイプに分けられます。

【アレルギー性鼻炎】
アレルギー性鼻炎は、アレルゲンが引き金となって発症する鼻炎です。季節性アレルギーと通年性アレルギーがあります。

季節性アレルギーとは、特定の時期にアレルギー症状があらわれます。代表的なものは、春のスギ花粉や秋のブタクサ花粉などです。

通年性アレルギーとは、ダニやハウスダスト、ペットの毛などが原因で起こるアレルギーです。

特に、季節性アレルギー性鼻炎は多くの人に見られます。

【参考文献】”Allergic Rhinitis (Hay Fever)” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8622-allergic-rhinitis-hay-fever

【非アレルギー性鼻炎】
非アレルギー性鼻炎とは、アレルギーとは関連がなく発症する鼻炎です。アレルギーを調べてもアレルゲンが断定できず、原因がはっきりしない鼻炎です。

代表的なものに、「血管運動性鼻炎」と「薬剤性鼻炎」があります。

血管運動性鼻炎は、環境の変化が自律神経に影響することが原因で鼻の粘膜が腫れ、症状があらわれます。

原因となるものとして、寒暖差や強い香り、ストレス、妊娠、アルコール摂取などさまざまです。寒暖差が原因の場合、寒暖差アレルギーとも呼ばれています。

「暖かいところから寒いところへ行くと鼻炎症状が出る」「飲酒すると鼻が詰まる」などの症状がある方は、非アレルギー性鼻炎の可能性が高いでしょう。

薬剤性鼻炎とは、血管収縮剤が含まれる点鼻薬を長期間使用し続けることが原因で発症します。

薬を連用したことが原因で効果が薄れ、逆に強い鼻炎症状があらわれるようになります。

【参考文献】”Nonallergic rhinitis” by MayoClinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/nonallergic-rhinitis/symptoms-causes/syc-20351229

3.密接に関係する喘息と鼻炎


喘息と鼻炎は、それぞれ異なる病気ですが、以下のような密接な関係があります。

・同じアレルゲンで発症し合併することがある
・どちらも繋がった器官の病気
・鼻づまりによる口呼吸が喘息に影響

気道は上気道と下気道に分かれていますが、ひとつの器官であり繋がっています。鼻炎は上気道の炎症、喘息は下気道の炎症が原因です。

そのため、喘息と鼻炎は合併しやすく、鼻炎が喘息を悪化させることが知られています。

これらについて詳しく解説します。

3-1.同じアレルゲンで発症し合併することがある

喘息と鼻炎は、同じアレルゲンによって発症することが多く、気道の炎症と鼻腔の炎症の両方の症状があらわれるケースがあります。

例えば、花粉にアレルギーがある人が花粉飛散時期に、鼻腔でアレルギー反応を起こして鼻炎の症状が出るだけでなく、喘息の症状が悪化することがあります。

また、ダニやハウスダストなどのアレルゲンに反応する場合、一年を通して鼻炎や喘息の症状が続くことがあります。

アレルギー性の鼻炎と喘息を併発している人は、アレルゲンの除去対策が重要です。

3-2.どちらも繋がった器官の病気

空気の通り道である鼻腔と気道は繋がっており、鼻の粘膜が炎症を起こすと、気道の粘膜にも影響を及ぼします。

そのため、鼻炎が悪化すると気道が敏感になり、喘息の発作を引き起こす可能性があります。特に、慢性的な鼻づまりは喘息の悪化を招く要因となります。

このように、鼻炎と喘息はお互いに影響し合う病気であるため、どちらか一方だけを治療するのではなく、両方を適切に管理することが大切です。

3-3.鼻づまりによる口呼吸が喘息に影響

鼻炎による鼻づまりが続き、口呼吸が習慣化すると喘息にとって悪影響です。

鼻は空気を加湿し、異物を除去するフィルターの役割を持っています。

しかし、口呼吸ではこの機能が働かず、乾燥した冷たい空気やホコリ、アレルゲンを直接吸い込むことになります。

その結果、気道が刺激されやすくなり、喘息の発作を引き起こす可能性が高まるのです。

また、口呼吸を続けるとのどが乾燥し、細菌やウイルスの感染リスクも高まります。

これにより気道の炎症が悪化し、喘息の症状をさらに悪化させることに繋がります。

鼻炎を適切に治療し、鼻呼吸を維持することが喘息の管理にも重要です。

4.どちらも合併している際は、両方とも治療を!


喘息と鼻炎は密接に関係しており、どちらかの症状が悪化するともう一方にも影響を及ぼします。

鼻炎の治療により喘息症状が改善される可能性があり、また喘息の治療をすると、鼻炎の症状が改善する可能性があることがわかっています。

そのため、どちらも合併している場合は、片方だけではなく両方の病気を同時に治療することが重要です。

どちらもアレルギーが関係している場合には、アレルゲンの除去や環境整備が共通して重要といえるでしょう。

こまめに掃除を行い、室内のホコリやダニを減らすこと、適切な湿度管理を行うことなどは、喘息と鼻炎、両方の予防と改善につながります。

◆『乾燥対策』について詳しく>>

4-1.「アレルゲン免疫療法」について

アレルゲン免疫療法は、アレルギー性鼻炎の治療法の一つであり、スギ花粉症やダニアレルギーによる鼻炎治療を目的に行われます。

治療効果は、スギ花粉とダニのみで、そのほかのアレルギーには効果がありません。

治療は舌下免疫療法と皮下免疫療法があります。

【舌下免疫療法】
舌下免疫療法は、舌の下に錠剤を投与する方法です。少量のアレルゲンを摂取し続けることで、体を慣らしていきます。

5歳から高齢者まで幅広い年齢の方が受けることができ、皮下免疫療法に比べ痛みや副作用が少ないのが特徴です。

効果が出るまでに時間がかかるため、3年から5年といった長期間の継続が必要です。また、自宅で毎日舌下投与するため、自己管理が大切になります。

【皮下免疫療法】
皮下免疫療法は、皮下にアレルゲンを注射する方法です。徐々にアレルゲンの量を増やしていき、体を慣らしていきます。

定期的な皮下注射が必要なため、治療開始初期は通院回数が多いですが、徐々に通院期間を延ばすことが可能です。

この治療法も3年以上の治療期間が必要です。

また、副作用として、注射した部位の腫れや発疹などの報告もされています。

【参考情報】『アレルゲン免疫療法の現状と展望』日本内科学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/5/109_995/_pdf

4-2.注射薬「ゾレア」を用いる治療

注射薬「ゾレア」は、IgE抗体とアレルゲンが結合する働きを弱める働きがあります。重症の季節性アレルギー性鼻炎・喘息・慢性蕁麻疹の治療に用いられる薬剤です。

ただし、ゾレアの治療を受けるには、以下の適用条件をすべて満たす必要があります。

・季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の既存治療を1週間以上行ったが効果が不十分
・血液中の総IgE値が30~1500IU/ml
・スギ花粉に対してアレルギー反応がある
・12歳以上で体重が20~150㎏内である

治療は2週間から4週間に1回の注射を行い、一定期間の継続が必要です。

投与量や投与間隔は、初回投与前の血清中総IgE濃度および体重に基づき決定されるため、患者さんごとに異なります。

日本では、2019年に保険適応になった比較的新しい治療法です。そのため、舌下免疫療法や皮下免疫療法に比べると治療費用が高くなる傾向です。

それにより、保険適用があるものの治療費の負担が大きいというデメリットがあります。治療を開始する前に費用面も含めて、医師としっかり相談することが重要です。

【参考情報】『最適使用推進ガイドライン オマリズマブ(遺伝子組換え)~季節性アレルギー性鼻炎~』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000565815.pdf

5.おわりに

喘息と鼻炎は密接に関係しており、どちらか一方の症状が悪化すると、もう一方にも影響を及ぼします。

そのため、喘息と鼻炎を同時に合併している場合は、どちらかだけを治療するのではなく、両方の症状を適切に管理することが大切です。

症状をしっかりコントロールすることで、快適な生活を送ることができます。

アレルゲン免疫療法やゾレアなどの治療法も選択肢の一つですが、まずは日常生活の環境を整え、症状を悪化させる原因を減らすことも大切です。

喘息と鼻炎の症状が気になる方は、早めに医師に相談し、適切な治療を受けましょう。

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