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喘息とストレスの関係

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

意外かもしれませんが、喘息とストレスには深い関係があります。ストレスは喘息の発症や悪化を引き起こす原因となり得るのです。

そのため、喘息の患者さんにとって、ストレスを管理することはとても大切です。

この記事では、ストレスが喘息に与える影響や、その仕組み、喘息患者さんにおすすめのストレス対処法についてご説明いたします。

ストレスと上手く付き合いながら、喘息症状をコントロールする方法を身につけましょう。

1. ストレスについて


ストレスとは、私たちのからだや心に負荷をかける外部からの刺激や、それに対するからだの反応のことです。

日常生活のなかで、私たちはさまざまなストレスにさらされています。ストレスの原因となる要因は「ストレッサー」と呼ばれ、環境の変化、人間関係、仕事の負担、経済的問題など、多岐にわたります。

ストレスを感じると、体内ではストレスホルモンが分泌され、心拍数の上昇や血圧の上昇、呼吸の変化などの生理的反応が起こります。

これらの反応は、本来、危険な状況に対処するためにからだが働く自然な仕組みですが、長い間ストレスが続くと、心やからだの健康に悪い影響を与えることがあります。

<参考文献>”Stress” byMENTALHEALTH FOUNDATION
https://www.mentalhealth.org.uk/about-us

2. 悪いことだけがストレスではない


ストレスというと、否定的な出来事や感情を思い浮かべがちですが、実は楽しいことや嬉しいことといった良い出来事もストレスの要因となることがあります。

これは「良性ストレス」または「ユーストレス」と呼ばれています。

たとえば、結婚式や出産、昇進、旅行など、人生の喜ばしい出来事もからだに大きな変化をもたらし、ストレス反応を引き起こす可能性があります。

これらの出来事は通常ポジティブな感情を伴いますが、同時に身体的・精神的な負荷も増大させるのです。

具体的な例として、以下のようなものがあります。

・結婚式の準備:喜ばしい出来事ですが、計画や調整に多大な時間とエネルギーを要します。

・昇進:キャリアの前進は嬉しいことですが、新しい責任や期待のプレッシャーも伴います。

・大切な人との再会:楽しみな出来事ですが、準備や予定の調整などで心身に負荷がかかることがあります。

・休暇や旅行:リラックスするための時間ですが、計画立てや移動のストレスが生じることもあります。

これらの良性ストレスも、過度になるとからだに負担をかけ、喘息患者さんの場合は症状を悪化させる可能性があります。

3. どんなストレスが喘息を悪化させるのか


喘息を悪化させるストレスには、さまざまな種類があります。ここからは、喘息を持つ方がとくに気をつけたいストレスの具体的な例をご紹介しましょう。

・仕事や学業のプレッシャー

締め切りに追われる、過度な責任を負う、試験勉強などによるストレスは、喘息症状を悪化させる可能性があります。

・人間関係の問題

家族や友人、同僚との対立や緊張関係は、強いストレスを引き起こし、喘息に影響を与えることがあります。

・経済的な不安

金銭的な問題や将来の経済的不安は、慢性的なストレスの原因となり、喘息の管理を難しくする可能性があります。

・生活環境の変化

引っ越しや転職、家族構成の変化など、生活の大きな変化は適応のためのストレスを生み出し、喘息症状に影響を与えることがあります。

・健康上の問題

喘息以外の健康問題や、家族の健康に関する心配事も、ストレスとなって喘息を悪化させる可能性があります。

・自然災害や事故

予期せぬ災害や事故は、強い精神的ストレスを引き起こし、喘息症状を悪化させる可能性があります。

・睡眠不足

十分な睡眠が取れないことは、からだにストレスを与え、喘息症状の悪化につながることがあります。

・過度な運動

適度な運動は健康に良い影響を与えますが、運動をやりすぎるとからだに負担がかかり、喘息発作を引き起こすことがあります。

これらのストレスは、単独で起こる場合もありますが、多くの場合、いくつかのストレスが重なり合って喘息の症状に影響を及ぼします。

そのため、日常生活の中でご自分にとってのストレスの原因を把握し、適切に対処することが大切です。

◆『喘息とはどんな症状?』について>>

◆『喘息と運動』について>>

【参照文献】日本呼吸器学会『喘息と精神・ストレス』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/67/9/67_1269/_pdf/-char/ja

4. どんな仕組みでストレスが喘息を悪化させるのか


ストレスが喘息を悪化させる仕組み(メカニズム)は複雑で、まだ完全には解明されていませんが、主に以下のような経路が考えられています。

1. ストレスホルモンの影響
ストレスを感じると、体内でコルチゾールやアドレナリンといったストレスホルモンが分泌されます。
これらのホルモンは短期的にはからだを守る働きをしますが、長期間にわたって分泌量が多いままの状態が続くと、以下のような影響を及ぼすことがあります。
・免疫系のバランスを崩す:炎症がコントロールできなくなり、気道の炎症が悪化する。
・気道過敏性の増加:喘息症状を引き起こしやすくなる。

2. 自律神経系の乱れ
ストレスは自律神経系のバランスを崩します。とくに、交感神経が優位になることで、気管支が収縮しやすくなり、呼吸が困難になるため喘息症状が現れやすくなります。

3. 免疫系への影響

慢性的なストレスは免疫系の機能を低下させ、気道の炎症を悪化させる可能性があります。また、アレルギー反応を強める効果もあり、アレルギー性喘息の症状を悪化させることがあります。

4. 呼吸パターンの変化

ストレスを感じると、呼吸が浅くなり速くなる傾向があります。このような呼吸パターンの変化は、気道に負担をかけ喘息症状を誘発したり悪化させたりすることがあります。

5. 行動への影響

ストレスは、生活習慣や行動にも影響を及ぼします。喫煙や飲酒といった不健康な行動を増加させたり、規則正しい生活や適切な薬の服用といった健康的な行動を妨げたりすることがあります。

これらの行動の変化が、間接的に喘息症状を悪化させる可能性があります。

6. 炎症性物質の増加

ストレスにより、体内でサイトカインなどの炎症性物質の分泌が増します。これが気道の炎症を悪化させ、喘息症状を増幅させる可能性があります。

以上のような要因は単独ではなく、互いに影響し合いながら喘息の症状を悪化させます。

〈参考文献〉”Stress and asthma” by Asthma+ Lung UK
https://www.asthmaandlung.org.uk/conditions/asthma/asthma-triggers/stress

5. とくに大人の喘息はストレスに要注意


喘息は慢性疾患であり、大人の患者さんにとっては、身体的な症状だけでなく、日常生活や心理的な側面に大きな影響を及ぼします。
とくに、大人の喘息患者さんはお子さまと比べて、より複雑でさまざまなストレス要因に直面する傾向があります。
以下のようなストレス要因は、喘息症状を直接悪化させるだけでなく、適切な管理を困難にする可能性があります。

大人の喘息患者さんが直面する主なストレス要因

・仕事関連のストレス
職場での責任や役割の増加、厳しい締め切り、複雑な人間関係などが強い心理的負担を与えることがあります。
職場環境における空気質やアレルゲン(例えば粉塵や化学物質)の影響も、喘息の患者さんにとって重大な問題となります。
・家庭生活のストレス
育児や介護、家事などの役割を担うことは、肉体的・精神的負担を増大させる可能性があります。また、家庭内の人間関係の摩擦やサポート不足も、心理的ストレスを悪化させる要因となります。
・経済的なストレス
医療費や生活費の増加、収入の減少に対する不安などが挙げられます。とくに、喘息が原因で仕事を休む必要がある場合、収入の減少がさらなる負担となる可能性があります。
薬剤や定期的な医療費が経済的プレッシャーとなり、必要な治療を中断するリスクもあります。
・健康上の不安
喘息以外の合併症や加齢に伴う体力の低下が、患者さんにさらなる不安をもたらすことがあります。また、喘息のコントロールが困難な場合、その不安がさらに悪循環を生む可能性があります。
一方で、ご自身の健康状態に対する認識が低い場合、病状の悪化に気づかず対処が遅れることもあります。
・社会的なプレッシャー
周囲の期待に応えるため、無理をして仕事や活動を続けようとすることが、喘息の悪化につながることがあります。
大人の喘息患者さんが抱えるストレスは、単に心理的な影響を与えるだけでなく、以下のように喘息管理に直接的な影響を及ぼします。
・薬物療法の継続が困難になる:ストレスの多い状況では、薬の服用を忘れたり、定期的な通院を怠ったりするリスクが高まります。
・健康的な生活習慣の維持が難しくなる:ストレスが原因で、睡眠不足や不健康な食生活、運動不足が悪化し、喘息管理に悪影響を及ぼします。
・心理的ストレスが症状を悪化させる:ストレスは喘息症状を誘発するトリガーとなり、発作の頻度や重症度を増加させる可能性があります。
そのため、大人の喘息患者さんはストレスを軽減し、症状を適切に管理するためには、以下のようなアプローチが有効です。

・認知行動療法
ストレスの原因を特定し、それに対処するスキルを身につけることで、喘息管理が向上することが示されています。
・リラクゼーション技術の活用
呼吸法、瞑想、ヨガなどのリラクゼーション方法は、ストレス軽減に役立ちます。
・社会的支援の活用
ご家族、ご友人、医療専門家とのコミュニケーションを深め、サポートを求めることが重要です。また、喘息患者さんとの交流会への参加も、心理的な安心感をもたらします。
・環境改善
生活環境や職場環境を見直し、喘息の要因を排除することが重要です。とくにアレルゲンや刺激物の管理が必要です。
・計画的な喘息管理
患者さんと医療チームが協力して患者さんそれぞれの管理計画を作成することで、ストレスの影響を最小限に抑えることができます。
これらの取り組みによりストレスと上手く付き合いながら喘息をコントロールすることは、長期的な喘息管理に大きな効果をもたらします。

〈参考文献〉”Stress” by mind
https://www.mind.org.uk/information-support/types-of-mental-health-problems/stress/causes-of-stress/

6. 生活習慣病にも気を付けよう


大人の喘息患者さんの場合、生活習慣病の悪化が喘息の悪化に直結することがあります。これは、生活習慣病とストレス、そして喘息が複雑に絡み合っているためです。

生活習慣病は、それ自体がストレスの原因となり得ます。また、からだの炎症状態を悪化させ、喘息の症状管理を難しくする可能性もあります。たとえば、以下のようなものです。

・肥満

過剰な体重は呼吸機能に負担をかけ、喘息症状を悪化させる可能性があります。また、脂肪組織から分泌される物質が全身の炎症を促進し、気道の炎症も悪化させる可能性があります。

・糖尿病

血糖値の変動は体内の炎症を引き起こし、喘息症状に影響を与える可能性があります。また、合併症として神経障害が起こると、咳反射が低下し、喘息発作時の対応が遅れる可能性があります。

・高血圧

高血圧は血管系に負担をかけ、間接的に喘息症状に影響を与える可能性があります。

そのため、喘息の管理と並行して生活習慣病の予防と管理にも注意を払うことが重要です。

以下に、生活習慣病予防と喘息管理を両立させるためのポイントをいくつかご紹介しましょう。

1. バランスの取れた食事
栄養バランスの良い食事は、喘息と生活習慣病の管理に有効です。オメガ3脂肪酸を含む魚や抗酸化物質を含む野菜・果物を摂り、塩分や糖分、飽和脂肪を控えましょう。
2. 適度な運動

体重管理や心肺機能の向上に役立つ運動は、喘息にも効果的です。ただし運動誘発性喘息に注意し、主治医に相談してから取り組みましょう。
3. 禁煙
喫煙は喘息症状を悪化させ、生活習慣病リスクも高めます。禁煙に積極的に取り組みましょう。
4. 適正体重の維持

肥満は喘息と生活習慣病を悪化させるため、適正体重の維持が重要です。
5. ストレス管理

ストレスは喘息と生活習慣病の悪化要因です。瞑想やヨガ、深呼吸法を取り入れましょう。
6. 質の良い睡眠
十分な睡眠は喘息の安定化と生活習慣病予防に効果的です。
7. 定期的な健康チェック
喘息と生活習慣病の検査を定期的に受け、早期発見・対応を心がけましょう。
8. 薬の適切な使用

喘息の治療薬と生活習慣病の治療薬を併用する場合、相互作用に注意が必要です。処方されたすべての薬について、医師や薬剤師に相談し、適切に使用することが重要です。
9. アルコール管理
飲酒は適度にしましょう。過度の摂取は喘息と生活習慣病を悪化させます。
10. 環境整備

アレルゲンを減らす環境作りで、喘息の引き金とストレスを軽減しましょう。
これらの取り組みを通じて、喘息と生活習慣病の両方をバランス良く管理することが可能です。
ただし、状況や症状は患者さんによって異なるため、具体的な方法については、必ず主治医と相談しながら進めていきましょう。

◆『喘息と肥満の関係』について>>

◆『タバコと喘息』について>>

◆『アルコール誘発喘息』について>>

7. 喘息の方にすすめるストレス発散方法や注意点


喘息患者さんにとって、適切なストレス発散方法を見つけることは、症状管理の重要な一部です。ここからは、喘息の方におすすめのストレス発散方法と、注意点をご紹介しましょう。

・リラクゼーション技法

深呼吸法で呼吸筋を鍛えつつリラックスする方法や、筋肉を緊張・弛緩させるプログレッシブ筋弛緩法が役立つ場合があります。

瞑想やマインドフルネスも心を落ち着けるために有効です。発作中ではなく、普段から練習を重ねましょう。

・軽度の運動

ウォーキングやヨガは心肺機能を高め、ストレス軽減に役立つ運動です。水中運動は関節に負担が少なく、喘息患者にも取り組みやすい選択肢といえます。
運動誘発性喘息が懸念される場合は、主治医に相談し、適切な予防策を講じましょう。

・創造的活動

絵画や音楽、ガーデニングはストレスを忘れる時間になります。アレルギーに注意しつつ、ご自分が楽しめる方法を選ぶとよいでしょう。

・社会的活動

ご家族やご友人との交流は心の支えになります。ボランティア活動で他者を助ける経験は、前向きな気持ちを育む機会となることがあります。無理のない範囲で取り組むのが大切です。

・趣味の時間

読書や映画鑑賞など、ご自分の好きなことに時間を使うことで気分をリフレッシュできます。日常に無理なく取り入れるのがポイントです。

・入浴

適度な温度での入浴は体を温め、リラックス効果が期待できます。湿気や温度変化に注意しながら楽しみましょう。

このようなストレス発散法は、ご自分に合うものを無理せず見つけましょう。新しい取り組みを始める際には、主治医に相談することが大切です。症状の変化に気を配りながら、少しずつ実践してみましょう。

〈参考文献〉”Stress & Asthma” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/9573-stress–asthma

8. おわりに

喘息はストレスと深く関連しており、管理には日々の工夫が大切です。ストレス発散方法を見つけ、健康的な生活を維持しましょう。主治医と相談しながら、無理せず継続することが重要です。

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