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咳を止める方法は?しつこい咳、長引く咳から疑われる病気と受診の目安を紹介

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

咳は、風邪やアレルギーなどさまざまな原因によって引き起こされる症状です。

ありふれた症状ではありますが、咳が激しかったり、長引いたりすると、睡眠不足や体力の低下を招き、日常生活に支障をきたす場合があります。

この記事では、咳の止め方や和らげ方、咳症状から疑われる病気について解説します。

受診の目安についても紹介しますので、咳でお困りの方はぜひ参考にしてください。

1.咳が出るのはなぜ


咳は、外から侵入してきた異物を追い出すために起こる生体防御反応です。

風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症や、花粉やハウスダストなどで引き起こされるアレルギーで、咳は出やすくなります。

これらの場合は、体内に侵入したウイルスや細菌、アレルゲンなどの異物を、体から追い出すために咳が出ます。

冷たい空気や乾燥した空気を吸った時にも、咳が出ることがあります。これらは、喉や気管支が刺激を受け、一時的に反応した結果です。

【参考文献】『成人の咳』MSDマニュアル 家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/07-%E8%82%BA%E3%81%A8%E6%B0%97%E9%81%93%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E6%88%90%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9B%E3%81%8D

【参考文献】❝how to stop coughing❞ by cleveland clinic
https://health.clevelandclinic.org/how-to-stop-coughing-at-night

2.咳が止まらない時に自分でできること


咳がなかなか止まらないと、つらく苦しいものです。そんな時に、自分でできるケアを紹介します。

2-1.部屋の加湿

空気が乾燥していると、咳が出やすくなるので、部屋を加湿してみましょう。湿度は、40〜60%程度に保つといいでしょう。

加湿器がなくても、簡単に部屋を加湿できる方法を紹介します。

・入浴後に浴室の扉を開けておく
・やかんや鍋でお湯を沸かす
・濡れたタオルや洗濯ものを干す
・グラスに水を入れて部屋に置く
・霧吹きで水をまく

加湿のし過ぎは、カビやダニが発生する原因となるので、適度な湿度を保つようにしましょう。

2-2.温かい飲み物を摂る

温かい飲み物を飲み、のどを潤すことも咳の対策として有効です。冷たい飲み物は喉を刺激するので避けましょう。

ハチミツは、咳を軽くするという研究報告があります。ホットドリンクにハチミツを混ぜると、のどを潤しながら咳を軽くする対策ができるので、試してみてください。

ここで簡単なハチミツドリンクを2つ紹介します。

ホットハチミツレモン ハチミツコーヒー
材料 熱湯コップ 1杯 ホットコーヒー コップ1/2
レモン汁 大さじ1杯 ホットミルク コップ1/2
ハチミツ 大さじ1杯 ハチミツ お好みの量
作り方 材料を混ぜるだけ 材料を混ぜるだけ

ホットハチミツレモンは、ビタミンCも摂れるのでおすすめです。また、ハチミツとコーヒーは相性がよく、鎮咳効果が報告されています。

ただし、1歳未満の乳児には、絶対にハチミツを与えないでください。1歳未満の乳児がハチミツを摂取すると、乳児ボツリヌス症を起こす危険性があります。

【参考文献】『「血糖値が上がりくい」「咳を抑える」 蜂蜜の機能性に期待高まる』山田養蜂場 健康科学研究所
https://www.bee-lab.jp/_common/dl/newsrelease/2012/201205_02.pdf

2-3.喉を温める

喉を温めることも、しつこい咳の対策として有効です。

首にマフラーやタオルなどを巻いて温めることで、気道や気道を通る空気が温められるため、咳が出にくくなります。

また、マスクの着用は咳エチケットだけでなく、喉を温め加湿の効果もあります。

3.咳で病院を受診する目安


自分でできる咳対策をしても状態が良くならない場合、受診が必要です。

咳で病院を受診する目安と、その理由を紹介します。

【参考文献】『特集 長引くせきにご用心!からだが発する「危険サイン」を見逃さない!』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/42/feature/feature02.htm

3-1.咳が2週間以上続いている

ウイルスが原因の風邪の場合、安静にしていれば自然と治りますが、細菌が原因の風邪の場合、抗生物質を使うことで治療が可能です。

しかし、2週間以上咳の症状が続いている場合、ただの風邪ではない可能性が高いため、医療機関を受診しましょう。

また、1週間目でも眠れないほどの激しい咳が続く場合には、風邪ではなく他の病気を疑う必要があります。

咳が2週間以上続く場合や、激しい咳で眠れない場合は、肺炎や初期の肺がん、結核などの重篤な病気が隠れているかもしれません。

3-2.咳のほか、息苦しさが強い

長引く咳と痰、強い息苦しさを感じるようなら要注意です。

風邪ではなく、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎などの病気が考えられます。

適切な治療が必要なため、医療機関を受診しましょう。

3-3.咳のほか、発熱があり倦怠感が強い

咳のほかに、発熱や倦怠感が強い場合、風邪以外にインフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの可能性が考えられます。

インフルエンザは風邪よりも感染力が強く、症状が急にあらわれ、頭痛や筋肉痛、関節痛などの症状も特徴です。

抗インフルエンザ薬を発症後48時間以内に服用すれば効果が期待できます。

新型コロナウイルス感染症は、症状が発熱や咳など一般的な風邪と症状が似ており見分けにくいです。

ほとんどが軽症ですが、一部重症化する場合があります。重症化すると呼吸困難をきたし人工呼吸器が必要になる場合もあります。

新型コロナウイルス感染症が疑われる場合、かかりつけ医や新型コロナ受診相談窓口に電話で相談してから受診しましょう。

3-4.咳とともに、血の混じった痰が出る

咳とともに痰に血が混じることを血痰といいます。血痰が出た場合、肺がんや肺結核などの重篤な病気の可能性があります。

病院での検査や治療が必要なため、早めの医療機関の受診をおすすめします。

4.呼吸器内科で行う、咳の原因を調べる検査


咳が長引く場合、咳の原因を調べておいた方が安心です。

ここでは呼吸器内科で行われる検査や、どのような呼吸器疾患が見つかるのか紹介します。

4-1.胸部画像検査

胸部画像検査は、レントゲン(単純X線検査)やCT、MRIなどの種類があります。

肺や心臓の疾患が疑われる場合、状態を確認するためにほぼ必ず行われる検査と言えます。

レントゲンやCTは、病変の有無の確認や鑑別ができ、MRIは病変の広がりや鑑別のため実施される検査です。

これらの検査では、肺炎や肺腫瘍、COPD、無気肺(肺の一部または全体が空気を失い、しぼんでしまった状態)、気胸(肺に穴が開いて空気が漏れ、肺が萎んでしまった状態)などの病気が分かります。

4-2.血液検査

血液を採取し、その血液を調べることで病気のリスクや診断をするために検査します。

以下は血液検査で分かることの一部です。

・アレルギーの有無やその原因
・炎症の有無と程度
・貧血
・栄養状態
・肝臓の異常
・腎臓の異常
・糖尿病

血液検査では、さまざまな病気や体の状態を知ることができます。

4-3.呼吸機能検査

呼吸機能検査は、肺や気道の状態や機能を調べるための検査です。スパイロメトリー、モストグラフなどがあります。

スパイロメトリーは大きく息を吸ったり吐いたりする必要がありますが、モストグラフは普通に呼吸をしたまま検査をすることができます。

肺気腫や気管支喘息、COPDなどの病気を調べるときに行う場合が多い検査です。

4-4.喀痰検査

喀痰検査は、痰の中の細菌や細胞を顕微鏡で調べる検査です。肺がんや肺結核、細菌性肺炎などの疑いがあるときに行います。

食べ物の残りカスが痰に混ざると、がん細胞と鑑別が難しくなるため、うがいをして口の中をきれいにしてから採痰します。

5.咳を予防するためにできること


咳が出やすい人にとって、咳を予防するための喉のケアは重要です。

ここでは日常でできる咳の予防方法を紹介します。

5-1.マスク着用

マスクの着用は、ウイルスや細菌の侵入を防ぐだけでなく、ほこりや冷気、アレルギーの原因物質も防ぎます。

また、口の中や喉の保湿にもなるため、乾燥対策にもおすすめです。

5-2.うがい

うがいは、病原体やほこり、アレルゲンなどの異物を粘液と一緒に取り除きます。

粘液の分泌や血行を良くし、喉の保湿にも効果があります。

帰宅したらうがいをする習慣をつけましょう。

5-3.禁煙

COPDのほとんどは喫煙が原因で発症します。また、受動喫煙で周囲の人の咳の原因になってしまうことがあります。

タバコに含まれる有害物質の吸入を止めると、咳が出にくくなります。タバコは百害あって一利なしです。ぜひ禁煙しましょう。

6.おわりに

咳が長引き止まらないときには、紹介した方法を試して、からだを休めるようにしましょう。

1週間以内に咳が治まれば、ひとまず安心です。

しかし、2週間以上咳が続く場合は、何かしらの呼吸器の病気が考えられます。喘息や咳喘息、COPDなどの病気は、市販薬では良くなりません。

咳が2週間以上続いている場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

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