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1週間以上咳がとまらない時はどうすればいい?

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

咳は、異物や感染からからだを守るための重要な防御反応です。

一方で、咳が1週間以上も続く場合、それは単なる風邪の延長ではなく、からだが発している重要な警告かもしれません。

「ずっと咳が止まらなくて心配」「なんとなく、良くならない」という思いを抱えている方も少なくないでしょう。

長引く咳の原因は、単なる風邪ではなく、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がん、結核などの深刻な病気が隠れている可能性があります。

このような疾患は、早期発見と治療が大切です。このため、「ただの咳」と放置せず、必要に応じて呼吸器内科を受診することが大切です。

この記事では長引く咳の原因と対処法をご紹介します。

1.1週間以上とまらない。咳が続くときに考えられる病気


咳が1週間以上続く場合には、どのような病気が考えられるでしょうか。ここからは、長引く原因となる病気についてご説明いたします。

1-1.咳が1週間以上続くのはなぜ?

咳はからだを守る重要な防御反応です。しかし、1週間以上も続く咳は、単なる風邪ではない可能性が高いと言えます。

咳の持続期間は、原因を推測するうえで重要な手がかりです。一般的に持続期間によって、咳は以下のように分類されます。

・急性咳嗽:3週間以内の咳

・遷延性咳嗽:3〜8週間続く咳

・慢性咳嗽:8週間以上続く咳

急性咳嗽の多くは風邪やインフルエンザなどのウイルス感染が原因です。一方で、3週間以上続く咳にはとくに注意が必要です。

長引く咳の原因には、さまざまな病気が考えられます。主なものとしては以下のような病気が原因です。

・気管支喘息
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・逆流性食道炎
・咳喘息
・アトピー咳嗽
・感染後咳嗽
・後鼻漏症候群

とくに自己判断で放置してはいけない理由は、重篤な病気が隠れている可能性があるからです。

たとえば、肺がん、肺結核、間質性肺炎などは、初期症状として長引く咳が現れることがあります。これらの病気は早期発見・早期治療が非常に重要です。

そのため、1週間以上咳が続く場合は、安易に自己判断せず、呼吸器内科をはじめとする専門医の診察を検討しましょう。

◆『喘息』について詳しく>>

◆『COPD』について詳しく>>

◆『肺がん』について詳しく>>

【参考文献】”Chronic cough” byMayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/chronic-cough/symptoms-causes/syc-20351575

1-2.その長引く咳は受診が必要かチェック!

長引く咳のなかには、すぐに受診が必要なものがあります。

以下のような症状がある場合は、風邪以外の病気の可能性を疑い、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

・咳とともに息切れや呼吸困難がある
・咳とともに胸痛がある
・咳とともに発熱が続く(38度以上で5日以上)
・痰に血が混じる
・夜間に咳が悪化する
・運動時に咳が悪化する
・寝ているときに咳で目が覚める
・咳が原因で日常生活に支障がある

【参考文献】”Cough Won’t Go Away? When To See A Doctor” by Franciscan HEALTH
https://www.franciscanhealth.org/community/blog/see-doctor-cough

また、以下のような状況で咳が出る場合も、アレルギーや職業性疾患などの可能性があるため、適切な専門医の診察を受けることを検討しましょう。

・季節の変わり目に咳が悪化する
・特定の場所(職場や自宅など)で咳が悪化する
・ペットを飼い始めてから咳が続く
・喫煙者や喫煙歴がある方の咳

これらの症状や状況に当てはまる方は、風邪以外の病気の可能性を考え、一度咳の原因を専門医に調べてもらうことが大切です。

早期発見・早期治療が、重篤な病気の予防や症状の改善につながります。

◆『アレルギーが原因の咳』について詳しく>>

【参照文献】厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業『感冒(かぜ)』
https://amr.ncgm.go.jp/pdf/190904_kanbo.pdf

【参考文献】”Are Allergies Causing Your Cough?” by Temple Health
https://www.templehealth.org/about/blog/allergies-vs-chronic-cough

2.1週間以上咳が止まらないときのNG行動


咳が1週間以上続いている場合では、適切な行動をとることが今後の症状に大きく関わってきます。

ここからは、おすすめしない行動についてご紹介しましょう。

2-1.市販で咳止め薬を購入し、服用する

咳が長引くと、多くの方が市販の咳止め薬を購入して服用しがちです。確かに、市販薬には一時的に症状を和らげる効果はありますが、長期間続く咳に対してはNG行動といえます。

なお、市販の咳止め薬には、主に以下のようなものがあります。

1.中枢性鎮咳薬(例:コデイン・ジヒドロコデイン)

中枢性鎮咳薬は脳の延髄にある「咳中枢」に直接作用し、咳反射を抑制します。

・主な特徴
強い咳を抑える効果があり、とくに夜間の激しい咳や原因不明の慢性的な咳に対して有効です。
・注意点
長期間の使用や過量投与により依存性が生じる可能性があります。また、眠気や便秘といった副作用が出る場合もあるため、医師の指示に従って慎重に使用する必要があります。

2. 末梢性鎮咳薬(例:デキストロメトルファン・ベンプロペリン)

のどや気管支の「咳受容体」に直接作用し、咳の刺激伝達を抑えます。

・主な特徴
中枢に影響を及ぼさないため、依存性や重い副作用のリスクが低いのが特徴です。軽度から中等度の咳に適しています。

・注意点
高用量で使用すると、めまいや軽い眠気を引き起こすことがあります。

3. 去痰薬(例:ブロムヘキシン・アンブロキソール・カルボシステイン)

痰をさらさらにして排出を促すことで、咳を楽にします。痰が絡む咳(湿性咳)に対して効果を発揮します。

・主な特徴
痰が多く出る気道感染症や慢性気管支炎などに使用され、気道の掃除を助けることで、結果的に咳の頻度を減らす作用があります。

・注意点
痰を効率よく排出するために、十分な水分補給が重要です。副作用は比較的少ないですが、稀に消化器症状(胃のむかつきなど)が現れることがあります。
これらの薬は、一時的に咳を抑えたり、痰を出しやすくしたりする効果はありますが、根本的な原因を治療するものではありません。

市販の咳止め薬は、主に以下のような方が使用することを想定しています。

・風邪やアレルギーによる一時的な咳
・症状が軽度で、数日程度で改善が見込める咳
・医師の診断を受けたうえで、補助的に使用する場合

そのため、1週間以上続く咳に対して市販薬を使い続けることには、以下のような問題があります。

・根本的な原因治療にならず、病気の進行を見逃す可能性がある
・症状を抑えることで、重要な診断の手がかりを隠してしまう
・長期使用による副作用のリスクがある
・適切な治療を受けるタイミングが遅れ、病状が悪化する恐れがある

たとえば、肺がんや結核などの重篤な疾患が隠れている場合、咳止め薬で症状を抑えてしまうと、早期発見・早期治療の機会を逃してしまう可能性があります。

したがって、1週間以上咳が続く場合は、自己判断で市販薬に頼るのではなく、呼吸器内科をはじめとする専門医の診察を受けることが重要です。

適切な診断と治療を受けることで、根本的な原因に対処し、早期回復につながります。

◆『市販薬と処方薬の違い』について詳しく>>

2‐2. 近くの一般内科に受診、通院する

長引く咳の場合、まず近くの一般内科を受診する方も多いでしょう。

一般内科は幅広い疾患に対応できる身近な医療機関として重要な役割があり、多くの場合、的確な診断と治療が受けられます。

しかし、場合によってはより専門的な診断や治療が必要になることもあります。一般内科受診のメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

・幅広い疾患に対応できる
・初期診療を迅速に行い、症状の原因を探るための第一歩となる
・必要に応じて専門医への紹介が受けられる

一般内科の医師は幅広い知識と経験を持ち、初期診療として咳の原因を探るうえで重要な役割を担っています。

しかし、咳の原因は多岐にわたり、場合によっては専門医の診断が不可欠となるケースもあります。

咳は、気管支喘息やCOPD、間質性肺炎といった呼吸器疾患だけでなく、逆流性食道炎や心臓病など、ほかの臓器の病気が原因であることもあります。

これらを正確に診断するには、高度な専門的知識や経験が必要です。

とくに以下のようなケースでは、呼吸器内科の専門医の診察を受けることが望ましいといえるでしょう。

・1週間以上咳が続く場合
・症状が改善しない、または悪化している場合
・呼吸困難や血痰がみられる場合

呼吸器内科では、専門的な検査や最新の診断技術を用いることで、より適切な診断と治療が可能になります。

また、長引く咳は、肺がんや結核などの重篤な疾患の初期症状である可能性もあります。これらの疾患は早期発見・早期治療がとても重要です。

したがって、一般内科での診察を受けたあとでも、症状が続く場合や医師の判断で必要とされる場合は、迷わず呼吸器内科の受診を検討しましょう。

次の章では、呼吸器内科の役割について詳しくご説明します。

3.咳が長引いていると感じたら早めに呼吸器内科へ


咳が1週間以上続く場合には、放置せず、早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。

ここまで見てきたとおり、咳はからだが発する重要なサインのひとつです。適切に対応することで、早期に原因を特定し、最善の治療を受けることができます。

咳が長引く場合に呼吸器内科を受診すべき理由として、以下のようなメリットがあります。

1. 専門的な診断を受けられる
 呼吸器内科の医師は、咳の原因について豊富な知識と経験を持っています。患者さんの症状や背景を総合的に判断し、適切な診断を行うことが可能です。

2.詳細な検査が可能
 最新の医療機器を用いた検査により、咳の原因を正確に特定することができます。自己判断では見逃しやすい原因も、専門医の診察と検査により明らかにすることが可能です。

3.的確な治療計画の立案
診断結果を基に最適な治療計画を立てます。薬物治療、生活指導、必要に応じたリハビリテーションまで、患者さん一人ひとりに合わせた治療をすることができます。

4.重篤な疾患の早期発見・早期治療
 咳が長引く原因には、重大な病気が隠れていることがあります。早期に受診することで、肺がんや間質性肺炎などの重篤な疾患を早期に発見し、治療を開始できる可能性が高まります。

5.幅広い疾患に対応可能
気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性疾患、感染症、アレルギー性疾患、悪性腫瘍まで、さまざまな咳の原因に対して適切な治療が可能です。

呼吸器内科では、咳の原因を特定するために、専門的な検査を多角的に行います。ここからは、実施される主な検査と検査の目的を詳しくご説明しましょう。

1. 胸部X線検査
胸部X線検査は、肺や気管支の状態を確認するための基本的な検査です。
X線画像を撮影することで、肺炎や気胸、肺がんなどの重大な疾患をはじめ、肺や気管支に異常がないかを調べます。症状の原因となる影や炎症の有無が分かるため、早期の異常発見に役立ちます。

2. 肺機能検査
肺機能検査では、肺の働きや呼吸能力を測定します。患者さんが息を吸ったり吐いたりする力や容量を確認することで、以下のような疾患の症状を診断します。
・気管支喘息:気道が狭くなることで起こる呼吸困難や咳。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD):肺の機能が低下することで起こる慢性の呼吸器の症状。
検査は簡単で、機器に息を吹き込むことで行うことができます。

3. 喀痰検査
痰を採取して調べる検査で、感染症や肺がんなどの診断に役立ちます。痰に含まれる細菌やウイルス、異常細胞を確認し、以下のような疾患を特定します。
・感染症(結核、細菌性肺炎など)
・腫瘍性疾患(肺がん)
とくに咳とともに痰が出る場合、この検査は重要です。

4. 血液検査
血液検査では、体内の炎症やアレルギー反応を確認します。具体的には、次のような項目を測定します。
・炎症マーカー:細菌やウイルス感染症の有無を評価。
・アレルギー関連指標:気管支喘息やアレルギー性疾患の可能性を確認。
また、血液中の酸素や二酸化炭素のレベルを調べることで、肺の機能をさらに詳しく評価します。

5. アレルギー検査
咳の原因がアレルギーに関連している場合は、アレルギー検査が有効です。血液や皮膚を使って特定のアレルゲン(ハウスダスト、花粉、動物の毛など)に対する反応を調べます。
アレルギー疾患が原因であるとわかることで、適切な環境の改善や治療を行えます。

6. CT検査
CT(コンピュータ断層撮影)は、通常のX線検査よりも詳細な画像を提供します。肺や気管支の構造を細部まで観察し、次のような疾患の診断に用いられます。
・肺がん:早期の小さな腫瘍も発見可能
・間質性肺炎:肺の組織そのものに起きる炎症を評価
・肺結核や膿瘍:通常のX線では見つけにくい病変を明確にする
検査は短時間で終了し、非侵襲的で体への負担が少ない点も利点です。

7. 気管支内視鏡検査
気管支内視鏡検査は、細いカメラを気管や気管支の内部に挿入し、直接観察する検査です。次のようなケースでとくに重要です。
・肺や気管支の内部に異常が疑われる場合。
・痰やCT検査で腫瘍や感染症が疑われる場合。
必要に応じて組織や細胞を採取し、病理検査を行うことで確定診断を行います。

これらの検査により、咳の原因が風邪のような一過性のものなのか、重大な疾患の兆候なのかを見極めることが可能です。早期に原因を特定し最適な治療を受けると、症状を改善することができるでしょう。

咳が長引いている場合、専門的な検査を受けることは、健康を守るための第一歩です。

「気になるけれど、まだ大丈夫」と放置せず、呼吸器内科で検査を受けましょう。咳が続くことで、次のような問題が生じる可能性があります。

・日常生活の質が低下し、仕事や学業に支障が出る
・家族や周囲の方へ感染症への不安や不快感を与えたり、心理的な負担をかけたりする可能性がある
・背後に隠れた重大な病気を見逃し治療のタイミングを逃す

このように咳が続くことで、日常生活に支障をきたしたり、周囲の方々に迷惑をかけたりすることもあるでしょう。「ただの咳だろう」と安易に考えず、1週間以上咳が続くときは、呼吸器内科への受診を検討しましょう。

◆『呼吸器内科を受診する目安』について詳しく>>

【参考文献】”Chronic Cough Symptoms and Diagnosis” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/chronic-cough/symptoms-diagnosis

4.おわりに

1週間以上続く咳は、決して軽視すべきではありません。単なる風邪だと思っていても、実は重大な病気が隠れている可能性があるからです。

長引く咳の原因には、気管支喘息やCOPDなどの慢性呼吸器疾患、肺がんや結核といった重篤な疾患まで、さまざまなものが考えられます。

このような状況で大切なのは、早めに原因を突き止め、適切な治療を受けることです。様子を見たりするのではなく、呼吸器内科専門医の受診を検討しましょう。

呼吸器内科では専門的な知識と経験を持つ医師が、最新の検査機器を用いて詳細な診断を行います。そして、結果に基づいて適切な治療計画を立て、効果的な治療をすることが可能です。

これにより、早期発見・早期治療が可能となり、より良い治療結果を得られる可能性が高くなります。

咳はからだからの重要なサインです。1週間以上続く咳があれば、自己判断で無視せず、専門医に相談することが大切です。

ご自分の健康を守るため、周囲の方への配慮のためにも、早めの受診を心がけることが大切です。適切な治療を受けることで、健康な日常生活を取り戻すことができるでしょう。

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