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天気・気候が喘息に影響を与える?

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

喘息は、気道に慢性的な炎症が起こることで呼吸が苦しくなる病気です。

喘息患者さんのなかには、天気や気候の変化によって症状が悪化することを経験されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

とくに、気温や湿度、気圧の変化、花粉やカビ、ダニといった環境要因が影響を与えることがよく知られています。

この記事では、天気や気候と喘息の密接な関係をご紹介します。

どのような対策を取れば症状が軽減でき、より快適に日常生活を送れるかについて把握しましょう。

天気の変化にうまく対処するための工夫を日常生活に取り入れて日々過ごすことが大切です。

1. 喘息と天気の関係


喘息の症状は、天気や気候の変化に敏感に反応することがあります。

気温や湿度、気圧の変動が、呼吸を苦しくさせたり、症状を悪化させたりすることがあり、不安に感じる方も多いかもしれません。

どんなときに症状がひどくなるのか、どう対処したらいいのか、少しでも安心して過ごせるように、ここから具体的な影響とその対策についてご説明いたします。

◆『喘息とはどんな病気か?症状・原因・治療方法を解説!』>>

1-1. 気温と湿度

喘息患者さんの多くは、気温や湿度の変化により症状が悪化する経験をされていると思います。

気温と湿度は、喘息の発作を引き起こしやすい重要な環境因子です。そのため、気温と湿度に対して対策を講じることが症状の管理に役立つと言えるでしょう。

◆『喘息の方は要チェック!喘息が悪化する要因』>>

まず、寒さが喘息に与える影響について見ていきましょう。

急に気温が下がると、喘息発作を引き起こしやすくなります。例えば、寒い空気を吸い込むと、気道が狭くなってしまい、息苦しさや咳が出ることがあります。

とくに、暖房の効いた室内から冬の寒い屋外に出るときは、気道が冷たい空気に敏感に反応しやすくなります。外出時には、ストールやマフラーなどで首元を温め、口元を覆って冷たい空気を直接吸い込まないようにすることが大切です。

また、外に出る前に、玄関や廊下などの温度が緩やかに変わる場所で少し体を慣らすことで、急な温度変化による気道への負担を減らすことができます。

一方で、暑い日も注意が必要です。極端な暑さは体力を奪い、脱水症状を引き起こすことで、喘息の症状が悪化しやすくなります。

暑い日にはこまめな水分補給を心がけ、できるだけ涼しい場所で過ごすことが重要です。
また、急な温度差も喘息に悪影響を与えることがあります。

冷房が効いた室内から暖かい外に出た際にも温度差によって気道が刺激されることがあります。冬の寒い屋外から暖房が効いた室内に急に入った場合も同様です。

【参考情報】 “Asthma” Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

次に湿度の影響についてです。

湿度が高くなると、空気中にカビやダニが増えやすくなります。これらは喘息の症状を悪化させるアレルゲンとして知られており、梅雨や夏場に湿度が高くなる時期には注意が必要です。

除湿機やエアコンを使って室内の湿度を適切に保つことで、アレルゲンの発生を抑えましょう。

また、湿度が高すぎると、空気が重たく感じられ、呼吸がしづらくなることもあるため、湿度管理を心がけることが大切です。

反対に、空気が乾燥すると気道が刺激されやすくなり、咳や喘鳴(呼吸時のゼーゼーヒューヒューする音)が出ることがあります。

とくに冬場の暖房やエアコンを使用した環境では乾燥が進むため、加湿器を使って適度な湿度を保つことが効果的です。

また、濡れタオルを部屋に干すなどして空気を潤す工夫も、症状の悪化を防ぐ助けになります。

気温や湿度の変化は予想以上に喘息に影響を与えることが多いですが、日常生活の中で適切な対策を取り入れることで、症状を和らげることが可能です。

ご自分に合った方法を見つけ、無理のない範囲で実践すると、快適な生活を送ることができるでしょう。ぜひ、こうした工夫を日々の生活に取り入れてみてください。

1-2. 気圧

喘息は気圧の変化に敏感に反応することがあり、とくに低気圧が接近すると症状が悪化しやすいことが知られています。

低気圧が近づくと、自律神経系に影響を与えることがあります。自律神経系とは、体の様々な機能を自動的にコントロールしている神経のことです。

自律神経系のバランスが乱れるとストレスを感じやすくなり、喘息の症状が悪化しやすくなるのです。このため、低気圧が来る前に体調が悪くなったり、呼吸がしづらくなったりする方も多いかもしれません。

とくに台風が近づくときは注意が必要です。

台風は急激な気圧の変化があり気圧の変動を引き起こすため、喘息発作を引き起こすことがあります。

さらに、季節の変わり目、秋や梅雨の時期も気圧や気温が大きく変化するため、喘息を持っている方にとっては注意が必要な時期です。

◆『季節の変わり目は喘息予防!』>>

これらの時期には気圧の変化に加え、湿度や温度も変動しやすく、気道を刺激して喘息発作を引き起こすことがあります。

気圧が変わる時期や台風の接近時には、天気予報をチェックしながら、体調の変化に敏感になり、必要に応じて予防的な対応を取ることが大切です。

また、気圧の変化は日常の天気だけでなく、登山やスキューバダイビング、飛行機での移動中にも起こります。

登山の場合、ゆっくりとした登り降りによる気圧変化は大きな問題にはなりにくいですが、運動そのものが刺激となり、喘息症状を引き起こすことがあります。

一方、スキューバダイビングや飛行機の利用時は、急激な気圧の変化が発生するため、喘息の症状が不安定な方はとくに注意が必要です。

もし、登山やダイビング、飛行機での旅行を計画している場合は、まずは喘息の状態を薬でしっかりコントロールすることが大切です。

医師に相談しながら、症状が安定していることを確認してから、これらの活動を楽しむようにしましょう。

◆『喘息の人が旅行で注意するべきポイント』>>

1-3. 風など

強い風は、花粉やほこりなどの粒子状物質を舞い上げ、喘息患者さんの呼吸器系に悪影響を与える可能性があります。

また、風向きによっては、大気汚染物質が運ばれてくることもあります。

大気汚染は喘息症状を悪化させる大きな要因の一つです。大気汚染警報が出ている日は外出を控えるほうがいいでしょう。

天気予報で風の強さや方向を確認し、必要に応じてマスクを着用したり、外出を控えたりすることで、症状の悪化を防ぐことができます。

【参照文献】環境再生保全機構『天気とぜん息の関係を知っておきましょう②』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202207_2/

2. 花粉症シーズンも要注意


花粉は、多くの喘息患者さんにとって重要な悪化因子です。とくに春先のスギ花粉や秋の雑草花粉の飛散時期には注意が必要です。

花粉症と喘息を併せ持つ方は、花粉が気道に入ることで喘息症状が悪化する可能性があります。

花粉症で鼻がつまったり、鼻水が出たりすると、喘息の症状をうまくコントロールするのが難しくなることがあります。鼻が詰まると、口呼吸になりやすく、気道に負担がかかるため、喘息の症状が悪化しやすくなるのです。

花粉症シーズン前に、かかりつけ医と相談して喘息のコントロール状態を確認し、必要に応じて治療計画を調整することが重要です。

例えば、花粉症の症状に対する抗ヒスタミン薬や鼻噴霧ステロイド薬の使用を検討したり、喘息の予防薬の用量を調整したりすることで、より効果的に症状をコントロールできる可能性があります。

また、花粉情報をこまめにチェックし、花粉の飛散量が多い日は外出を控えたり、外出時にはマスクや眼鏡を着用したりするなどの対策も有効です。帰宅後は、衣服や髪についた花粉を洗い流すことも大切です。

【参考情報】環境省『花粉症対策』
https://www.env.go.jp/content/000194676.pdf

3. 梅雨時期はカビ・ダニの発生に注意


梅雨の時期は湿度が高くなり、カビやダニが繁殖しやすくなるため、喘息の患者さんにとっては注意が必要な時期です。カビやダニは、喘息を悪化させる大きな要因のひとつです。

カビは湿った場所で増殖しやすく、カビの胞子が空気中に広がります。胞子を吸い込むと、気道に刺激を与え、喘息の症状を悪化させる可能性があります。

浴室や台所、押し入れなどの湿気がこもりやすい場所ではカビが発生しやすいため、定期的な掃除と換気をしっかりおこなうことが必要です。

また、ダニも湿気の多い環境で繁殖し、死骸やフンが喘息の発作を引き起こす原因となります。ダニは寝具やじゅうたん、ぬいぐるみに多く生息します。

梅雨の時期に気をつけるべき対策としては、室内の湿度を適切に管理することです。除湿機を使い、湿度を50〜60%に保つことでカビやダニの繁殖を抑えることができます。

寝室は、一日のなかでも長時間過ごす場所であり、夜間に呼吸がしづらくなることを防ぐためにも、湿度管理が非常に重要です。
また、天気の良い日は窓を開けて換気をし、こもった空気を入れ替えましょう。

定期的な掃除も効果的です。掃除機をかけるだけでなく、拭き掃除も行うことで、ダニやカビの増殖を防げます。寝具は、定期的に日光に当てたり、熱湯で洗うなどしてダニを撃退するよう心がけましょう。

さらに、防カビや防ダニの対策グッズを活用することもおすすめです。防カビスプレーや防ダニカバーを使用することで、繁殖を抑える手助けになります。

梅雨時期は洗濯物が乾きにくくなりますが、除湿機や扇風機を使って早めに乾かす工夫をしましょう。もし乾燥機がある場合は活用することで、さらに効果的に湿気を抑えることができます。

こうした対策を積み重ねることで、カビやダニの繁殖を防ぎ、喘息症状の悪化を予防することが可能です。日々の小さな工夫が快適な生活につながるため、できるところからぜひ取り入れてみてください。

4. 喘息患者さんが快適に過ごすための対策


喘息の症状をうまくコントロールし、より快適に過ごすためには、日常生活の中での工夫や対策が非常に大切です。

前述のとおり、気温や湿度、気圧、花粉やカビといった環境要因が、喘息症状を悪化させる要因になりますが、しっかりとした対策を講じることで、症状の悪化を防ぐことが可能です。

ここからは、天気や環境の変化に上手に対応し、喘息をコントロールするための具体的な対策をご紹介します。日々の生活に取り入れやすい工夫を見つけて、少しでも安心して過ごせるようにしていきましょう。

1.室内環境の整備
適切な温度と湿度を保ち、定期的に換気を行いましょう。空気清浄機の使用も効果的です。

2.アレルゲン対策
ハウスダスト、ペットの毛、カビなどのアレルゲンを減らすため、こまめな掃除を心がけましょう。

3.服薬管理
医師の指示通りに予防薬を使用し、症状が悪化したときのための発作治療薬を常に携帯しましょう。

4.天気予報のチェック
気温、湿度、気圧の変化や花粉情報をこまめにチェックし、必要に応じて対策を立てましょう。

5.適度な運動
喘息の症状が安定している場合、適度な運動は体力向上や呼吸機能の改善に役立ちます。
ただし、運動誘発性の喘息に注意が必要な場合もあるため、運動の種類や強度については医師に相談しましょう。

◆『運動がしたい!喘息患者が注意すべきこと』>>

6.ストレス管理
ストレスは喘息症状を悪化させることがあります。リラックス法や趣味の時間を持つなど、ストレス解消法を見つけましょう。

7.禁煙
喫煙は喘息症状を悪化させる大きな要因です。喫煙者の方は禁煙を心がけ、非喫の方の方も受動喫煙を避けましょう。

8.定期的な通院
症状がなくても定期的に通院し、喘息のコントロール状態を確認することが大切です。必要に応じて治療計画の調整を行うことで、より効果的な症状管理が可能になります。

これらの対策を日常生活に取り入れることで、喘息の症状をよりうまく管理できるようになり、快適に生活を送ることができるでしょう。

また、天気予報を活用することも有効な方法のひとつです。

現在、ウェブ上には「ぜんそく天気予報」というサービスがあり、その日のお天気や降水確率、気温、気圧の変化に加え、喘息症状の悪化指数などを確認することができます。

「ぜんそく天気予報」を利用すれば、その日のお天気や気温、気圧の変化に加えて、喘息の症状悪化に影響する要因を把握することができます。これにより、日々の気象条件とご自身の症状の関連性を理解しやすくなり、適切な対策を立てることできるでしょう。

また、喘息の悪化要因は人によって異なるため、どのような天気や環境で症状が悪化しやすいかを把握することが重要です。

そのためには、「ぜん息日記」を活用し、日々の天気と体調を記録することが効果的です。例えば、「台風の時に体調が悪化しやすい」など、天気と症状の関係を明確にすることができます。

以下の環境再生保全機構のリンクから、ダウンロードが可能です。

「ぜん息「日記」(成人用)」
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_17750.html

「まいにちげんきノート(小児用ぜん息日記)」
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_29820.html

日々の天気や体調を記録し、ご自分に合った対策を見つけることで、喘息症状をより効果的に管理することができるでしょう。

5. おわりに

天気や気候の変化は、喘息患者さんの症状に大きな影響を与える可能性があります。一方で、これらの環境要因は私たちの力ではコントロールすることができません。

そのため、天気や気候の変化に対する適切な対策を立てることが非常に重要です。

日々の天気予報をチェックし、気温や湿度の変化、花粉の飛散状況などを把握しておくことで、事前に対策を立てることができます。

また、室内環境の整備や適切な服薬管理、定期的な通院など、日常的な対策を継続することで、喘息症状のコントロールを改善することができるでしょう。

喘息は長期的な管理が必要な疾患ですが、適切な対策と治療を続けることで、症状をコントロールし、快適な日常生活を送ることが可能です。

天気や気候の変化に振り回されることなく、ご自分の体調と向き合い、主体的に喘息管理に取り組んでいくことが大切です。

かかりつけの医師とよく相談しながら、ご自分に合った対策や治療法を見つけていきましょう。

◆『喘息発作が起きたらどうする?段階別の対処法』>>

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