コロナのニンバス株とは?2025年最新の変異株情報を分かりやすく解説
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)
「コロナのニンバス株って何?」「また新しい変異株が出たけれど、どのくらい心配すればいいの?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
次々と登場する変異株の情報に、「結局どう対応すればいいのか分からない」と感じている方も少なくありません。
本記事では、現在注目されているコロナのニンバス株(NB.1.8.1)を中心に、変異株の基本的な仕組みや私たちが知っておくべきポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えします。
1. コロナのニンバス株とは?

ニンバス株(NB.1.8.1)は、2025年1月に初めて検出され、同年5月23日にWHO(世界保健機関)が「監視下の変異株(VUM=Variants Under Monitoring)」に指定した株です。
これは、すぐに危険と断定されているわけではありませんが、遺伝子の特徴や感染状況から「今後の動向を注意深く見守る必要がある」と判断されたものです。
1-1. どのように発見されたのか
新型コロナウイルスは、世界中でゲノム解析(遺伝子配列の調査)が行われています。
各国が検出したウイルスのデータを国際的に共有することで、新しい株の出現が素早く発見されます。
ニンバス株も、この国際的な監視体制の中で確認されました。
【参考情報】”CDC’s Role in Tracking Variants” by Centers for Disease Control and Prevention (U.S.)
https://www.cdc.gov/covid/php/variants/index.html
1-2. 日本でのコロナ・ニンバス株の広がり(2025年9月現在)
実は、コロナのニンバス株は現在、日本で最も多く見つかっている変異株になっています。2025年7月頃から急速に広がり、今では新しく見つかるコロナの約8割以上がこのニンバス株となっています。
「そんなに広がっているなら危険なのでは?」と思われるかもしれませんが、大切なのは「広がっている」ことと「危険性」は別だということです。
国立感染症研究所や厚生労働省が継続的に調べており、その結果は誰でも見ることができます。
◆「咳を引き起こすウイルスと感染を広げないために必要なこと」>>
【参考情報】『COVID-19の報告が増加!新学期の感染拡大に注意!』京都府 「感染症情報センター」
https://www.pref.kyoto.jp/idsc/old/2025natsuake.html
1-3. コロナ・ニンバス株の症状の特徴
コロナのニンバス株で最も特徴的なのはのどの強い痛みです。「カミソリで切られたような痛み」と表現されることもあるほど、従来の風邪とは違う強い痛みを感じる方が多いようです。
また、このニンバス株は「免疫をすり抜ける力」が従来のものより約2倍強いとされています。これは、過去にコロナにかかった方やワクチンを接種した方でも、再び感染する可能性があるということを意味します。
ただし重要なのは、「重症になりやすい」という報告は現時点でないということです。症状はつらくても、入院が必要になったり命に関わったりするリスクが特別に高いわけではありません。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(一般の方向け)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
2. ストラタス株との違いと共通点

ニンバス株と同じ時期に注目されているのが「ストラタス株」です。この2つの違いを見てみましょう。
2-1. ストラタス株って何?
ストラタス株(正式名称:XFG)も、ニンバス株と同じ2025年1月に見つかった変異株です。
最初に東南アジアで確認され、その後アメリカを中心に世界38の国と地域で見つかっています。
日本ではまだそれほど広がっていませんが、アメリカでは現在の主流になっているため、今後の動きに注意が必要な変異株です。
2-2. 症状の違いを比較してみよう
コロナのニンバス株の症状:
・のどの激しい痛み(「カミソリのような」と表現される)
・発熱
・咳
ストラタス株の症状:
・声がかすれる(声枯れ)
・乾いた咳
・軽い発熱
このように、同じコロナの変異株でも症状に違いがあることが分かります。
2-3. 広がり方の特徴
・コロナのニンバス株:日本や韓国など東アジアで多く見られる
・ストラタス株:アメリカやヨーロッパで多く見られる
変異株にも「地域性」があることが興味深いですね。
3. 変異株ってそもそも何?どうして生まれるの?

「なぜ次々と新しい変異株が現れるのか?」多くの方が抱くこの疑問について、できるだけ簡単に説明します。
3-1. ウイルスの「コピーミス」が変異のもと
コロナウイルスは、人に感染して増殖する時に自分のコピーを作ります。この時、まれに「コピーミス」が起こり、元のウイルスとは少し違った形のウイルスができあがります。これが「変異」です。
コロナウイルスは「RNAウイルス」という種類で、コピーする時にミスが起こりやすいという特徴があります。そのため、感染が広がるたびに小さな変異が無数に生まれています。
【参考文献】”Viral Genetics – Genetic Change in Viruses” by National Center for Biotechnology Information
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK8439/
3-2. 「生き残りやすい」変異が残る
生まれた変異の多くは意味のないもので、そのまま消えていきます。
しかし、中には「人にうつりやすい」「免疫から逃れやすい」といった特徴を持つものが現れることがあります。「新型コロナ」、「ニンバス株」、「ストラタス株」と次々と変異していく理由も納得できますね。
そのような変異は他の変異よりも「生き残りやすい」ため、だんだんと数を増やしていきます。これが新しい「変異株」として注目されるようになるのです。
◆「新型コロナは咳が出る?対処法や後遺症、受診の目安も解説」>>
3-3. 「混ざり合い」で新しい株が生まれることも
また、1人の人が複数の違う株に同時に感染した場合、それらが「混ざり合って」まったく新しい性質を持つ変異株が生まれることもあります。これを「再結合」といいます。
インフルエンザでも同じようなことが起こり、時には大きな流行の原因となることが知られています。
3-4. 変異は「当たり前のこと」
大切なのは、変異は決して特別なことではないということです。ウイルスにとっては生き延びるための自然な方法で、私たちが心配しすぎる必要はありません。
実際、これまでに数え切れないほどの小さな変異が生まれましたが、その大部分は私たちの生活に影響を与えることなく消えています。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の国内発生状況等について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html
4. 変異株を考える時の大切な4つのポイント

変異株について考える時、専門家が注目している4つのポイントがあります。難しい言葉を使わずに説明してみましょう。
4-1. 「うつりやすさ」について
1つ目は「人から人にどのくらいうつりやすいか」という点です。
うつりやすい株は短期間で多くの人に広がり、社会全体や医療現場に大きな負担をかけることがあります。
コロナのニンバス株やストラタス株は、どちらも比較的うつりやすい変異株とされています。そのため、基本的な感染対策(マスク、手洗い、換気)を続けることが大切です。
4-2. 「重症化のリスク」について
2つ目は「感染した時に重症になりやすいかどうか」です。過去には、デルタ株のように重症化しやすい変異株もありました。
幸い、コロナのニンバス株やストラタス株については、現時点で「特別に重症化しやすい」という報告はありません。
症状はつらくても、入院や重篤な状態になるリスクが特別に高いわけではないようです。
4-3. 「免疫をすり抜ける力」について
3つ目は「体の免疫をすり抜ける力があるかどうか」です。この力が強いと、過去に感染した人やワクチンを接種した人でも再び感染する可能性が高くなります。
コロナのニンバス株は、この「免疫をすり抜ける力」が従来のものより強いとされています。ただし、ワクチンが全く効かないわけではなく、重症化を防ぐ効果は保たれているとされています。
4-4. 「ワクチンの効き目」について
4つ目は「今あるワクチンがどのくらい効くか」という点です。変異株によってはワクチンの効果が下がることがありますが、完全に効かなくなることは稀(まれ)です。
現在のワクチンも、コロナのニンバス株やストラタス株に対して一定の効果があると考えられています。
特に重症化を防ぐ効果は保たれているため、「ワクチンを打っても意味がない」ということはありません。
【参考情報】『新型コロナワクチンの有効性・安全性について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_yuukousei_anzensei.html
5. 情報に振り回されないための心がけ

変異株の情報があふれる中で、どのように判断すれば良いか迷ってしまう方も多いでしょう。
5-1. 信頼できる情報を選ぼう
まず確認したい公的な情報源:
・厚生労働省のホームページ
・国立感染症研究所の発表
・日本呼吸器学会の見解
・WHOの公式情報
SNSやニュースサイトの断片的な情報だけで判断せず、必ず公的機関の正式な発表を確認する習慣をつけましょう。
5-2. 「監視段階」と「危険段階」を区別する
コロナのニンバス株やストラタス株は現在「監視段階」にあります。これは「要注意」ではありますが、「今すぐ大きな危険」というわけではありません。
過去にも多くの変異株が「監視段階」で終わり、大きな問題にならなかったケースがたくさんあります。
5-3. 基本的な対策を続けることが一番大切
複雑な情報に惑わされがちですが、実は一番効果的なのは基本的な感染対策を続けることです。
・体調が悪い時はマスクをする
・こまめに手を洗う
・部屋の空気を入れ替える
・人がたくさんいる場所では注意する
これらの対策は、コロナのニンバス株に対してもしっかりと効果があります。
【参考情報】『感染拡大防止へのご協力をお願いいたします』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku.html
5-4. こんな時は早めに病院へ
以下のような症状がある場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう
・発熱やのどの激しい痛みが続く
・2週間以上咳が止まらない
・息苦しさを感じる
・味やにおいが分からなくなった
「コロナのニンバス株かも?」と心配になった時も、まずは医療機関に相談することが大切です。
【参考情報】『感染症情報』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kiki_sonae.html
6. おわりに
コロナの新しい変異株は今後も出現しますが、すべてが生活に大きな影響を与えるわけではありません。
日本で多く検出されているニンバス株も監視段階にあり、特別に重症化リスクが高い報告はありません。
ストラタス株もWHOがリスクは低いと評価しています。大切なのは信頼できる公的機関の情報を基に冷静に判断し、基本的な感染対策を継続することです。
過度に心配せず、普段の生活を大切にしながら適切に注意を払っていきましょう。


