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インフルエンザと風邪の違いとは?受診タイミングと検査の受け方

医学博士 安齋 千恵子
(横浜日ノ出町呼吸器内科・内科クリニック院長)

急な発熱で「これは風邪?それともインフルエンザ?」と迷ったことはありませんか?

いつ病院に行けばいいのか、どんな検査を受ければいいのか、判断に困る方も多いでしょう。

この記事では、発症から受診、検査、療養までの具体的な流れを時間軸に沿って解説します。

適切なタイミングで行動できるよう、実践的な情報をお届けします。

1. 発症直後にまずやること


発熱や体調不良を感じたら、まず落ち着いて症状を観察することが大切です。

風邪とインフルエンザでは症状の出方や進行スピードが異なるため、その違いを知っておくと受診の判断がしやすくなります。

1-1. インフルエンザと風邪の症状の違い

インフルエンザと風邪は、どちらもウイルスによる感染症ですが、原因となるウイルスの種類や症状の現れ方に大きな違いがあります。

インフルエンザの特徴
・突然の高熱(38℃以上)が出ることが多い
・全身症状が強く現れる(関節痛、筋肉痛、頭痛、強いだるさ)
・発症が急激(数時間で症状が進む)
・咳や喉の痛みなどの呼吸器症状も伴う

【参考情報】『令和6年度インフルエンザQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2025.html#Q3

【参考情報】”Flu Symptoms & Complications” by Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
https://www.cdc.gov/flu/signs-symptoms/?CDC_AAref_Val=https://www.cdc.gov/flu/symptoms/symptoms.htm

風邪の特徴
・発熱は比較的軽度(37℃台〜38℃程度)、または発熱しないことも
・鼻水、鼻づまり、くしゃみ、喉の痛みなど局所症状が中心
・症状は徐々に進行する(1〜2日かけてゆっくり悪化)
・全身症状は軽い

1-2. 症状を記録する習慣をつける

症状に気づいたら、以下の項目をメモしておくと診察時に役立ちます。

・発症日時(いつから症状が出始めたか)
・体温の変化(測定時刻と温度を記録)
・具体的な症状(咳、鼻水、喉の痛み、頭痛、関節痛など)
・周囲の感染状況(家族や職場でインフルエンザが流行しているか)

スマートフォンのメモ機能や体温管理アプリを使うと便利です。

特に体温は朝・昼・夕方と複数回測定すると、熱の推移がわかりやすくなるでしょう。

1-3. 解熱鎮痛薬の使い方の注意点

発熱や痛みがつらいとき、市販の解熱鎮痛薬を使うこともあるでしょう。

ただし、インフルエンザの可能性がある場合は薬の選び方に注意が必要です。

使用できる成分
・アセトアミノフェン(カロナールなど)は安全性が高いとされています

避けるべき成分
・アスピリン(アセチルサリチル酸)
・ジクロフェナクナトリウム
・メフェナム酸

これらの成分は、インフルエンザ脳症との関連が指摘されており、インフルエンザが疑われる場合は使用を避けることが推奨されています。

特に小児(15歳未満)では使用しないことが原則とされています。

市販薬を購入する際は、薬剤師に「インフルエンザの可能性がある」ことを伝えて相談しましょう。

【参考情報】”Reye’s syndrome – Symptoms and causes” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/health/reyes-syndrome/ds00142

2. 受診のタイミングと検査の選び方


インフルエンザの検査には「受けるのに適した時間」があります。

発症からの経過時間を意識して、受診のタイミングを判断することが大切です。

2-1. 発症後6〜12時間は様子を見る期間

インフルエンザの迅速抗原検査(綿棒で鼻や喉をぬぐって、ウイルスの有無を調べる検査)は、発症後すぐに受けても正確な結果が出ないことがあります。

これは、ウイルスの量がまだ十分に増えていないためです。

発症後6時間未満では偽陰性(ぎいんせい:本当は感染しているのに陰性と出ること)の可能性が高くなります。

一方で、以下のような症状がある場合はすぐに受診してください。

すぐに受診すべき症状
・呼吸が苦しい、息切れがひどい
・意識がもうろうとしている
・水分が取れない、尿が出ない
・胸の痛みが続く
・持病(喘息、心臓病、糖尿病など)がある方で症状が重い

2-2. 発症後12〜48時間が検査と治療の重要なタイミング

発熱などの症状が出てすぐの段階では、体内のウイルス量が十分でないため、インフルエンザ迅速抗原検査で陰性になることがあります。

一般的には、発症後12時間以降になると検査の精度が高まり、特に12〜24時間頃が検査に適したタイミングとされています。

一方、抗インフルエンザ薬は、ウイルスそのものを殺す薬ではなく、ウイルスが細胞内で増えるのを抑えることで症状の悪化を防ぐ薬です。

そのため、ウイルスが増殖している段階で使い始めることが重要で、発症から48時間以内の開始が推奨されています。

つまり、早すぎると検査の精度が十分でなく、遅すぎると薬の効果が十分に得られにくくなるという特徴があります。

この両方を踏まえると、発熱した翌日の午前中(発症後12〜24時間頃)を目安に受診することは、検査と治療の両面で適切なタイミングといえるでしょう。

なお、発症から48時間を過ぎると薬の効果が弱まる可能性があるため、「もう少し様子を見よう」と受診を遅らせすぎないことも大切です。

特に、高齢の方や持病のある方、症状が強い場合は、より早めの受診を心がけましょう。

また、検査で陰性と判定された場合でも、症状や流行状況などを総合的に判断し、医師が抗インフルエンザ薬を処方することがあります。

検査結果だけで自己判断せず、医師の説明を十分に聞くようにしましょう。

【参考情報】『令和6年度 今シーズンのインフルエンザ総合対策』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/index2024.html

2-3. 迅速抗原検査とPCR検査の違い

医療機関で行われる検査には主に2種類あります。

迅速抗原検査
・15〜30分程度で結果がわかる
・鼻やのどの粘膜を綿棒でぬぐって検査
・ウイルス量が一定以上あれば検出できる
・発症後12時間以降の検査が推奨される

PCR検査
・結果が出るまで数時間〜1日程度かかる
・より高感度でウイルスを検出できる
・発症早期でも検出できる可能性が高い
・保険適用には条件がある場合も

通常の外来診療では迅速抗原検査が主流ですが、検査のタイミングや症状の状況によって、医師が最適な検査方法を選択します。

◆『インフルエンザの症状や検査、治療、注意点』について>>

3. 予約・発熱外来・オンライン相談の使い分け


発熱がある場合は、通常の外来とは別の対応が必要になることがあります。事前の確認や予約が重要です。

3-1. 発熱外来とは

発熱外来は、発熱や呼吸器症状がある方を対象とした専用の診療枠です。

他の患者さんへの感染を防ぐため、待合室や診察室を分けたり、診療時間を区切ったりしています。

発熱外来を受診する流れ
・事前に電話で連絡する
・症状や体温、発症時期を伝える
・来院時間の指示を受ける
・指定された時間に来院する
・マスクを着用し、指定された入口から入る

多くの医療機関では、発熱のある方は必ず事前連絡をお願いしています。

予約なしで直接来院すると、長時間待たされたり、受診をお断りされたりすることもありますので、必ず電話で確認してから来院しましょう。

3-2. オンライン診療の活用

軽症の場合や、症状が出始めたばかりで様子を見るべきか迷っている場合は、オンライン診療を活用するのもひとつの方法です。

オンライン診療のメリット
・自宅から診察を受けられる
・他の患者さんに感染させる心配がない
・待ち時間がない
・移動の負担がない

オンライン診療の限界
・検査ができない(インフルエンザ検査は対面で実施)
・重症度の判断が難しい場合がある
・初診では対応できない医療機関もある

オンライン診療では、必要に応じて対面での検査や診察を勧められることもあります。症状や状況に応じて、適切な受診方法を選びましょう。

3-3. 夜間・休日の対応

夜間や休日に急に高熱が出た場合、どう対応すればよいか迷うこともあるでしょう。

まず活用したいのが、各自治体が運営する休日・夜間診療所です。通常の医療機関が閉まっている時間帯でも診察を受けられる場合があります。

ただし、混雑していることも多いため、事前に電話で診療状況を確認してから向かうようにしましょう。受診の際は保険証や医療証を忘れずに持参してください。

また、受診すべきか判断に迷ったときは、救急相談ダイヤルを活用するのもひとつの方法です。

大人の場合は「#7119(救急安心センター)」、お子さんの場合は「#8000(小児救急電話相談)」に電話すると、看護師や医師が症状を聞いて受診の必要性をアドバイスしてくれます。深夜でも相談できるため、まず電話で状況を伝えてみましょう。

緊急性が低いと判断された場合は、無理に夜間診療所に行くよりも、翌朝まで自宅で安静にしてからかかりつけ医や近隣の医療機関を受診する方が、より適切な診療を受けられることもあります。

【参考情報】『インフルエンザの感染を防ぐポイント』政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/200909/entry-8422.html

4. 検査結果が陰性でも症状が続くときの考え方


インフルエンザの検査が陰性だったのに、高熱や強いだるさが続く場合はどうすればよいのでしょうか。

4-1. 陰性でも安心できない理由

検査が陰性でも、実際にはインフルエンザに感染している可能性があります。

2章でも説明しましたが、「偽陰性」と呼ばれる状態です。

偽陰性が起こる理由
・検査を受けるタイミングが早すぎた
・ウイルス量が検出限界以下だった
・検体採取の方法や部位が適切でなかった

発症後6〜12時間以内に検査を受けた場合、偽陰性の可能性が高くなります。

症状が強い場合は、翌日に再検査を受けることも検討しましょう。

4-2. ほかの感染症の可能性

インフルエンザ以外にも、似たような症状を引き起こす感染症があります。

考えられるほかの感染症
・新型コロナウイルス感染症
・RSウイルス感染症
・アデノウイルス感染症
・マイコプラズマ肺炎
・溶連菌感染症

症状が続く場合や悪化する場合は、再度医療機関を受診し、必要に応じてほかの検査を受けることをお勧めします。

4-3. 自宅療養の基本

検査結果にかかわらず、発熱や体調不良がある場合は、以下の点に注意して療養しましょう。

自宅療養のポイント
・十分な休息と睡眠をとる
・こまめに水分補給をする(経口補水液も有効)
・栄養のある食事を摂る(食欲がない場合は無理せず、消化の良いものを)
・部屋の換気をこまめに行う
・加湿器などで適度な湿度を保つ(50〜60%が目安)

解熱後もしばらくはウイルスを排出している可能性があるため、周囲への配慮も忘れずに行いましょう。

5. 家庭内感染への対策


インフルエンザは家庭内でも広がりやすい感染症です。家族のひとりが感染した場合、できるだけ早く対策を始めることが、他の家族への感染拡大を防ぐうえでとても重要です。

感染者本人はもちろん、家族全員で意識して取り組むことが大切です。

5-1. 部屋の使い方と療養環境を整える

感染した方はできるだけ個室で療養し、家族との接触を最小限にしましょう。

個室が用意できない場合は、ベッドや布団の位置を分けるなど、できる範囲で距離を確保する工夫をしてください。

換気は1〜2時間に1回程度、窓を開けて新鮮な空気を取り入れることが大切です。

また、室内の湿度を50〜60%程度に保つことで、のどや鼻の粘膜が乾燥しにくくなり、ウイルスへの抵抗力を保ちやすくなります。

加湿器がない場合は、濡れたタオルを部屋に干すだけでも一定の効果が期待できます。

5-2. 看病するときのポイント

看病する人はできるだけひとりに決め、他の家族が不必要に感染者の部屋に出入りしないようにしましょう。

看病の際はマスクを着用し、ケアの前後には必ず石鹸で手を洗うことを習慣にしてください。

使用済みのティッシュや体に触れたものはすぐにビニール袋に入れて捨て、処理後も手洗いを忘れずに行いましょう。

感染者が使用した寝具や衣類は、他の家族のものとは分けて洗濯することをお勧めします。

5-3. 共有するものへの注意と消毒

タオル、コップ、食器、箸などは家族間で共有しないようにしましょう。

感染者が使用したものは、他の家族のものと分けて洗うようにしてください。

ドアノブ、電気のスイッチ、リモコン、スマートフォンなど、家族全員が触れる場所は、アルコール消毒液を使って1日数回ふき取るようにすると効果的です。

トイレや洗面台まわりも忘れずに消毒しましょう。

◆『呼吸器感染症と家族内感染予防』について>>

5-4. 特に注意が必要な家族への配慮

高齢者、乳幼児、妊婦、持病(糖尿病・心臓病・喘息など)のある方は、インフルエンザに感染した場合に重症化しやすいとされています。

同居している場合は、感染者との接触をできるだけ避け、普段から手洗いやうがい、マスクの着用を意識的に行うようにしましょう。

6.インフルエンザワクチンの効果と接種時期の目安


インフルエンザは、かかってから治療するだけでなく、事前の予防が重要です。

特にワクチン接種は、感染予防や重症化予防に役立つとされています。

日本では例年12月〜3月に流行し、1〜3月にピークを迎えることが多いため、効果が現れるまで約2週間かかることを踏まえ、12月中旬までに接種を済ませることが理想的です。

流行するウイルスの型は毎年変わるため、昨年接種した方も今シーズンのワクチン接種が望ましいとされています。

ワクチンは100%感染を防ぐものではありませんが、発症や重症化、死亡を一定程度予防する効果が報告されています。

特に高齢者や基礎疾患のある方では重症化予防の観点から接種が推奨されています。接種回数は13歳以上は原則1回、13歳未満は1〜4週間の間隔で2回接種が推奨されています。

また、65歳以上の方や一定の基礎疾患がある60〜64歳の方は、予防接種法に基づく定期接種の対象となり、公費助成を受けられる場合があります。

自治体によっては独自の助成制度もあるため、事前の確認が大切です。

【参考情報】『インフルエンザワクチン(季節性)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html

7. おわりに

発熱や体調不良を感じたら、まず症状をよく観察し、適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。

インフルエンザの検査は発症後12時間以降が最適で、48時間以内に治療を始めることで早期の回復が期待できます。

検査結果が陰性でも症状が続く場合や悪化する場合は、再度受診してください。迷ったときは、電話相談や医療機関に問い合わせることをお勧めします。

ご自身と周囲の方の健康を守るため、適切な行動を心がけましょう。

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